パリオリンピックをめぐる誤情報/JFCファクトチェッカー認定試験開始【今週のファクトチェック】

パリオリンピックをめぐる誤情報/JFCファクトチェッカー認定試験開始【今週のファクトチェック】

JFCは、7月29日からファクトチェッカー認定試験を開始しました。パリオリンピックが開幕し、数多くの偽・誤情報が拡散しています。イギリスでは殺人事件をめぐって、SNSで流れる偽・誤情報が混乱を煽っています。

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JFCファクトチェック講座とファクトチェッカー認定試験

理論から実践まで学べるJFCファクチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。

理論から実践まで学べるJFCファクチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験 申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。

JFCファクトチェッカー認定試験 申し込みはこちら
日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

JFCのファクトチェック記事

パリ五輪のトライアスロンはスイムなしで開催?匿名掲示板のスレッド名が拡散

2024年パリオリンピックで競技会場となっているセーヌ川の水質悪化問題に関連して、「パリオリンピックのトライアスロンが水泳無しで開催することを決定」との言説が拡散しましたが、誤りです。トライアスロン競技は男女ともに7月31日(現地時間)に開催され、選手たちは予定通りセーヌ川で泳ぎました。

パリ五輪のトライアスロンはスイムなしで開催?匿名掲示板のスレッド名が拡散【ファクトチェック】
2024年パリオリンピックで競技会場となっているセーヌ川の水質悪化問題に関連して、「パリオリンピックのトライアスロンが水泳無しで開催することを決定」との言説が拡散しましたが、誤りです。トライアスロン競技は男女ともに7月31日(現地時間)に開催され、選手たちは予定通りセーヌ川で泳ぎました。 検証対象 2024年7月31日、「【速報】パリオリンピックのトライアスロン、水泳無しで開催することを決定」との投稿がX(旧Twitter)で拡散した。2024年8月1日現在、69万回以上の閲覧回数と2100件以上のリポストを獲得している。 言説を投稿したアカウントは「ツイッター速報~BreakingNews」で、「水泳無し!?それトライアスロンじゃないじゃん」「あまりにもお粗末すぎる。サーフィンみたいに別のところでやればよかったのに!」などのコメントがある一方で、「スイム、スタートしましたよ?」と指摘する声もある。 検証過程 懸念されていた水質の悪化 セーヌ川は長年水質の悪化が懸念されていたが、浄水対策が進められ、トライアスロンと水泳の「オープンウォータースイミン

今週のJFC動画

X(旧Twitter)で「秋田県沿岸部で桁違いの放射線量を観測中」という言説が拡散しましたが、誤りです。秋田県内の観測地点で放射線量に異常値は見られませんでした。自分でできる検証法を紹介します。

その他の関連記事

パリオリンピックをめぐって誹謗中傷が相次ぐ

パリオリンピックではSNSで選手や審判に対する誹謗中傷が相次ぎ、JOC=日本オリンピック委員会が異例の声明を出したとNHKが報じています。国際大学GLOCOMの山口真一准教授が、どのような投稿が誹謗中傷になるのか、そうした投稿をしないためにどうすべきか解説します。

オリンピック 選手や審判へひぼう中傷相次ぐ その投稿の前に… | NHK
【NHK】金メダルの選手に「立っているだけで勝った」審判には「下手くそ」「辞めてしまえ」パリオリンピックではSNSでひぼう中傷が相…

USAトゥデイがオリンピックのファクトチェックまとめ

パリオリンピックの開会式直後から数多く拡散し続ける偽・誤情報をアメリカの全国紙USAトゥデイ が検証してまとめています。

What’s true and false about Paris Olympics: Fact check roundup
A roundup fact checks about the 2024 Paris Olympics.

災害時のSNSデマ、削除要請強化 能登地震受け警察庁

警察庁が能登半島地震を踏まえて大規模災害への対応力強化に向けた対策をまとめたと日経が報じています。災害時のSNS上の悪質なデマに関して事業者への削除要請を強化します。

災害時のSNSデマ、削除要請強化 能登半島地震受け警察庁 - 日本経済新聞
警察庁は1日、1月に発生した能登半島地震での活動を踏まえ、大規模災害への対応力強化に向けた対策をまとめた。災害時のSNS上の悪質なデマは人命救助や復旧活動に深刻な影響を及ぼす恐れがあり、事業者への削除要請を強化する。具体的な手順を8月末をめどにまとめ、各都道府県警に周知する。警察庁は4月、警備運用部長をトップとするワーキンググループを設け、能登半島地震で浮上した課題の対応策を議論してきた。

ファクトチェックの限界

白黒つけられない内容に関してはファクトチェッカーは検証を控えるべきだとアメリカで偽情報対策に取り組むNewsGuardからの論考です。カマラ・ハリス副大統領が「boarder czar(国境の皇帝)」かどうかという検証の実例を挙げています。

Reality Check Commentary: The Limits of Fact Checks
The debate over Kamala Harris’s immigration work in the Biden administration shows that fact checkers should sometimes stay out of it, writes NewsGuard editorial director Eric Effron

イギリス少女刺殺事件、偽情報から暴動に発展

イギリス中部の街サウスポートのダンススタジオで3人の少女が刺殺された事件をめぐって、犯人が移民だ、イスラム教徒だなどの偽情報が拡散、事件に抗議するデモ参加者がモスクを襲撃したり、警察と衝突したりする暴動に発展しました。BBCはSNSが暴動を煽っていると報じています。

Southport attack: Did social media fan the flames of riot?
False accusations about the attacker followed a familiar pattern, the BBC’s Marianna Spring finds.

マスク氏、ハリス副大統領のディープフェイク動画をXで拡散

イーロン・マスク氏が自分が所有するX(旧Twitter)で、米大統領選挙で民主党の候補になったハリス副大統領の偽動画を拡散させました。批判の声が上がっています。

How Elon Musk and a Kamala Harris deepfake ad sparked a debate about free speech and parody
A parody campaign ad using a fake Kamala Harris voice reposted by Elon Musk brings questions about deepfakes and the election into sharp focus.

検証手法や判定基準については、JFCファクトチェック指針をご参照ください。検証記事を広げるため、SNSでの拡散にご協力ください。

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イワシやクジラの漂着は地震の影響?関連づける根拠やデータはない【ファクトチェック】

イワシやクジラの漂着は地震の影響?関連づける根拠やデータはない【ファクトチェック】

イワシが大量に海岸に漂着しているニュースとともに「地震の影響」といった言説が拡散していますが、根拠不明です。イワシやクジラ、イルカの海岸の漂着と地震を結びつけるデータはありません。 検証対象 北海道函館市の海岸に大量のイワシの群れが漂着した過去のニュース映像とともに「地震とかにお気をつけて下さい」「人工地震発生装置」「地震の前に打ち上げられる」などという投稿がXで拡散した(例1、例2、例3)。 検証過程 投稿に添付されていたのは、2023年12月7日に北海道函館市の海岸に大量のイワシの群れが漂着したことを伝えたANNニュースだ。 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、大きな地震と魚やイルカ、クジラの海岸への漂着と関連性があるのかを調べた。 イワシの漂着と地震との関連 JFCは、この投稿にも使われている2023年12月のイワシ漂着に関して、福島第一原発事故の処理水放出を関連づけて拡散した言説を検証したことがある。 その際にJFCが取材した道立総合研究機構 函館水産試験場調査研究部の鈴木祐太郎主査はイワシが大量に漂着する事例は「北海道や青森県で

By 宮本聖二
トランプ前大統領「ハイチ移民がペットを食べている」? 当局の否定相次ぐ【ファクトチェック】

トランプ前大統領「ハイチ移民がペットを食べている」? 当局の否定相次ぐ【ファクトチェック】

2024年9月10日の米大統領選テレビ討論会で、共和党候補ドナルド・トランプ前大統領が「オハイオ州に流入してきた連中が(州内のスプリングフィールド市で)犬や猫などのペットを食べている」と発言しました。トランプ氏の発言は誤りです。市の担当者は「移民コミュニティがペットを傷つけた情報はない」と否定。市警も「ペットが盗まれたり食べられたりしたという報告はない」としています。 検証対象 2024年9月10日の大統領選テレビ討論会で、共和党候補のトランプ氏は次のように発言した(発言部分は動画1や動画2)。 「スプリングフィールドにやってくる連中(ハイチ系の移民)は犬や猫を食べている。そこに住む人たちのペットを食べている」 その情報を即座に否定した討論会の司会者に対し、「テレビに映った人々が『私の犬が盗まれて食料にされた』と話していた」とも発言した。 トランプ氏の発言は波紋を広げ、オハイオ州の市庁舎に爆破予告が届くという事態にまで発展した。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、トランプ氏の発言を検証した。 この発言は米メディアを中心にABC、BBC、CNN、米

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
小泉進次郎氏「年金受給は80歳から」? 開始年齢の選択肢を広げる発言【ファクトチェック】

小泉進次郎氏「年金受給は80歳から」? 開始年齢の選択肢を広げる発言【ファクトチェック】

自民党総裁選に立候補している小泉進次郎氏が「年金受給年齢は80歳からでいい」と発言したかのような言説が拡散しましたが、不正確です。現在の制度では、原則65歳受給開始で、60歳から75歳までの繰り上げ・繰り下げが選択できますが、小泉氏の発言は80歳まで選択肢を増やすものです。 検証対象 2024年9月の自民党総裁選に合わせて小泉進次郎氏が「65歳以上は『高齢者』なんてナンセンス』」「年金の受給開始年齢は『80歳でもいいのでは』」などと発言したという言説が拡散した(例1、例2、例3)。多いものは800万超の閲覧がある。 「いいわけねーだろ 親父は73で死んだわ」「国民の半数は一生年金を払って1円も認められないまま死んでいくんですね」と言った批判も広がっており、その多くは小泉氏が年金受給開始年齢を80歳まで遅らせるような発言をしたと受け止めている。 一方で、「進次郎は『年金80歳から』なんて言っていない」「あくまで個人の選択肢を広げるかどうか、という提案」などと拡散した投稿を否定する投稿や引用リポストもある。 この言説をめぐっては、InFactが検証して「不正

By 宮本聖二
ファクトチェック機関が減っている理由と「狭義の検証」に止まらない大手メディアの役割【解説】

ファクトチェック機関が減っている理由と「狭義の検証」に止まらない大手メディアの役割【解説】

「世界中のファクトチェック機関が資金難や外部圧力で岐路に立たされている」(2024年9月11日)という記事を日本経済新聞が報じました。ファクトチェック機関が減っているというデータを紹介しています。ファクトチェックはこのまま停滞・衰退していくのか。その背景と対策を解説します。 減っているのは新規参入 日経新聞の記事「ファクトチェック機関、運営岐路に 資金難や外部圧力で」が紹介したのは、米デューク大学のReporters’ Labが公開しているデータだ。2024年5月30日発表のデータによると、2022年に世界で活動しているファクトチェック機関の数は111カ国457だったが、2024年には439に減ったという。 ファクトチェック機関の多くは、この10年で誕生した。新しく生まれた組織もあれば、大手メディアの特設チームとして活動を始めたものもある。できたばかりで基盤が弱く、資金集めにも苦労するため、消えていく組織は以前から少なくなかった。 それでも、新しく生まれる組織が多いことがファクトチェック業界の急成長を支えていた。Reporters’s Labの集計では20

By 古田大輔(Daisuke Furuta)