兵庫県知事選で稲村陣営が誹謗中傷を10倍した? 根拠とされた新聞記事は無関係【ファクトチェック】

兵庫県知事選で稲村陣営が誹謗中傷を10倍した? 根拠とされた新聞記事は無関係【ファクトチェック】

兵庫県知事選をめぐって、落選した稲村和美氏の陣営の方が誹謗中傷を「10倍していた」という情報が拡散しましたが、誤りです。根拠とされたグラフからはそうしたデータは読み取れず、元となる神戸新聞の記事にもありません。

検証対象

2024年12月21日、「これが選挙妨害の実態です 稲村陣営の方が10倍誹謗中傷していることがデータで判明しています だけど斎藤さんは訴えたりしません」という情報がX(旧Twitter)で拡散した。

この投稿は、48万以上の閲覧と1300のリポストがある。「はっきりデータで出ていますね」「これが正しい事実なんです」といった賛同するようなコメントがあるが、「このグラフから稲村陣営の方が10倍誹謗中傷していることをデータとして読み取ることは不可能です」という指摘もある。

検証過程

この投稿には「『Yahoo!リアルタイム検索』より作成」と表記のあるグラフが付いている。「既得権益」「#さいとう元知事がんばれ」「斎藤 パワハラ」「#いなむら和美を兵庫県知事に」「公益通報」「稲村 外国人参政権」というネットで拡散した6つの言葉の拡散数の変遷を現している。グラフの横軸の日付は県知事選告示日の10月31日から投票前日の11月16日までだ。

このグラフを画像検索すると11月29日に神戸新聞NEXTで配信された記事が見つかる。記事は「「既得権益」「さいとう元知事がんばれ」兵庫知事選終盤、Xで大量に投稿 真偽不明の情報も拡散」という見出しで、兵庫県知事選の期間中ネット上で拡散した言葉がどの時点で急増したのか、その背景を探る分析記事だ。

しかし、稲村陣営やその支持者が選挙妨害したり、斎藤氏側を誹謗中傷したりしたかなどは説明していないし、グラフからもそうした事実を読み取れない。

例えば、この記事が取り上げた「斎藤 パワハラ」は、斎藤氏が「パワハラしていた」、「パワハラはしていなかった」のどちらでも検索ワードに上がってくるので、誹謗中傷を読み取れるわけではない。

判定

兵庫県知事選をめぐって、落選した稲村和美氏の陣営が選挙妨害や誹謗中傷を「10倍していたことがデータで明らかになった」という情報がグラフと共に拡散したが、誤り。添付されたグラフでも引用元の神戸新聞の記事でも選挙妨害や誹謗中傷の量は読み取れない。

あとがき

日本ファクトチェックセンター(JFC)では、兵庫県知事選に関する解説記事を配信しています。参考にしてください。

斎藤氏再選の裏にSNSや動画 投票の参考情報で新聞・テレビ上回る 偽・誤情報だけでは語れない兵庫県知事選・前編【解説】
兵庫県知事選でパワハラ問題などで失職した前知事の斎藤元彦氏が再選しました。「SNSの勝利」「マスメディアの敗北」などとも言われる中、何が起きていたのか。都知事選の石丸現象や総選挙の国民民主党の躍進、アメリカ大統領選などと比較し、アルゴリズムやバイアスなどの観点から解説します。 「斎藤氏の支持者がデマを熱狂的に信じた」という言説の落とし穴 兵庫県知事選・後編【解説】兵庫県知事選をめぐる偽・誤情報の拡散に関する解説の後半です。背景にはマスメディアの影響力低下とソーシャルメディアにおける選挙情報の拡大という世界で共通する大きな潮流があります。その中で、信頼性の高い情報に基づいた民主主義を成立させるためには、どうすればよいか。 SNS・動画が選挙情報の中心に 偽・誤情報だけでは語れない兵庫県知事選・前編【解説】兵庫県知事選でパワハラ問題などで失職した前知事の斎藤元彦氏が再選しました。「SNSの勝利」「マスメディアの敗北」などとも言われる中、何が起きていたのか。都知事選の石丸現象や総選挙の国民民主党の躍進、アメリカ大統領選などと比較し、アルゴリズムやバイアスなどの観点から解説します
「斎藤氏の支持者がデマを熱狂的に信じた」という言説の落とし穴 兵庫県知事選・後編【解説】
兵庫県知事選をめぐる偽・誤情報の拡散に関する解説の後半です。背景にはマスメディアの影響力低下とソーシャルメディアにおける選挙情報の拡大という世界で共通する大きな潮流があります。その中で、信頼性の高い情報に基づいた民主主義を成立させるためには、どうすればよいか。 SNS・動画が選挙情報の中心に 偽・誤情報だけでは語れない兵庫県知事選・前編【解説】兵庫県知事選でパワハラ問題などで失職した前知事の斎藤元彦氏が再選しました。「SNSの勝利」「マスメディアの敗北」などとも言われる中、何が起きていたのか。都知事選の石丸現象や総選挙の国民民主党の躍進、アメリカ大統領選などと比較し、アルゴリズムやバイアスなどの観点から解説します。 SNS動画を投票の参考に 新聞テレビを上回る SNSでの支持の広がりが斎藤氏の再選を後押ししたと言われる今回の選挙。データがそれを裏打ちしています。NHKが投票所で実施した出口調査を見てみます。 何を投票の参考にしたかという質問への答えで1位が「SNSや動画サイト」で30%、新聞24%、テレビ24%、知人・家族5%を上回りました。また、「SNSや動画サイト」と

検証:宮本聖二
編集:古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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国内外の政治家の発言を歪める誤情報を検証しました。石破首相、ゼレンスキー大統領など、対象は様々です。権力者が事実に基づいて発言しているかを検証するのもファクトチェックの重要な役割ですが、権力者の発言を捏造したり、改変したり、ミスリードしたりしている投稿を検証することも重要です。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のファクトチェック マイナンバーカードでの本人確認が禁止される?まとめサイトによるもの 「マイナンバーカードでの本人確認を禁止」との投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのもので、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。警察庁はマイナンバーカードの画像を送信して本人を確認する方法を2027年4月に廃止する方針です。 マイナンバーカードでの本人確認が禁止される?まとめサイトによるもの【ファクトチェック】「マイナンバーカードでの

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