ソウルの空港には日本語表示がない?/EUが生成AI対策やロシア系メディアの放送禁止など【注目のファクトチェック】

ソウルの空港には日本語表示がない?/EUが生成AI対策やロシア系メディアの放送禁止など【注目のファクトチェック】
✉️
日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら

「ソウルの空港には日本語表示がない」という誤情報が拡散しました。日韓で反感を煽るような言説は度々広がります。選挙が近づくEUでは、生成AI対策やロシア系メディアの放送活動を禁止するなどの対応がとられています。

JFCのファクトチェック記事

(動画)「米軍機を追い払うロシアの戦闘機」は誤り

「米空軍のSR-71ブラックバードを追い払うロシアのSu-27戦闘機2機」という動画が拡散しましたが誤りです。動画はゲームをもとに作成されたものです。

(動画)「米軍機を追い払うロシアの戦闘機」は誤り シミュレーションゲームの映像【ファクトチェック】
「米空軍のSR-71ブラックバードを追い払うロシアのSu-27戦闘機2機」という動画が拡散しましたが誤りです。動画はゲームをもとに作成されたものです。 検証対象 2024年5月、「米空軍のSR-71ブラックバードを追い払うロシアのSu-27戦闘機2機」という動画が拡散した。動画には米空軍の偵察機SR-71にロシアの戦闘機2機が接近する様子が映っている。 拡散した言説はロシアの外務省情報局長を名乗る人物のアカウントがXに投稿し、現在は削除されている。その後、別のアカウントから同じ文言と動画を使った言説が投稿されている。 検証過程 拡散した言説にある戦闘機の名称「SR-71」と「Su-27」でGoogle検索すると、2024年5月7日に投稿されたYouTubeの動画がヒットする。Xで拡散した動画と同じものだ。 動画の概要欄には「Created with DCS」と明記されている。DCSとは、ロシア人が設立したソフトウェア会社「Eagle Dynamics」のDigital Combat Simulatorというフライトシミュレーションゲームの略称だ。拡散

「韓国のソウル金浦空港には日本語の表示がない」は誤り

「韓国のソウル金浦空港には日本語の表示がない」という言説が拡散しましたが、誤りです。金浦国際空港には、日本語の案内表示が各所にあります。

「韓国のソウル金浦空港には日本語の表示がない」は誤り 各所に案内表示がある【ファクトチェック】
「韓国のソウル金浦空港には日本語の表示がない」という言説が拡散しましたが、誤りです。金浦国際空港には、日本語の案内表示が各所にあります。 検証対象 2024年5月7日、「『国際線出国ゲート』日本の成田空港にはハングルの案内があるが 韓国のソウル金浦空港に日本語の案内は無い」という投稿が、空港内とみられる2つの写真とともに拡散した。この投稿は2024年5月15日現在、30万回以上の表示回数と1800件以上のリポストを獲得している。 検証過程 投稿にある写真をGoogle画像検索(写真1、写真2)で検索したところ、写真1(エスカレーター頭上の案内表示)は旅行代理店サイトにある成田空港第1ターミナル地下1階エスカレーターの写真と一致した。写真2は金浦空港の保安検査場の入り口だとわかった。 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、金浦国際空港に日本語の表示があるかどうかをGoogle Mapを使って調べた。 Google Mapの検索窓に金浦国際空港を入れて検索すると12000枚あまりの写真が出てくる。そのうち空港内の表示を見ると、韓国語のほか、英語、中国

「NATO各国首脳がウクライナの政策に失望しているとBBC報道」は誤り

NATOがウクライナの政策に不満を抱いているというBBCニュースを装った映像が拡散しましたが、誤りです。ニュースの引用元とされた欧州の調査報道機関べリングキャットの創設者が「偽物だ」と否定しています。

「NATO各国首脳がウクライナの政策に失望しているとBBC報道」は誤り 捏造された動画【ファクトチェック】
NATOがウクライナの政策に不満を抱いているというBBCニュースを装った映像が拡散しましたが、誤りです。ニュースの引用元とされた欧州の調査報道機関べリングキャットの創設者が「偽物だ」と否定しています。 検証対象 2024年5月14日、ロシア発のSNSテレグラムに、BBCのロゴとタイトルをつけたニュース映像が拡散した。動画は1分45秒で、NATO各国とウクライナの間で戦闘への動員などを巡って意見が対立していると主張している。ニュースソースは「ベリングキャット」としている。 動画のキャプションにはロシア語で「NATOがウクライナの戦闘動員に不満を抱いている」と書かれ、13万6000を超える閲覧と1600以上のいいねを獲得している。 検証過程 検証対象の動画がテレグラムに投稿された翌日の5月15日、べリングキャットの創設者エリオット・ヒギンズ氏が、自身の公式Xで、拡散した動画は偽物だと投稿した。「BBCとべリングキャットの偽動画が、またテレグラムで拡散している。2023年11月以降、これで少なくとも7本目だ」と指摘している。 誤・偽情報や映像などを検証する

日本ラグビーフットボール選手会の偽アカウントが出現

日本ラグビーフットボール選手会の偽のX(旧Twitter)アカウントが出現しています。公式アカウントが注意を呼びかけています。

日本ラグビーフットボール選手会の偽アカウントが出現 関係者投稿にツリーで紛れ込む
日本ラグビーフットボール選手会の偽のX(旧Twitter)アカウントが出現しています。公式アカウントが注意を呼びかけています。 公式アカウントの画像を利用した偽アカウント 日本ラグビーフットボール選手会を装ったXアカウントが存在している。アカウント名、プロフィール、ヘッダー画像に大きな違いはないが、偽アカウントはプロフィール欄の記載がなく、LINEのリンクが貼られているのみだ。 関係者の投稿にツリー形式で投稿 偽アカウントは、元ラグビー選手の今野達朗氏や日本ラグビーフットボール選手会の投稿にリプライ形式でLINE登録と投資を促す投稿をしている。以前日本ファクトチェックセンター(JFC)でも紹介したリプライ欄に紛れ込む手口だ。 ID・フォロワー数で見分ける 公式アカウントのIDが「JRPA_info」であるのに対し、偽アカウントは英数字の羅列になっている。また、2024年5月16日現在、公式アカウントのフォロワー数は1.9万人だが、偽アカウントは2人だ。 公式アカウントが注意喚起 日本ラグビーフットボール選手会のX公式アカウントは、「偽アカウントにご注

今週のJFC動画

大きな地震が発生するたびに過去の地震や津波の画像、動画を添付した投稿が拡散します。そうした情報に現実が埋もれる危険があります。

その他の関連記事

「偽・誤情報」どう向き合う? 信頼と安全性高めるTikTokの取り組み

ショート動画のTikTok上でも誤・偽情報が大量に拡散しました。その対策について、TikTokの担当者、研究者、動画クリエーターが議論しています。 この記事はTikTokをスポンサーとして産経新聞が公開。その意味でもメディアリテラシー教育に活用できるコンテンツといえます。

「偽・誤情報」どう向き合う? 信頼と安全性高めるTikTokの取り組み[Sponsored]
手軽に動画を投稿、視聴できるショートムービープラットフォーム「TikTok」。その人気は今や、幅広い年齢層に広がっています。動画を投稿したり広めたりする際には…

EU、選挙を見据えMSに情報要求 生成AI使った偽情報対策で

欧州委員会が17日、米マイクロソフトに対して、同社の生成AIを使って作られる「ディープフェイク」などへの対応策について、情報を提供するよう要求したと朝日新聞が報じました。

EU、選挙を見据えMSに情報要求 生成AI使った偽情報対策で:朝日新聞デジタル
欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は17日、米マイクロソフト(MS)に対して、同社の生成AI(人工知能)を使って作られる「ディープフェイク」などへの対応策について、情報を提供するよう要求した。E…

EUがロシア系のメディアの活動を禁止する決定

6月6日から始まる欧州議会選挙を前にEUは、ロシアからの偽情報と影響工作に危機感を募らせて「Voice of Europe」」など4つのロシア系メディアの活動を禁止する措置を決定しました。

Press corner
Highlights, press releases and speeches

デジタルリテラシーは国家安全保障の資産(豪州)

権威主義的な国家による情報工作などを念頭に、学校でのデジタルメディアリテラシー教育に加えて、十分な資金を投入した公共情報リテラシーキャンペーンが必要。オーストラリア戦略政策研究所の発信です。

Digital literacy is a national security asset | The Strategist
Not long ago, coordinated disinformation and its trail of social and political chaos was something that happened to other countries. No longer. Authoritarian states have expanded their information operations in Australia, and local actors are…

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

次々と出現する企業や著名人の偽アカウントに注意 一つの神社だけで100を超える事例も

次々と出現する企業や著名人の偽アカウントに注意 一つの神社だけで100を超える事例も

XやInstagramなどのSNSで、企業や著名人や神社などの公式を装う偽アカウントが続々と出現しています。通報されて削除されても、また新しいものが生まれる状況で、一つの神社だけで100を超える偽アカウントが確認される例もあります。日本ファクトチェックセンターだけでなく、新聞やテレビなどもこの問題を取り上げて来ましたが解決していません。 上野東照宮の偽アカウントが100を超える 東京都台東区にある上野東照宮のX公式アカウントは2025年4月22日、大量の偽アカウントがあると注意喚起の投稿をした。 「Xの上野東照宮偽アカウントが、報告しても報告しても減らず、日に日に増えるばかり、今朝数えたら120ほどありました」 Xでアカウント検索すると、プロフィール欄に「PayPayポイントをプレゼント」と書かれた上野東照宮を騙るアカウントが大量に見つかる。 神社の偽アカウントは他にも確認されている。 東京大神宮(東京都千代田区)のX公式アカウントも4月21日、「偽アカウントの存在が複数確認されました。当宮の写真を使用しておりますが一切関係ございません」と投稿している

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
日本ファクトチェックセンターは「反日左翼」? データだけ見ると「自民党の犬」? 偽情報の標的と検証対象はどう変わっていくのか

日本ファクトチェックセンターは「反日左翼」? データだけ見ると「自民党の犬」? 偽情報の標的と検証対象はどう変わっていくのか

日本ファクトチェックセンター(JFC)への批判で最も多いのは「偏っている」「検証対象を恣意的に選んでいる」というものです。「JFCは偏っていません」と口だけで反論しても説得力がありません。データを見てみましょう。 「反日」「反自民」などの批判の中身 X上での日本ファクトチェックセンターや筆者(古田)あての批判には、例えば、以下の様なものがあります。 「反日的なファクトチェック」「左翼御用達偏向機関」「反日圧力団体」「立憲民主党のサポーター」 これらの批判の多くに共通するのはJFC編集長(古田)が過去に朝日新聞で働いていたことに言及していることです。批判の論理としては「朝日新聞=反日であり、朝日新聞で働いていた古田も反日であり、現在も朝日新聞の影響下にあると見られる」というものです。 ちなみに古田が朝日新聞を辞めたのは10年前の2015年。以降、取材を受けたことやイベントのゲストに呼ばれたことはありますが、給与をもらったことや何らかの契約を交わしたり、指示を受けたりしたことはありません。また、取材を受けた回数では、朝日よりも読売新聞の方が多いです。 JF

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
ヒカキン氏「サリンは撒かれてよかったと思う」と発言? 捏造した画像【ファクトチェック】

ヒカキン氏「サリンは撒かれてよかったと思う」と発言? 捏造した画像【ファクトチェック】

YouTuberのヒカキン氏が「サリンは撒かれてよかったと思う」と発言したという情報が拡散しましたが、誤りです。ヒカキン氏は過去にそのような投稿をしていません。投稿したアカウントは過去にもヒカキン氏の誤情報を拡散しています。 検証対象 2025年4月22日、「麻原大好きなHIKAKINマジでエグい」という文言と共に、ヒカキン氏のXアカウントが「サリンは撒かれて良かったと思う 今の政治は日本の魚介ぐらい終わってるからな みんなも今は亡き真の聖人麻原様に敬意を払おう」と発言しているかのような画像付き投稿が拡散した。 2025年4月24日現在、この投稿は1000件以上リポストされ、表示回数は615万回を超える。投稿について「ヒカキンさんを見る目が変わったわ」「これガチならエグすぎる」というコメントの一方で「HIKAKINの名を使ってこの記事はやり過ぎ」という指摘もある。 検証過程 投稿主は過去にも誤情報を拡散 今回拡散した投稿を発信した「麻原彰晃名言bot」は、オウム真理教の元代表麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚の名言を紹介するbotを名乗っている。

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
日本は車の安全試験でボンネットにボウリング球を落とす?  過去に否定された誤情報【ファクトチェック】

日本は車の安全試験でボンネットにボウリング球を落とす? 過去に否定された誤情報【ファクトチェック】

アメリカのトランプ大統領が各国との関税交渉に関連して、非関税障壁の一例として日本ではボウリング球を車に落とす安全試験があると主張しましたが、誤りです。過去にも検証された誤情報です。 検証対象 4月20日、トランプ氏は自らが設立したソーシャルメディアTruth Socialで各国の非関税障壁の例を8つ記して投稿した。6番目に「Protective Technical Standards(保護技術基準)」として「Japan’s bowling ball test(日本のボウリング球テスト)」を挙げている。 検証過程 トランプ氏は、大統領1期目の2018年に同様の発言をしていた。ワシントンポストの当時の記事によると、日本では車体の耐久性を確認するために「ボーリング球テスト」があり、「車のボンネットに20フィート(約6メートル)の高さからボウリング球を落としてへこんだら不合格になる」と演説したという。 ボウリングボールを落とすテストはない 国土交通省によると、日本の自動車の製造・販売業者は、国が定める安全や環境の基準について、43項目の審査に合格したうえで

By 宮本聖二

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は5月28日(日)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0518.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのよう

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)