兵庫県知事選の背景 注目すべき「情報の空白」と「情報の権威の交代」【今週のファクトチェック】
県議会の全会一致の不信任決議で失職した斎藤元彦氏が兵庫県知事選で返り咲きました。候補者や兵庫県議会に関する様々な情報が拡散したと注目されましたが、その背景にはマスメディアによる「情報の空白」を埋めるソーシャルメディアの影響力の増大と、それに伴う「情報の権威の交代」があります。
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JFCからのニュース
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今週の解説
斎藤氏再選の裏にSNS・動画 投票の参考情報で新聞テレビ上回る 偽・誤情報だけでは語れない兵庫県知事選・前編
兵庫県知事選でパワハラ問題などで失職した前知事の斎藤元彦氏が再選しました。「SNSの勝利」「マスメディアの敗北」などとも言われる中、何が起きていたのか。都知事選の石丸現象や総選挙の国民民主党の躍進、アメリカ大統領選などと比較し、アルゴリズムやバイアスなどの観点から解説します。
「斎藤氏の支持者がデマを熱狂的に信じた」という言説の落とし穴 兵庫県知事選・後編
兵庫県知事選をめぐる偽・誤情報の拡散に関する解説の後半です。背景にはマスメディアの影響力低下とソーシャルメディアにおける選挙情報の拡大という世界で共通する大きな潮流があります。その中で、信頼性の高い情報に基づいた民主主義を成立させるためには、どうすればよいか。
今週のファクトチェック
トランプ大統領、就任が2ヵ月早まった? パーティーでの「提案」
アメリカのトランプ次期大統領が就任を2カ月早めるとする投稿が拡散しましたが、誤りです。自身の別荘でのパーティーでの発言で、実現する見通しはありません。
潜在的な国民負担率は62.9%? 過去のデータで現在は改善
「財務省『潜在的国民負担率、62.9%に達しちゃった』」という言説が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。2020年にはそのレベルに達していますが、現在は改善傾向で50%台です。
アメリカでは帰化して三世代おかないと政治家になれない? 大統領や連邦議会議員に親の国籍は関係ない
「アメリカでは帰化して三代、間におかないと政治家になれない」という言説が拡散しましたが、誤りです。大統領や連邦議会上下院議員になるために、年齢や在住期間の規定はありますが、親の国籍は関係ありません。また、添付画像は日本に関する「帰化した国会議員」のリストですが、実際に帰化した人物はわずかで、ほとんどが誤ったものです。
「(斎藤知事の)パワハラはなかった」と百条委の委員長が発言? 前後の文脈を無視した切り取り動画
兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事をめぐって、百条委員会(調査特別委員会)の奥谷謙一委員長が「パワハラはなかった」と発言したという動画付きの言説が拡散しましたが、不正確です。拡散した動画は発言の一部を切り取ったもの。奥谷委員長は拡散した動画の発言後、「厳しい叱責を受けたという人はいたか?」と問われて「整理できていないが、『厳しい叱責を受けたことがある』と答えた人は結構おられたと思う」と説明。パワハラに当たるかどうか評価したいと答えています。
斎藤知事は「全国知事会議」の出席率36%? 2つの会議を混同
兵庫県の斎藤元彦知事が、百条委員会の尋問を欠席して政府主催の全国知事会議に出席すると報じられました。この件について「斎藤知事のこれまでの全国知事会議出席率=36%」という主張が拡散しましたが、誤りです。全国の知事が集まる会議には、斎藤知事が今回出席する政府主催の「全国都道府県知事会議」と、全国知事会が主催する「全国知事会議」があり、拡散した表は全国知事会主催の出欠です。斎藤知事1期目の全国都道府県知事会議への出席率は約7割です。
今週のJFC動画
斎藤元彦氏が勝利した兵庫県知事選で偽・誤情報が蔓延してたって本当?
誰でも投稿できるSNSや動画に不確かな情報が多いことは事実です。しかし、斎藤氏の県政を支持した人たちもいるため、ソーシャルメディアや偽・誤情報だけが勝利の理由ではないです。また、「パワハラはなかった」と委員長が言ったという内容の動画が拡散しましたが、これは一部を切り抜いた情報で、まだ結論は出ていません。
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兵庫県知事選挙については、メディア各社が様々な視点から分析した記事を出しました。
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兵庫県知事選挙で、NHKの出口調査で投票する際に何を最も参考にしたか聞いたところ、「SNSや動画サイト」が「新聞」と「テレビ」を上回りました。今回の選挙で何が起きていたのか、NHKによる分析記事です。
兵庫県知事選挙 有権者の不信、既成政党やメディアに(日経新聞)
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兵庫県知事選SNSが決め手に?テレビ・新聞ではなくSNSを情報ツールとする有権者の背景とは(日テレNEWS)
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兵庫県知事選 稲村氏後援会がSNS凍結めぐり告訴状提出(NHK)
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ロシアのファクトチェッカー協会の青写真:本当の目的は何か?(Stop Fake)
ロシアが国際的な「ファクトチェック協会」を設立し、自国の視点や価値観を共有する人々を結集しようとしているとウクライナのファクトチェック団体「StopFake.org」が報じています。その真の目的は。
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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