自民・小野寺政調会長が「国民の手取りが増えてしまう」と発言? 発言の切り取り【ファクトチェック】

自民・小野寺政調会長が「国民の手取りが増えてしまう」と発言? 発言の切り取り【ファクトチェック】

自民党の小野寺五典政調会長が「国民の手取りが増えてしまう」と発言した、という情報が拡散しましたが、不正確でミスリードです。NHKの討論番組で「手取りが増えてしまう」と発言したのは事実ですが「年収の壁」の引き上げ議論の中で、所得ごとに手取りの増え方に差があることを指摘する発言の一部が切り取られたものです。

検証対象

2024年12月22日、自民党の小野寺五典政調会長が「国民の手取りが増えてしまう」と発言したとするポストがXで拡散した。小野寺氏が「年収の壁」問題について発言しているような画像がついているが、内容は画像からは明らかではない。

投稿には「手取りが増える事の何がまずいのか聞きたいねぇ」という文言もあり、小野寺政調会長が国民の手取りが増えることに否定的な発言をしたかのような印象を与える。

2024年12月26日現在、この投稿は15000件以上リポストされ、表示回数は160万回を超える。投稿について、対象の番組の動画を用いて「言ってた🥹」というコメントや、「あはは😂😂何がまずい??教えて小野寺さん🤣🤣」というコメントもある。

検証過程

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、小野寺氏の発言を確認した。検証対象の画像の左下には「日曜討論」という文字が見つかる。NHKの討論番組だ。

検証対象の画像が投稿された2024年12月22日の「日曜討論」は「各党政策責任者に問う 重要課題への対応は」というタイトルで各党の政調会長らが出演した(NHK)。

この番組の23分58秒から、小野寺政調会長が拡散した投稿に関連する発言をしている。「年収の壁」見直し問題についての討論だ。

「年収の壁」とは、税金と社会保険料の支払いが発生する年収の基準だ。103万円、106万円、130万円などの「壁」を超えると所得税や社会保険料の支払いが発生する。

国民民主党は1995年からの最低賃金の上昇率1.73倍に基づいて、この「壁」を103万円から178万円にあげようと提案している(国民民主党)。

検証対象の発言は小野寺氏が178万円の壁に言及した箇所だ。前後を含めると、以下のように述べている。

「例えば国民民主党さんが言うような178万円まで上げてしまうと、例えば…一番多い、所得をもらっている方の中で、例えば400万~500万円ぐらいの方ですと、3万、4万ぐらいの、おそらく手取りの増えになりますが、逆に2000万円以上の方が、30万円以上、実は手取りが増えてしまう」

「本来、私どもがどこに手当をするかというと、今、大変なところの層に、手取りを増やしてあげたい。そして、この層の方であれば、おそらく入ったお金はすぐに使って、それがおそらく乗数効果ということで、景気対策につながると思うんですが、数千万円の所得がある方が、おそらく30万円ぐらい増えてもそれを使うということがあまりないと思うので、そこはどういう制度設計にするかが、大切なことだと思っています」

小野寺氏は確かに「手取りが増えてしまう」と発言している。しかし、所得別に手取りの増加効果が変わってしまうことを指摘する中での発言であり、「どういう制度設計にするかが大切だ」と結論付けている。一概に、国民の手取りが増えることを否定的にしているわけではない。

判定

自民党の小野寺政調会長は、NHKの討論番組で「手取りが増えてしまう」と発言したことは事実だ。しかし、「国民の手取りが増えてしまう」と国民全体の手取りが増えることを問題視するような発言ではなく、所得ごとに手取り増加の効果が違うことを説明する中での発言の一部だ。よって、ミスリードで不正確と判定した。

検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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