維新の会が大阪万博跡地の使用権を中国に売った? 跡地の開発事業者は未定【ファクトチェック】

元プロレスラーの前田日明氏が「維新の会が大阪万博の跡地の使用権を中国に売った」と話す動画が拡散しましたが、誤りです。万博終了後の跡地利用の開発事業者はまだ決まっておらず、現在提案のある企業は「中国ではない」と吉村洋文大阪府知事が否定しています。前田氏のチャンネルの動画は削除されましたが、切り出し動画の拡散が続いています。
検証対象
2025年3月、元プロレスラーの前田日明氏が「維新の会が大阪万博の跡地の使用権を中国に売った」と語る動画が拡散した(例1、例2、例3)。
これらの動画は、前田氏が自身のYouTubeチャンネルで公開した動画から切り出したものだ。元動画は2025年4月24日現在、削除されている。
前田氏が「大阪の維新の党が中国に万博の跡地の使用権を今後60年間売ってお金にした」などと語る部分が切り出されたショート動画は、YouTubeだけでなくTikTokやXなどで拡散を続けている。
検証過程
現在は削除されている前田氏の元動画は3月23日に投稿され、タイトルは「万博の跡地は中国のものになる」だった。以下のように語っていた。
「ある仕事で大阪へ行ったと、でタクシー乗ったらタクシーの運転手がね、大阪の維新の党が中国に万博の跡地の使用権を今後60年間売ってお金にしたと、60年間あの土地はそういう話でいっぱいなんですよ、今大阪は。みんな知ってる。でもこのニュース、どこも出てこないよね」
元動画は削除されているが、この部分を切り出した動画が多数拡散している。
万博跡地の開発計画は策定中
万博会場のある夢洲は大阪市此花区にある人工島。大阪港湾局が大半を持ち、面積は390ha。大阪都市計画局は、この夢洲を3つの工期に分けて開発する計画だ。
第1期の区域は万博会場の北側に隣接する40ha。国内初のカジノを中心とした統合型リゾート(IR)が建設される。大阪市は2023年9月に、運営事業者の「大阪IR株式会社」へ月額2億1000万円余りで用地を貸し出す契約を結び、2025年4月24日に着工した。
万博の跡地は第2期で、サーキット場やウォーターパーク、IRとの連携、商業施設などが検討されている(大阪府・大阪市「夢洲第二期区域マスタープランver.1.0」、NHK)。
大阪都市計画局は2024年9月に民間から万博跡地利用の提案を募り、大林組他6社(その他の企業名は非公開)と、関西電力の子会社、関電不動産を代表とする企業グループ(京阪ホールディングス、住友商事、竹中土木、南海電気鉄道、吉本興行ホールディングス)が優秀提案に選ばれた。
ただし、開発業者はまだ決まっておらず、2025年度後半にさらに二次募集する。今回優秀提案に選ばれた2件の提案は、この二次募集の際に審査の優遇措置を検討しているという(大阪府「優秀提案の概要」)。
大阪都市計画局(大阪府市共同設置)は日本ファクトチェックセンター(JFC)の取材に対して、「現在は府市と万博協会で協議しながらマスタープランver.2.0を策定中で、2025年度後半に開発事業者を募集することになっている。まだ事業者は決まっていない」と答えた。
吉村知事は動画で否定
大阪府の吉村洋文知事は、拡散した情報について、4月4日に自身のYouTubeアカウントで否定する動画を公開した。以下のように説明している。
「完全にデマです」「万博の跡地は民間の事業者の提案をこれから選定する、この事業者がどこかは分かっているが中国ではない」
判定
維新が万博跡地を中国に売り飛ばしたという情報が拡散したが、誤り。万博会場跡地の開発事業者はまだ決まっておらず、現在提案している事業者については吉村知事が「中国ではない」と否定している。
検証:宮本聖二、木山竣策
編集:古田大輔、藤森かもめ
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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