自動車の走行距離課税が4月から始まる?導入は決まっていない【ファクトチェック】

自動車の走行距離に対して課税する制度が4月から始まるという投稿がニュース映像と共に拡散しましたが、誤りです。政府の税制調査会で導入の検討について意見が出されていますが、決まっていません。
検証対象
2025年2月3日、「走行距離税だって、本気か!?」というコメントと共に、「走行距離課税が4月から始まります😡😡😡」というテロップのある動画を載せた投稿が拡散した。
この投稿は400万件を超える閲覧と7000件以上のリポストを獲得している。
リプライでは「だれかクーデター起こしてもらっていいですか?」というコメントの一方、「これいつの記事よ」などの指摘もある。
検証過程
走行距離課税とは
走行距離課税とは、自動車の走行距離に応じて課税するものだ。低燃費車や電気自動車の普及などで燃料税などからの税収が減少する傾向にある。そこで、走行距離に応じて課税することで、安定的な財源確保を目指すという新たな課税方式だ。すでに導入している国もある(国立国会図書館 調査及び立法考査局 諸外国の自動車関係税 2025年1月20日 150ページ〜)。
動画は2009年のニュース映像
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、検証対象の投稿の動画について調べた。
この動画をGoogle画像検索すると、テレビ朝日のYouTubeチャンネル「ANNnewsCH」の「道路整備の財源は「ガソリン税」から「走行税」へ」というニュース映像が見つかった。
このニュースは2009年10月20日にアップロードされたもの。当時、石油連盟会長だった天坊昭彦氏へのインタビューが出てくる。
天坊氏は「道路を使うすべての車が走行距離に応じて税を払うと税金としては正しいんじゃないか」と語り、ナレーションで「石油連盟は来年度の税制改正に向けた経済産業省の公開ヒアリングで車の走行距離や重さに応じて税金をかける走行税を導入するよう要望しました」と伝えている。しかし、走行税や走行距離課税がいつ始まるかなどの表現はない。
導入に向けた議論は始まっている
2022年10月26日の政府税制調査会の総会では、走行距離に応じた課税について検討が必要だという意見が出ている(政府税制調査会 第20回総会議事録 9ページ)。
その後の2022年11月25日の衆議院予算委員会で岸田文雄前首相は走行距離課税の導入について「走行距離課税については議論があることは承知していますが、政府としてこうした具体的な検討をしているということはございません」と答弁している(衆議院インターネット審議中継 5:06:28〜)。
2024年12月20日に与党(自民党・公明党)が公表した「令和7年度税制改正大綱」では、自動車関係諸税について「公平・中立・簡素な課税のあり方について中長期的な視点から、車体課税・燃料課税を含め総合的に検討し、見直しを行う」という表現に止まっており、走行距離課税の導入について具体的には書かれていない(令和7年度税制改正大綱 17ページ)。
判定
自動車の走行距離に対して課税する制度が4月から始まるという投稿がニュース映像と共に拡散したが、誤り。政府税制調査会で導入の検討については意見が出ているが、導入は決まっていない。
検証:リサーチチーム、宮本聖二
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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