安倍元首相、160万回分のコロナワクチンを返送し国民にイベルメクチンを投与?【ファクトチェック】
新型コロナワクチンについて、安倍晋三元首相が「ワクチンを義務付けず、160万回分を返送、国民にイベルメクチンを投与した」という英文の言説が拡散しましたが誤りです。安倍元首相はワクチン返送もイベルメクチン投与もしておらず、また、ワクチン普及前に辞任しています。
検証対象
2023年11月15日、安倍元首相の写真と共に「暗殺された日本の首相はWEF(世界経済フォーラム)の命令に従わなかった。ワクチンを義務付けず、160万回分を返送し、国民にイベルメクチンを投与した」という言説がX(旧Twitter)で拡散した。2023年12月13日現在、このポストは1600回以上リポストされ、表示回数は16万件を超える。
投稿について「安倍元首相が殺害された理由」などのコメントの一方で、「根拠がない」との指摘もある。
2022年にも同様の画像が拡散し、2023年に再び拡散している。AP通信がファクトチェックし、「誤り」と判定している。
検証過程
安倍元首相の任期とワクチン展開
安倍元首相は2020年9月16日に首相を辞任した。日本における新型コロナワクチンの接種開始は2021年2月。2021年2月時点の首相は菅義偉元首相であり、安倍元首相ではない。
ワクチンを義務付けず、160万回分を返送
厚生労働省は日本における新型コロナワクチンの接種について「努力義務」としている。「接種を受けるよう努めなければならない」という予防接種法の規定で「義務」とは異なる為、この部分については正しい。
「160万回の返送」については、2021年8月のモデルナ製ワクチンへの異物混入を指していると見られる。厚生労働省はワクチンへの異物混入を受け、約160万回分の使用を見合わせた。これらは企業が自主回収している。
国民にイベルメクチンを投与
イベルメクチンとは寄生虫などが原因で引き起こされる感染症の特効薬。新型コロナウイルスに対する有効性が議論されてきた。しかし、「有効性が見られなかった」として治療薬としての承認申請がされなかった(NHK)。安倍政権に限らず、新型コロナ治療薬として投与する決定はしていない。
判定
言説には複数の誤りがある。日本政府の対応としても、ワクチン返送、イベルメクチンの投与はしていない。
あとがき
検証した部分だけでなく、拡散した言説は「安倍元首相がWEFの指示を聞かなかったから暗殺された」と主張しています。注目を集める事象についてありもしない陰謀を主張する「陰謀論」の典型です。注意しましょう。
検証:木山竣策
編集:古田大輔
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
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