AIが誤情報を再生産/韓国戒厳令の背景は偽情報とファクトチェックの縮小?【今週のファクトチェック】
Xが提供する生成AIが、質問に対して過去の誤った情報を取り込んで答えるという事象が起きました。誤情報の再生産です。韓国の尹大統領の非常戒厳宣言の背景に、偽情報の拡散があり、さらにファクトチェックの活動の縮小が関わっているのではないかとNHKが報じました。
今週のファクトチェック
北九州の中学生殺傷事件、被害者の父親は警察署長?同姓なだけ
2024年12月14日夜、北九州市小倉南区のファストフード店で起きた中学生殺傷事件をめぐって、被害者の父親が福岡県警の警察署長だとする情報が拡散しましたが、誤りです。同姓ですが、県警が否定しています。
田村元厚労相が国会で「年収200万円は低収入でない」と答弁?そのような直接的な発言はない
自民党の田村憲久・元厚生労働大臣が「年収200万円は低収入でない」と国会答弁したとの主張が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。一定以上の所得がある後期高齢者の医療費窓口負担増をめぐり衆議院予算委員会審議で、共産党の宮本徹衆院議員の「年収200万円の75歳以上の方が低所得者なのか高所得者なのか」という質問に「75歳以上の後期高齢者の所得の中では単身で年収200万円は上位30%に該当する」と述べており「年収200万円が低収入ではない」と答弁したわけではありません。
WHO事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言? ワクチン開発前のニュースの切り取り
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言したとの主張が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。2020年8月3日の会見で「(新型コロナウイルスの)感染から守ってくれるワクチンをみんなが期待している。しかし現時点で特効薬はなく今後もないかもしれない」と発言していますが、当時は新型コロナウイルスのワクチンを開発中でした。
年金支給開始年齢は80歳からにすべきと小泉進次郎氏が発言? AIが誤情報を再生産
「小泉進次郎氏が2024年9月に年金支給開始年齢は80歳からにすべきと発言した」という情報が拡散しましたが、誤りです。拡散した情報はAIが生成したもので、小泉氏の発言は年金受給開始の選択の幅を広げる内容のものでした。
秋田県知事「熊に小型の爆発物を食べさせて爆破すればハンターは必要ない」と発言? 後半部分が捏造
秋田県の佐竹敬久知事が「熊に小型の爆発物を食べさせて爆破すればハンターは必要ない」と発言したとする情報が拡散しましたが、不正確です。拡散した投稿はまとめサイトのXアカウントからで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。後半部分が捏造です。
今週のJFC動画
池上彰氏のフェイク発言がSNSで拡散
ジャーナリストの池上彰氏がアメリカ大統領選について「トランプ氏の勝利は不正によるものだ」「共産社会は理想」と発言したという情報が拡散しましたがいずれも誤りです。テレビ局は「そのような発言はない」「発言は切り抜き」と否定しています。
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災害時の偽情報、警察がSNS事業者へ提供 迅速削除の仕組み導入(朝日新聞)
災害時に拡散する偽情報に対して、警察庁は収集した偽情報をSNS事業者に提供して迅速に削除する仕組みを導入するとしています。
ネットの主張を大統領が… 韓国 非常戒厳の背景に何が?(NHK)
12月3日、尹大統領が突如出した非常戒厳。その背景にあると考えられているのが「不正選挙があった」という根拠不明の主張です。さらに、韓国におけるファクトチェックの活動が縮小したことも影響しているのではないかとNHKサタデーウォッチ9が特集しました。
政治家から圧力も?既存メディアの選挙報道に「自主規制は責任逃れ」「テレビ局は公平性の解釈のスタンスを示せ」(ABEMAニュース)
兵庫県知事選挙をめぐって、マスメディアの課題は何か、今後どうすべきかなのかJFCの古田大輔編集長とノンフィクションライターの石戸諭氏がABEMAヒルズで 対談しました。
アップル社のAIが誤ったニュースの見出しを作成(BBC)
大手ジャーナリズム団体が、米国で起きた注目の殺人事件について誤解を招くような見出しをアップルが作成したことを受けて、同社に新しい生成AI機能を廃止するよう求めたとBBCが伝えています。
兵庫県知事選SNS分析 斎藤氏擁護の渦、一般層巻き込む(日経新聞)
兵庫県知事選で斎藤元彦氏の再選の原動力となったソーシャルメディア。支持の声はどのように広がっていったのか。日経新聞がXのアカウントのつながりを分析しています。
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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