中東の紛争/四国の地震/選挙をめぐる偽情報とAI【注目のファクトチェック】

中東の紛争/四国の地震/選挙をめぐる偽情報とAI【注目のファクトチェック】
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日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら

2024年4月15-21日のファクトチェック週報です。戦争や紛争、災害時には必ず偽情報が広がります。過去映像の使い回しのような単純な事例が多く、しかも、それに引っかかる人がたくさんいるのが実情です。生成AIを使った事例で注目を集めるのは、選挙に関する偽情報です。

偽情報対策シンポジウムを開催

JFCが2024年4月16日に都内で開いた偽情報対策シンポジウム。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)と協力して実施した偽情報の実態と対策に関する2万人調査の解説やJFCの今後の取り組み、マルチステークホルダーによるパネル討論など盛りだくさんの内容でした。

アーカイブ動画

2万人調査の解説

【2万人調査】偽・誤情報、日本での拡散の実態と効果的な対策とは
日本ファクトチェックセンター(JFC)などが2024年4月16日に都内で開いた偽情報対策シンポジウム。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)がJFCと協力して実施した偽情報の実態に関する2万人調査の概要を解説しました。以下はシンポでの発表のまとめです。 アーカイブ動画と報告書(全文)と概要版は文末へ。 山口真一GLOCOM准教授「衝撃的な数字」 GLOCOMの山口真一准教授は経済学博士で専門は「計量経済学」。SNS上の偽情報、誹謗中傷、ネット炎上といった社会問題や、情報社会の新しいビジネスモデルなどについて実証研究をしている。今回の調査は2024年2月に実施され、アンケートが予備調査2万件、本調査5000件、文献調査、インタビュー調査、有識者会議と多岐にわたる。 14.5%しか誤っていると気づかない アンケートでは5つの分野(政治:保守有利、政治:リベラル有利、医療・健康、戦争・紛争、多様性)で計15件の実際に拡散した偽情報について、見聞きしたことがあるかを聞いた。 結果は全体で37%が「見聞きしたことがある」。現実に社会に広が

JFCによる総合的な対策の紹介

検証・教育・研究・開発など総合的な偽情報対策のハブに 日本ファクトチェックセンター
日本ファクトチェックセンター(JFC)などが2024年4月16日に都内で開いた偽情報対策シンポジウム。国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM)がJFCと協力して実施した偽情報の実態に関する2万人調査の結果などを受けてJFCが今後、どのような施策に取り組むかを私(古田大輔JFC編集長)が説明しました。以下がその内容です。 JFCが発足1年半で成し遂げたこと 今後の施策について説明する前に、2022年10月1日に正式発足したJFCの現状について説明しました。 発信を強化し、国際ファクトチェックネットワークに加盟 JFCは発足当初、月10本のファクトチェック記事の公開を目標とし、JFCサイトだけでなく、Yahoo!ニュース、X(旧Twitter)、Facebookで発信してきました。 2024年4月現在、編集部の強化や作業の効率化によって、発信は動画を含め月30本ペースに。2023年5月には国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の認証を受け、年に一度の総会Global Factにも参加。日本におけるファクトチェックやリテラシー普及活

JFCのファクトチェック記事

「(動画)イランがイスラエルに報復攻撃」は誤り

2024年4月13日から14日にかけてのイランによるイスラエルへの攻撃に関連して、「イランがイスラエルに報復攻撃開始」というコメント付きの動画が拡散しましたが誤りです。動画はいずれも今回のものではなく、過去に撮影された映像です。

「(動画)イランがイスラエルに報復攻撃」は誤り 関係のない映像【ファクトチェック】
2024年4月13日から14日にかけてのイランによるイスラエルへの攻撃に関連して、「イランがイスラエルに報復攻撃開始」というコメント付きの動画が拡散しましたが誤りです。動画はいずれも今回のものではなく、過去に撮影された映像です。 検証対象 2024年4月13日、イランはシリアにある自国の大使館が空爆されたことをめぐって、イスラエルに対してミサイルやドローン(無人機)による報復攻撃を始めた。これについて、X(旧Twitter)上で「『イランがイスラエルに報復攻撃開始』無人機攻撃 /ドローン攻撃で、いよいよ第三次世界大戦か。」という文言とともに2本の動画と一枚の画像が拡散した。動画には人々が逃げる様子や、ミサイル攻撃の様子などが映っている。 この投稿は2024年4月15日時点で表示回数は39万回を超える。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、動画と画像が2024年4月13日から14日にかけて、イランがイスラエルへ攻撃した際のものかどうかを検証した。 一つ目の動画は1秒程度で、街中で群衆が走る様子だ。この場面を含む合計7秒の動画は別のポスト

「英国はゼレンスキー氏がチャールズ3世の邸宅を購入したと発表」は誤り

ウクライナのゼレンスキー大統領が英国のチャールズ国王から邸宅を購入したとの言説が広まりましたが、誤りです。英国政府や王室の発表はありません。

「英国はゼレンスキー氏がチャールズ3世の邸宅を購入したと発表」は誤り そのような発表はない【ファクトチェック】
ウクライナのゼレンスキー大統領が英国のチャールズ国王から邸宅を購入したとの言説が広まりましたが、誤りです。英国政府や王室の発表はありません。 検証対象 2024年4月4日、「英国はゼレンスキー氏がチャールズ3世の邸宅を購入したと発表した」というポストが、邸宅の写真付きで拡散した。拡散したポストは、4月16日現在で15.1万回以上の表示回数と320件以上のリポストを獲得している。 引用元は「ロンドン・クライヤー」(The London Crier)と名乗る英文のウェブサイトで、ゼレンスキー大統領とチャールズ国王が握手する様子や邸宅の写真も掲載している。 検証過程 英国はハイグローブ邸が売却されたと発表していない ロンドン・クライヤーの記事によると、ゼレンスキー大統領に売却したとされるのは英国南西部のグロスターシャー州にあるチャールズ国王所有のハイグローブ邸(Highgrove House)だ。 英国王室の公式サイトや英国政府の公式サイトでは4月15日時点で、国王や王室がゼレンスキー大統領にハイグローブ邸を売却したという発表はない。 ハイグロー

「(画像)『最も嫌われている国』の地図」は誤り

「イスラエル嫌われすぎ」というコメントとともに、「各国で最も嫌われている国」と題した世界地図の画像が拡散しましたが誤りです。画像に出典元だと書かれた団体が「自分たちが作ったものではない」と否定しています。

「(画像)『最も嫌われている国』の地図」は誤り 出典とされた団体が否定【ファクトチェック】
「イスラエル嫌われすぎ」というコメントとともに、「各国で最も嫌われている国」と題した世界地図の画像が拡散しましたが誤りです。画像に出典元だと書かれた団体が「自分たちが作ったものではない」と否定しています。 検証対象 2024年4月13日、「イスラエル嫌われすぎ」というコメントとともに、「各国で最も嫌われている国(Most disliked country in each nation)」と題した世界地図の画像が拡散した。地図にはアメリカや中国、イスラエルなどの国旗が描かれている。 2024年4月16日時点で、600件以上のリポストと80万回以上の表示回数がある。 返信欄には「フェイクです」と指摘する声や、「フェイクとは言え、🇯🇵🇦🇺の🇨🇳は、リサーチ会社のデータもあるので当たりですね。」と賛同する声がある。 検証過程 JFCは2023年1月にも類似の画像を検証して「誤り」と判定している。 「(画像)各国人が最も嫌っている国」は誤り【ファクトチェック】 2023年1月に拡散した画像(左)と、今回の画像(右)は似ているが、国旗などが変更

「黒柳徹子が新しい学校のリーダーズに『令和の全共闘』と発言」は誤り

「黒柳徹子が新しい学校のリーダーズに『令和の全共闘』と発言」は誤り 発言はなく、テレビ朝日も否定【ファクトチェック】
タレントの黒柳徹子さんが、テレビ朝日系の番組「徹子の部屋」で、ダンスボーカルユニット「新しい学校のリーダーズ」に「令和の全共闘」と発言したとの言説が拡散しましたが、誤りです。黒柳さんは、そのような発言をしていません。テレビ朝日も否定しています。 検証対象 2024年4月15日、「徹子が、「『新しい学校のリーダーズ』っていうのは、令和の全共闘みたいなことをされてらっしゃるの?」って言ってたの、まだおもしろい。」というポストが、「徹子の部屋」の画像付きで拡散した。 拡散したポストは、4月19日現在で360万回以上表示され、8300件以上のリポストを獲得している。 検証過程 拡散したのは「パクツイ」 「全共闘」とは「全学共闘会議」の略称で、1968〜1969年の大学紛争の際に主体となった、既成の学生自治会組織とは別の運動体だ。 同様のポストは、2024年2月9日にも別のアカウントが「徹子「”新しい学校のリーダーズ”っていうのはなに?令和の全共闘みたいなことをされてらっしゃるの?」」という文言とともに投稿している。 このポストも4月19日現在で510万

今週のJFC動画

ショート動画

【なぜ騙される?】フェイクニュース時代を生き抜く知識と技術を学ぶJFC講座 第0章

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How people view AI, disinformation and elections — in charts

米メディア「POLITICO」は、選挙と偽情報に関する世界の世論調査を分析、AIのもたらす影響に人々が大きな懸念を抱いていると報じています。

How people view AI, disinformation and elections — in charts
Polls worldwide show an apprehension toward the emerging tech — and gaps in understanding how it works and its impact on election-related falsehoods.

検証手法や判定基準については、JFCファクトチェック指針をご参照ください。検証記事を広げるため、SNSでの拡散にご協力ください。XFacebookYouTubeInstagramのフォローもお願いします。毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録はこちらからどうぞ。また、こちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

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日本ファクトチェックセンター 学生インターンを募集

日本ファクトチェックセンター 学生インターンを募集

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、事実に基づく正確な情報を発信し、誤情報・偽情報の拡散を防ぐファクトチェック(事実の検証)に取り組む非営利組織です。今回、調査・検証のスキルを実践的に学びたい学生向けにインターン(有給)を募集します! JFCでは現在、5人のインターンが日々のファクトチェックのリサーチなどの業務に携わり、調査・検証や発信のスキルをプロのファクトチェッカーや編集者たちから実践的に学んでいます。 2人が今春卒業するため、新たに2名を募集いたします。業務や勤務の概要は以下の通りです。興味のある方は、ぜひご応募ください。 ファクトチェックは偽情報・誤情報が大量に拡散する現代に必須の技術です。JFCで学び、実践しましょう! ◆ インターン概要 業務内容: ・ソーシャルメディアで拡散する情報や著名人の発言などのリサーチ ・検証のための関連情報のリサーチ ・ファクトチェック記事の 執筆補助 ・ソーシャルメディアでの発信補助 勤務形態: ・ 1日4時間、週2〜3回(スケジュールは柔軟に対応) ・リモート勤務(オンライン) ・時給制 募

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週刊文春の新谷学元編集長「(取材対象が)結果的に自殺してもしょうがない」と発言? そのような発言はしていない【ファクトチェック】

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