小泉進次郎氏が「これにお金を払ったらただで貰えました」などと発言? 大喜利サイトの書き込みが拡散【ファクトチェック】

小泉進次郎氏が「これにお金を払ったらただで貰えました」などと発言? 大喜利サイトの書き込みが拡散【ファクトチェック】

自民党総裁選への立候補を予定している小泉進次郎氏が「これにお金を払ったらただで貰えました」「朝食は朝食べるに限ります。昼食は絶対にランチがいいですね」などと発言したとする言説が拡散しましたが、根拠不明です。これらの言説は大喜利サイトで匿名ユーザーが投稿したジョークが元になっていて、小泉氏本人が発言した事実は確認できません。

検証対象

2024年8月25日、「小泉進次郎曰く。『これにお金を払ったらただで貰えました』『朝食は朝食べるに限ります。昼食は絶体にランチがいいですね』こんな日本語の人間を日本のトップに据えていいのか?」という投稿が拡散した。

投稿は2024年9月2日時点で約1900件のリポストと110万回以上のインプレッションを獲得している。

「語彙力の欠損落第だ」「はぁー、どーなるんだニッポンは。。。」などといったコメントが寄せられる一方で、「ソースがboketeの人は初めてみた」「大喜利を本当に言ったと思ってる」との指摘もある。

検証過程

「進次郎構文」がインターネット上で話題に

小泉氏の発言や言い回しはインターネットを中心に「ポエム」「進次郎構文」などとして度々話題になっている。

2019年9月26日に米国ニューヨークで開催された国連気候行動サミットに環境大臣として出席した際の記者会見で、記者からの質問に「気候変動のような大きな規模の問題に取り組むことは、楽しく、クールで、セクシーに違いない」と返答した(朝日新聞)ことは大きな議論を呼び、立憲民主党の熊谷裕人氏が参議院で質問主意書を提出し当時の安倍内閣が「セクシー」の意味を答弁する騒ぎとなった。

また、2021年5月10日に虫垂炎で緊急手術を受けた後、同月20日に公務に復帰した際の記者会見では「退院後、リモートワークができているおかげで、公務もリモートでできるものができたというのは、リモートワークのおかげですから、それも非常によかったことだと思っています」などと発言している(テレビ東京)。

この発言のような「何かを言っているようで何も言っていない」言い回しや、文中で同じ言葉を複数回繰り返す表現はインターネット上で話題になり、「進次郎構文」としてジョークや大喜利のネタになることも多い(毎日新聞ABEMA TIMES)。

検証対象の発言のソースは大喜利サイトか

日本ファクトチェックセンター(JFC)は検証対象の言説にある「これにお金を払ったらただで貰えました」「朝食は朝食べるに限ります。昼食は絶体にランチがいいですね」といった発言を小泉氏が過去に実際にしているか検証した。

インターネット上で検索すると、テレビや新聞などの報道でこれらの発言をした事実は確認できない。国会会議録検索システムでも見つからない。

一方で、検証対象の言説にある発言と少し違うものの、小泉氏の画像とともに「お金払ったらタダで貰えたんですよ」「朝食はいつも朝食べます。」などとテキストが付いているサイトがヒットした。

このサイトは「bokete」。特定の画像を利用者が投稿して「お題」を出し、他の利用者がテキストで「ボケ」を投稿する大喜利サイトだ。「お金払ったらタダで貰えたんですよ」「朝食はいつも朝食べます。」といったテキストもユーザーが投稿したジョークである可能性が非常に高い。

判定

小泉進次郎氏が「これにお金を払ったらただで貰えました」「朝食は朝食べるに限ります。昼食は絶対にランチがいいですね」などと発言したとする言説は根拠不明だ。これらは大喜利サイトに投稿されたジョークを元にした言説とみられ、実際に小泉氏が発言した事実は確認できない。

あとがき

冗談や皮肉として事実と異なる発信をしたり、それを楽しむことは表現の自由にも関わる大切な文化です。海外のファクトチェックサイトでは、偽情報や誤情報と区別するために、Satire(風刺)というラベルをつける事例もあります

風刺や皮肉を専門とするサイトもあり、海外ではThe Onion、日本では虚構新聞などが有名です。

今回の検証対象の言説の根拠となったとみられるサイトでも「小泉進次郎氏なら本当に言ってしまうかもしれない」という点に着目して多くの人が大喜利を楽しんでいました。

しかしながら、冗談や皮肉を事実だと信じ込んだ人の拡散によって、偽情報のような効果を持ってしまうこともあります。特に自民党総裁選や国政選挙のような社会的に重要な局面においては注意が必要です。

JFCは過去にもインターネット上の冗談が事実かのように拡散した事例を検証しています。

黒柳徹子が新しい学校のリーダーズに「令和の全共闘」と発言?【ファクトチェック】
タレントの黒柳徹子さんが、テレビ朝日系の番組「徹子の部屋」で、ダンスボーカルユニット「新しい学校のリーダーズ」に「令和の全共闘」と発言したとの言説が拡散しましたが、誤りです。黒柳さんは、そのような発言をしていません。テレビ朝日も否定しています。 検証対象 2024年4月15日、「徹子が、「『新しい学校のリーダーズ』っていうのは、令和の全共闘みたいなことをされてらっしゃるの?」って言ってたの、まだおもしろい。」というポストが、「徹子の部屋」の画像付きで拡散した。 拡散したポストは、4月19日現在で360万回以上表示され、8300件以上のリポストを獲得している。 検証過程 拡散したのは「パクツイ」 「全共闘」とは「全学共闘会議」の略称で、1968〜1969年の大学紛争の際に主体となった、既成の学生自治会組織とは別の運動体だ。 同様のポストは、2024年2月9日にも別のアカウントが「徹子「”新しい学校のリーダーズ”っていうのはなに?令和の全共闘みたいなことをされてらっしゃるの?」」という文言とともに投稿している。 このポストも4月19日現在で510万

検証:木山竣策、リサーチチーム
編集:古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

ファクトチェックやメディア情報リテラシーについて学びたい方は、こちらの無料講座をご覧ください。ファクトチェッカー認定試験や講師養成講座も提供しています。

理論から実践まで学べるJFCファクチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

もっと見る

トランプ大統領が「ダボス会議のエリートたちに彼らの反人類的計画は終わった」と告げた?そのような発言はない【ファクトチェック】

トランプ大統領が「ダボス会議のエリートたちに彼らの反人類的計画は終わった」と告げた?そのような発言はない【ファクトチェック】

トランプ大統領がダボス会議の出席者に「彼らの反人類的計画は終わった」と告げた、という情報が拡散しましたが、誤りです。そのような発言はありませんでした。 検証対象 2025年1月24日、「トランプ大統領は新世界秩序に宣戦布告し、ダボス会議のエリートたちに彼らの反人類的計画は終わったと告げた」という情報がXで拡散した。 2025年1月28日現在、この投稿は2600件以上リポストされ、表示回数は66万5千件を超える。投稿には「トランプさんがいつも高次元から守護されますように🙏」「👏👏👏」などのコメントがついている。 検証過程 世界経済フォーラム(WEF)の年次総会「ダボス会議」は、例年この時期にスイスで開かれる。トランプ大統領は1月23日の公開討論にオンライン参加し、演説をしている。 討論には、運用資産が約150兆円の世界的投資会社「ブラックストーン・グループ」会長兼CEOスティーブン・シュワルツマン氏、サンタンデール銀行会長アナ・ボティン氏、フランスのエネルギー大手トタルエナジーズ会長兼CEOパトリック・プヤンヌ氏、米金融大手バンク・オブ・

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
松山空港「蛇口からみかんジュース」が中国人観光客の影響で撤去? 運営会社が否定【ファクトチェック】

松山空港「蛇口からみかんジュース」が中国人観光客の影響で撤去? 運営会社が否定【ファクトチェック】

愛媛・松山空港の「蛇口からみかんジュース」が中国人観光客が大容量の水筒で大量に持ち帰ったことが原因で撤去された、との情報が拡散しましたが、誤りです。運営会社は「変わらず販売している」と否定しています。 検証対象 2025年1月26日、「[自民党の宝]/愛媛県の名物!松山空港に設置されていた愛媛みかん🍊オレンジジュースの蛇口飲料機は、中国人観光客が大容量の水筒を持参して大量にジュースを持ち帰ったため、撤去されてしまいました」というXの投稿が拡散した。 この投稿は2025年1月30日現在、320万回以上の閲覧回数と9500件以上のリポストを獲得している。また、この投稿はほぼ同じ内容の中国語で書かれた投稿を引用している。この投稿も344万回以上の閲覧回数となっている。 拡散した投稿をめぐって、愛媛新聞が1月27日に「松山空港みかんジュース蛇口『撤去』はデマ」と報じている。 検証過程 「蛇口からみかんジュース」は現在も稼働 松山空港にある『蛇口からみかんジュース』は、専用カップを購入した客が自分で蛇口をひねってジュースを注ぐ商品だ。空港内のショップ「O

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
立花氏の投稿削除と新聞のファクトチェック/コロナワクチン ロットによって接種者全員死亡?/拡散続く兵庫県知事選の偽情報【今週のファクトチェック】

立花氏の投稿削除と新聞のファクトチェック/コロナワクチン ロットによって接種者全員死亡?/拡散続く兵庫県知事選の偽情報【今週のファクトチェック】

元兵庫県議の急死をめぐる自らの投稿を立花孝志氏が投稿を削除しましたが、その背景に新聞によるファクトチェックがありました。去年11月の兵庫県知事選挙で、県警内部で斎藤氏以外の候補を応援するよう通達が出たという誤った情報を姫路市議が拡散させました。川田参院議員の発言で拡散したコロナワクチンの特定のロットで接種者全員が死んでいるという情報を検証しました。官民共同で偽・誤情報対策のためのリテラシー向上の啓発活動が始まることになりました。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのお知らせ セミナー「新たなテクノロジーと偽情報 -AIの脅威と活用-」中止 1月30日に予定していたセミナー「新たなテクノロジーと偽情報 -AIの脅威と活用-」(共催:日本ファクトチェックセンター(JFC)、Code for Japan、早稲田大次世代ジャーナリズム・メディア研究所、協力:アメリカ大使館)は、

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
トランプ米大統領「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

トランプ米大統領「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

トランプ米大統領が「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」と発言したとする投稿が拡散しましたが、誤りです。トランプ大統領の実際の発言ではありません。掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。 検証対象 2025年1月21日、「🚨トランプ「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」/🔥🔥🔥日本🇯🇵ランクイン🔥🔥🔥」というポストがX上で拡散した。このポストは2025年1月24日現在、405.9万回以上の表示回数と3100件以上のリポストを獲得している。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)が「トランプ氏の発言」として拡散した「まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ」をGoogle検索で調べたところ、掲示板サイト5ちゃんねるのスレッドのタイトル「トランプ『まず潰すべき国はメキシコ、カナダ、中国、そして日本だ』」と完全に一致した。 拡散した投稿とこのスレッドはともに2025年1月21日に投稿されている。このスレッドには以下のスクリーンショットが添付されている。 「トランプ氏の

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)