兵庫県斎藤知事の公約実現率が98.8%? 着手のみで未達成のものを含む【ファクトチェック】

兵庫県斎藤知事の公約実現率が98.8%? 着手のみで未達成のものを含む【ファクトチェック】

兵庫県の斎藤元彦知事に関して「公約実現率が98.8%」という言説が拡散しましたが、不正確です。斎藤氏は「一定達成、着手したのは171項目で選挙時の公約の98.8%」と発言しており、実現率ではありません。

検証対象

2024年9月21日、Xの「ツイッター速報」で「【悲報】兵庫県斎藤知事の公約実現率、脅威の98.8%」という言説が拡散した。この投稿は、9月25日現在、996万回以上の閲覧回数と6100件以上のリポストを獲得している。

検証過程

斎藤氏「一定達成、着手できた公約は98.8%」

斎藤氏は、2024年7月30日の知事記者会見で知事在任中の課題を問われ、以下のように発言した(動画)。

「選挙時に掲げさせていただいた公約が、全体で173項目ございます。そのうち、一定達成、着手した状況は171項目、98.8%という形になります。多くの公約や掲げたことは達成なり、着手してきて、一つずつ公約は進捗、進んでいると考えています」

他方、着手できなかった公約として「女性副知事の登用」「学校における30人学級」の2つを挙げている。

知事の公約集は現在閲覧できない状態

斎藤氏は2021年7月18日の兵庫県知事選で「コロナ対策」「未来を創る」など大きく分けて6つの選挙公約を掲げた(兵庫県選挙公報)。

兵庫県知事選挙 選挙公報(2021年7月18日)

より具体的な公約集は斎藤氏の公式サイト「さいとう元彦 公式サイト 」に掲載していたが、2024年9月25日現在サイトは公開しているものの公約集は閲覧できない。

日本ファクトチェックセンター(JFC)が、アーカイブサービスWayback Machineで検索したところ、2023年5月29日時点のアーカイブで公約集を確認できた。

公約集「詳細版」の内容は

この公約集には、概要版詳細版がある。

斎藤知事は公約の数を173と説明し、メディアもそう伝えている(神戸新聞)。ただし、JFCが20頁ある詳細版を行頭の項目別に数えたところ、項目数は137だった。

詳細版には例えば、以下のような項目を掲げている。

・中小企業の技術開発や販路開拓等のほか、デジタル化やグリーン化といった新たな投資を力強く支援(8頁)
・障害者スポーツや障害者芸術文化活動を力強く応援(14頁)
・誰もが大きなストレスを感じることなく過ごせる避難所づくり(17頁)
・知事の給与・退職金削減(18頁)
・知事自身が県内各地の宿泊施設に数日滞在して仕事をする「ワーケーション知事室」の実施(19頁)
・兵庫の魅力や特産品等を知事自身が PR するトップセールスをエネルギッシュに展開(20頁)

この137項目の中には、知事報酬の削減のように、就任後すぐに実行した公約もある。一方で、斎藤氏が公約として達成したとしている「公用車の変更」は入っていない。また、達成できなかった公約と説明していた「女性副知事の登用」も入っていない(神戸新聞神戸新聞)。

公約には「力強く」や「エネルギッシュ」などの表現があり、これらは何をもって「達成」と言えるかが不明確だ。この点、斎藤氏は2024年8月1日の記者会見で公約達成の数値公表の可能性を問われ「173分の171、98%ほどですが、どちらかというと、着手したといった定性的な(数値・数量ではあらわせないーJFC注)達成状況になる」と答えている(兵庫県)。

判定

兵庫県の「斎藤知事の公約実現率が98.8%」は、不正確。斎藤氏は2024年7月30日の記者会見で、「一定達成、着手したのは171項目で選挙時の公約の98.8%」と発言しており、98.8%には着手したが未達成の公約も含まれている。また、自らも公約達成つまり実現に関して問われた際に「着手したといった定性的な達成状況」と答えている。

検証:リサーチチーム
編集:古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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