パンデミック条約でワクチン強制接種&偽情報・誤情報を取り締まる?/英国総選挙・パリ五輪が標的に/JFCへの指摘に対する見解【注目のファクトチェック】

パンデミック条約でワクチン強制接種&偽情報・誤情報を取り締まる?/英国総選挙・パリ五輪が標的に/JFCへの指摘に対する見解【注目のファクトチェック】
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世界保健機関(WHO)で議論されているパンデミック条約をめぐって、大量の偽情報・誤情報が世界的に拡散しています。今夏のイギリス総選挙やパリ五輪なども標的になっています。SlowNewsが公開した記事の中でのJFCの体制や資金、検証手法などに関する指摘に対し、運営委員会と編集部は見解を発表しました。

SlowNews記事に対するJFC見解

JFCの体制や資金に関する報道について 運営委員会見解

JFCの体制や資金に関する報道について 運営委員会見解
スローニュース社が5月21〜23日に配信したファクトチェックに関する3本の記事で、日本ファクトチェックセンター(JFC)について、運営体制や資金源の透明性などに問題があるのではないかとの指摘がありました。 JFCの運営については、設立時から運営体制や資金提供元を公表し、適宜説明を追加して参りましたが、運営委員会より改めて下記のとおりご説明申し上げます。また、今後につきましても、必要に応じて適宜説明を追加し、読者の皆様に安心して記事を読んでいただけるように心がけていく所存です。 ガバナンス体制について JFCの運営にあたっては、「編集権の独立」が重要との視点に立ってガバナンス体制を工夫し、日本ファクトチェックセンター設置規程とファクトチェックガイドラインで詳細を定めています。 具体的には、運営委員会はファクトチェックガイドラインを定めるほか、事後的に個別の記事について編集部に質す権限を持っていますが、日々の記事については編集部が独自に題材を選び配信をしています。一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)は運営主体として法的な責任を持つとともに事務局業

「検証手法を検証する」へのJFC編集部見解

SlowNews記事「検証手法を検証する」へのJFC編集部見解
日本ファクトチェックセンター(JFC)は2022年10月の発足から1年半、日々、正確で透明性の高いファクトチェックに取り組んでいます。この度、SlowNewsで公開されたフロントラインプレスの記事でご指摘を受けたJFCのファクトチェック手法への疑問や懸念も参考にしつつ、今後はさらに体制を拡充し、より幅広く難易度が高い検証に取り組んでいきたいと考えております。 SlowNewsの記事の読む中で、ファクトチェックの方法論に関し、私たちの言及が不足していた部分もあるかと思い、Webサイトに公開している点も含めて、改めて説明させていただきます。 なぜオープンソースに頼るのか 「公開」「透明性」の原則 SlowNewsの記事「ファクトチェックの『検証手法』を検証する」は「公的機関のオープンソースに頼る手法には限界があるのではないか」と指摘し、また、「JFCのファクトチェックには当事者・関係者取材が乏しく、公開データのみで真偽を判断するものも目立つ」と評しています。 (ただし、SlowNewsの記事が出た時点でJFCが公開している300本を超えるファクトチェック記事の

JFCのファクトチェック記事

大阪万博の児童生徒の無料招待事業に75%が参加希望?

2025年に開かれる大阪・関西万博で大阪府内の児童生徒が無料招待される事業をめぐり、吉村洋文知事が中間報告として「75%の学校から参加希望」と発言。一方、府内の市長から「不参加の選択肢はなく、実質強制参加」の声が出ました。どちらが事実と言えるでしょうか?

大阪万博の児童生徒の無料招待事業に75%が参加希望?【ファクトチェック】
2025年に開かれる大阪・関西万博で大阪府内の児童生徒が無料招待される事業をめぐり、吉村洋文知事が中間報告として「75%の学校から参加希望」と発言。一方、府内の市長から「不参加の選択肢はなく、実質強制参加」の声が出ました。どちらが事実と言えるでしょうか? 検証対象 2024年5月27日、大阪府の吉村洋文知事が「児童生徒の万博招待事業ですが、現時点で1280校から回答あり、75%に相当する950校もの学校から参加希望がありました。残り25%も未定・検討中です」などとポストした。 吉村知事のポストに対して、大阪府交野市の山本圭市長が5月28日にXに投稿。「回答は『希望する』と『未定・検討中』の二択であり、不参加の選択肢はございません」「これでは、実質、強制参加です」などと引用リポストをした。 山本市長はWebサイトのスクリーンショットと思われる画像も添付している。このポストは2700回以上リポストされ、X上で20万回以上表示された。山本市長は、この件に関して多数投稿している。 検証過程 不参加の選択肢は存在しなかった インターネット上に「2025大阪

パンデミック条約でワクチンを強制接種?

感染症の世界的大流行(パンデミック)への対策を強化する「パンデミック条約」をめぐり、「ワクチンを強制接種させる条約だ」という言説が拡散しましたが、誤りです。条約案にはワクチンの強制接種を求める文言はありません。

パンデミック条約でワクチンを強制接種?【ファクトチェック】
感染症の世界的大流行(パンデミック)への対策を強化する「パンデミック条約」をめぐり、「ワクチンを強制接種させる条約だ」という言説が拡散しましたが、誤りです。条約案にはワクチンの強制接種を求める文言はありません。 検証対象 世界保健機関(WHO)で議論が進められているパンデミック条約をめぐって、「ワクチンの強制接種を可能にする」などという言説が多数拡散した(例1,2,3)。 日本ファクトチェックセンター(JFC)はパンデミック条約に「ワクチンを強制接種させる」内容が含まれているか検証した。 米ファクトチェック団体のPolitiFactも同様の言説を検証して条文案などをもとに「誤り」と判定している。 検証過程 パンデミック条約とは WHOの加盟国が議論している条約。感染症が発生した際の情報共有やワクチンの確保などによる国際的な連携の強化を目的としている。 2024年5月末のWHO年次総会での採択を目指して、2年以上かけて交渉してきたが、ワクチンの公平な供給などをめぐり、先進国と途上国の対立が大きく、交渉はまとまらなかった。WHOはこの条約について最

パンデミック条約は偽情報・誤情報を取り締まる?

国際的な協力で感染症対策を強化する「パンデミック条約」をめぐり、「偽情報・誤情報を取り締まり、言論の自由を脅かす」という言説が拡散しましたが、不正確です。条約案は偽・誤情報への対策を含んでいますが、削除や投稿の禁止などではなく「リテラシーや信頼の強化」などを挙げています。

パンデミック条約は偽情報・誤情報を取り締まる?【ファクトチェック】
国際的な協力で感染症対策を強化する「パンデミック条約」をめぐり、「偽情報・誤情報を取り締まり、言論の自由を脅かす」という言説が拡散しましたが、不正確です。条約案は偽・誤情報への対策を含んでいますが、削除や投稿の禁止などではなく「リテラシーや信頼の強化」などを挙げています。 検証対象 世界保健機関(WHO)で議論が進められているパンデミック条約をめぐって、「偽情報、誤情報を取り締まる内容」「言論の自由が奪われようとしています」などの言説が拡散している(例1,2,3)。 日本ファクトチェックセンター(JFC)はパンデミック条約が「偽・誤情報を取り締まる」「言論の自由を奪う」内容かを検証した。 検証過程 パンデミック条約とは WHO加盟国が議論している条約。感染症が発生した際の情報共有やワクチンの確保など国際的な連携の強化を目的としている。 2024年5月末のWHO年次総会での採択を目指して、2年以上かけて交渉してきたが、先進国と途上国の対立が大きく、交渉はまとまらなかった。WHOはこの条約について最長1年の議論の延長を決めた。 条約の偽・誤情報対

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「100年前と変わらない被災地の避難所」という画像付き言説が拡散しましたが誤りです。能登半島地震とキャプションが付けられた画像は1995年の阪神淡路大震災の際に撮影されたものです。

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「100年前と変わらない被災地の避難所」という画像付き言説が拡散しましたが誤りです。能登半島地震とキャプションが付けられた画像は1995年の阪神淡路大震災の際に撮影されたものです。 検証対象 2024年6月5日、「100年前と変わらない被災地の避難所」という画像付き投稿が拡散した。投稿には「#これは私の中では衝撃的な写真 」というハッシュタグが付けられている。画像には「1930年北伊豆地震避難所(毎日新聞社提供)」「2024年能登半島地震(神戸新聞社)」というキャプションと共に避難所の様子を撮影したモノクロの写真とカラーの写真が添付されている。 2024年6月7日現在、このポストは3000件以上リポストされ、表示回数は220万件を超える。投稿について「変わって無い」というコメントの一方で「嘘の情報」という指摘もある。 検証過程 2枚の画像はいつ撮影されたものなのか。Google画像検索で範囲を選択して検索した。 モノクロの画像 「1930年北伊豆地震避難所(毎日新聞社提供)」とキャプションが付けられた画像を検索すると、毎日新聞が運営する法人向け写

今週のJFC動画

「韓国のソウル金浦空港には日本語の表示がない」という言説が拡散しましたが、誤りです。検証手法を映像でご紹介します。

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能登半島地震で4人に1人が偽情報を拡散、情報通信白書案

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偽情報、4人に1人が拡散=能登地震で―情報通信白書案
能登半島地震に関する真偽不明の情報をSNS上で見かけた人のうち、25.5%が拡散していたことが6日、分かった。総務省が策定中の2024年版情報通信白書に、こうした調査結果を盛り込む。災害時に偽情報や誤った情報が拡散されると救助や復旧の妨げになりかねない。同省は「国際的な動向を踏まえつつ、制度面を含む総合的な対策を推進する」と白書に明記し、今後、法整備などを検討する。 総務省は来月にも白書を閣議に報告した上で、公表する。6日に判明した白書の概要案は、能登地震で「異なる災害の画像や動画を添付した投稿」など、真偽不明の情報が拡散されたと指摘。調査で、こうした情報を「一つ以上見かけた」と答えた人の…

英国総選挙に向けて数多くの偽情報がTikTokで拡散

7月の英国総選挙を前に、AIが生成した偽動画が若い有権者に届いているとBBCが調査報道しました。

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欧州連合(EU)は27日、ニュースサイト「ボイス・オブ・ヨーロッパ」と関係者2人に制裁を科したと発表した。チェコ当局は3月に同サイトがロシアのプロパガンダを広めたとして制裁対象に追加しており、これをEU全域で導入した。

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イギリスのキャメロン外相がウクライナのポロシェンコ前大統領をかたる人物とメッセージのやりとりをした上で、「ビデオ会談」をしていた、と時事通信などが報じています。調査でなりすましと判明しました。

偽のウクライナ前大統領とビデオ会談 英外相、見た目では疑わず:時事ドットコム
【ロンドン・ロイター時事】英外務省は7日、声明を出し、キャメロン外相がウクライナのポロシェンコ前大統領をかたる人物とメッセージのやりとりをした上で、「ビデオ会談」をしていたと明らかにした。しかし、調査の結果、成り済ましと確認された。

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衆議院予算委で安住委員長がれいわ・大石議員の質問を途中で切った? 持ち時間を超過【ファクトチェック】

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衆議院予算委員会の安住淳委員長(立憲民主党)が、れいわ新選組の共同代表、大石晃子議員の質問を持ち時間の途中なのに遮ったと主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。大石議員は安住委員長から質問時間超過の注意を受け、最終的に58秒オーバーしました。 検証対象 2025年2月28日、「今、大石あきこさんの国会質問 15分あるのに11分で切った」「自民の都合の悪い事を言われると時間前なのに切る」などと主張する投稿が拡散した。 「時間より先に国民守れ」「安住と立憲は第二自民党、または自民党補完勢力です」などのコメントが付く一方で、「持ち時間オーバー」との指摘もある。 検証過程 衆議院インターネット中継のアーカイブで確認 日本ファクトチェックセンター(JFC)は「衆議院インターネット審議中継」で公開されている録画で、2月28日の衆院予算委員会を確認した。 大石議員の発言開始時刻は16時36分で、所要時間は15分と書かれている。 注意を受けつつ演説を続行 録画の3時間56分25秒ごろ、安住委員長が大石議員を指名し、大石議員の質疑が始まる。開始から13分30

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