岸田文雄前首相「日本人は差別主義者」と発言?発言していない【ファクトチェック】
岸田文雄前首相が、首相在任中に「日本人は差別主義者」と発言したかのような情報が拡散しましたが、誤りです。添付された動画で岸田氏は、日本での差別の存在に言及して「差別は許されない」と述べていますが、「日本人は差別主義者」とは発言していません。
検証対象
2025年1月28日、「岸田文雄『日本人は差別主義者』」という投稿が、岸田氏がスピーチする動画とともに拡散した。この投稿は2025年1月30日現在、91万回以上の閲覧回数と2000件以上のリポストを獲得している。
検証過程
拡散した動画をGoogle検索で調べたところ、元動画は2024年2月3日にオンラインで開催された「令和5年度共生社会と人権に関するシンポジウム」に、岸田首相(当時)が寄せたビデオメッセージだった。このメッセージは、首相官邸サイトでも、文字起こしとともに確認できる。
ビデオメッセージは全部で4分40秒で、拡散した動画は一部を切り抜いたものだ。元動画の1分55秒頃から拡散した動画と同じ内容の発言が始まる。動画での岸田氏の発言は、以下の通り。
(以下が岸田氏の発言)
しかし、残念ながら、我が国においては、雇用や入居などの場面やインターネット上において、外国人、障害のある人、アイヌの人々、性的マイノリティの人々などが不当な差別を受ける事案を耳にすることも少なくありません。
マイノリティの方々に対して不当な差別的取扱いを行ったり、不当な差別的言動を行ったりすることは、当然、許されるものではありません。
また、近年、外国にルーツを有する人々が、特定の民族や国籍等に属していることを理由として不当な差別的言動を受ける事案や、偏見等により放火や名誉毀損等の犯罪被害にまで遭う事案が発生しており、「次は自分が被害に遭うのではないか。」と、日々、恐怖を感じながら生活することを余儀なくされている方々もおられます。
国会でも繰り返し申し上げてきたとおり、特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の不当な差別的言動、まして、そのような動機で行われる暴力や犯罪は、いかなる社会においても決してあってはなりません。
(ここまで)
切り取られた部分でも、ビデオメッセージ全体を通しても、岸田氏は「日本人は差別主義者だ」という主旨の発言をしていない。
判定
岸田前首相は「日本人は差別主義者」と発言していないため、誤り。
検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、藤森かもめ、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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