紅麹とコロナワクチンを結びつける言説、なりすまし対策を求める声、韓国総選挙の情報工作【注目のファクトチェック】

紅麹とコロナワクチンを結びつける言説、なりすまし対策を求める声、韓国総選挙の情報工作【注目のファクトチェック】
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2024年4月8-14日のファクトチェック週報です。小林製薬の紅麹を含むサプリメントを摂取した人の中から健康被害が出た問題で、コロナワクチンに結びつける言説が拡散しました。なりすましアカウントや偽広告による詐欺被害の拡大に対し、プラットフォーム事業者に対策を求める声。韓国総選挙でも情報工作の存在を指摘する報道が出ています。

今週のJFC動画

【なぜ騙される?】フェイクニュース時代を生き抜く知識と技術を学ぶJFC講座 第0章

JFCは日本の偽情報の現状と対策について調べた2万人調査に基づいたYouTube講座を開始します。現代のメディア状況を理解する情報リテラシーや偽情報を検証する効果的なファクトチェックの技術やツールを解説します。

本講座の公開は7月。概要はこちらの動画をご確認ください。

ファクトチェック動画:日本の駅なのに中国語の表記が大きい理由

JFCのファクトチェック記事

小林製薬社長が「『ワクチン被害のスケープゴートにされた』と発言」は誤り

小林製薬の紅麹問題で記者会見した小林章浩社長が「『小林製薬はワクチン被害のスケープゴートにされた』と発言した」とする言説が拡散しましたが、誤りです。会見は動画で公開されていますが、そのような発言はありません。

小林製薬社長が「『ワクチン被害のスケープゴートにされた』と発言」は誤り このような発言はしていない【ファクトチェック】
小林製薬の紅麹問題で記者会見した小林章浩社長が「『小林製薬はワクチン被害のスケープゴートにされた』と発言した」とする言説が拡散しましたが、誤りです。会見は動画で公開されていますが、そのような発言はありません。 検証対象 紅麹の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、2024年4月2日、小林製薬の小林社長が、「日本政府と厚労省は、ワクチン被害のスケープゴートとして、我が社を利用し、潰しにかかっています」と発言したとする投稿が拡散した。 この投稿は4月4日時点で、140万回以上の表示回数と1万件以上のリポストを獲得している。「エイプリルフール」というコメントの一方で「応援してます!」「素晴らしい」といった反応もある。賛意を示すコメントの多くはワクチンに批判的な人たちから出ている。 検証過程 検証対象のポストは、投稿の3分後に編集されている。編集後は、「※注意 最後までちゃんと読んでね!」という文字が加わった(下の画像の赤枠で囲まれた部分)。 文末には、「元記事のリンクに真実あり」や「毎年エイプリールフールに騙される」といったハッシ

「腎臓学会が発表した紅麹健康被害の病名は新型コロナワクチンの副反応そのもの」は誤り

小林製薬の紅麹問題で、日本腎臓学会が発表した健康被害の主な症状が新型コロナワクチンの副反応と同一だと主張する言説が読売新聞の記事であるかのように拡散しましたが、誤りです。読売新聞のロゴを使い、実際の報道内容とは異なります。また、日本腎臓学会も否定しています。

「腎臓学会が発表した紅麹健康被害の病名は新型コロナワクチンの副反応そのもの」は誤り 添付された読売記事は無関係で学会も否定【ファクトチェック】
小林製薬の紅麹問題で、日本腎臓学会が発表した健康被害の主な症状が新型コロナワクチンの副反応と同一だと主張する言説が読売新聞の記事であるかのように拡散しましたが、誤りです。読売新聞のロゴを使い、実際の報道内容とは異なります。また、日本腎臓学会も否定しています。 検証対象 小林製薬の紅麹を含む健康食品を摂取した後に腎臓の病気などを発症した問題で、2024年4月2日、「腎臓学会は確実に主因は、コロナワクチンだと気づいているね」という投稿がX(旧Twitter)で拡散した。投稿には読売新聞のロゴと記事へのリンクとともに「腎臓学会が発表した紅麹健康被害の病名は、新型コロナワクチンの副反応そのものだった」という文言がある。 この投稿は2024年4月12日時点で26万件以上表示され、6000件以上のリポストを獲得している。 検証過程 添付された読売新聞のリンクは、2024年4月1日に日本腎臓学会が公表した「『紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する研究』アンケート調査(中間報告)」についての記事だ。 「紅麹健康被害、病名は尿細管の『間質性腎炎』『壊死』など…新た

「岸田首相は渡米していない」「到着の様子は横田基地」は誤り

岸田首相の訪米、バイデン大統領との首脳会談をめぐって、岸田首相はアメリカに行っていない、首相の乗った政府専用機が着陸したのはワシントンではなく、横田基地だなどの言説が画像とともに拡散しましたが、誤りです。日米両政府も各国のメディアも、岸田首相の訪米と首脳会談を伝えています。

「岸田首相は渡米していない」「到着の様子は横田基地」は誤り 言説に根拠はなく米国での動静は複数ソースで確認できる【ファクトチェック】
岸田首相の訪米、バイデン大統領との首脳会談をめぐって、岸田首相はアメリカに行っていない、首相の乗った政府専用機が着陸したのはワシントンではなく、横田基地だなどの言説が画像とともに拡散しましたが、誤りです。日米両政府も各国のメディアも、岸田首相の訪米と首脳会談を伝えています。 検証対象 2024年4月9日、岸田首相がアメリカを訪問し、バイデン大統領と会談した。この訪米をめぐって、「岸田首相が到着した場所はワシントンではなく、横田基地でした」「コレ日本で撮影してるんじゃない」などの言説が拡散した。 これらの中には490万の閲覧回数を獲得し、1400のリポストがついた投稿もある。 検証過程 日米両政府とも岸田首相の訪米や首脳会談を画像や動画で伝えている。また、世界各国のメディアもニュースで報道している。 日本政府は首相官邸のウェブサイトで、「総理の一日」として4月9日のアンドルーズ空軍基地での到着とバイデン大統領夫妻による歓迎の様子、アーリントン墓地への訪問などの様子を写真で見ることができる。 バイデン大統領の公式のXアカウントは、首脳会談やレセプション

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なりすまし広告 前澤友作さんと堀江貴文さん 対応策必要と訴え | NHK
【NHK】SNSで有名人になりすまして投資を呼びかける偽の広告に画像や名前が使われているとして、実業家の前澤友作さんと堀江貴文さん…

旧ジャニーズ新会社 偽のSNSアカウント複数出現で注意呼びかけ

旧ジャニーズ事務所の新会社「STARTO ENTERTAINMENT」のイベントをめぐって偽のライブ配信サイトに誘導する偽アカウントが現れて、会社側が注意を呼びかけたとNHKが報じました。

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みんなでファクトチェックをする理由 ~SNSの偽情報から身を守るには

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2024/04/05 「Nらじ」

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NHK党・本間氏「史上最低の得票数で国会議員になった社民・大椿氏」? 票数に誤り、最低でもない【#参院選ファクトチェック】

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2025年参院選でNHK党から立候補している本間奈々氏が「10390票という史上最低の得票数で国会議員になった大椿ゆうこさん」とXに投稿しましたが、誤りです。社民党の大椿裕子氏が2019年に当選した際の得票数は15445票で、史上最低ではありません。 検証対象 6月17日、参院選に立候補しているNHK党の本間奈々候補が「10390票という、史上最低の得票数で国会議員になった大椿ゆうこさん」と投稿した。 7月14日現在、この投稿は360件以上リポストされ、表示回数は8万回を超える。投稿について「負の価値を生み続けているのが社民党」「次の選挙で、社民党は消滅します」というコメントの一方で「事実と違う」という指摘もある。 検証過程 大椿氏は参議院議員で社民党副党首だ。2019年参院選(全国比例)、2021年衆院選(大阪9区)、2022年参院選(全国比例)に立候補し、落選していた(参議院”議員情報 大椿裕子”)。 しかし、2023年4月に立憲民主党・吉田忠智氏が参院議員を辞職したのに伴う欠員補充で、2019年参院選の社民党比例名簿に基づき、繰り上げ当選を果た

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参院選で外国人の受け入れが争点の一つとなる中で「生活保護世帯数の33%が外国人」という言説が拡散しましたが、誤りです。実際は約2.8%です。拡散した数字は、ある月の生活保護世帯数と、12か月合算の外国人生活保護世帯で計算しています。 検証対象 2025年3月ごろから「生活保護を受けている世帯は約165万世帯、その内外国人世帯は約56万 三分の一が外国人世帯」というような投稿がXに多数投稿されている(例1、2、3)。 検証過程 「外国人生活保護世帯56万世帯」は12か月分の合算 投稿の一部は、公益財団法人ニッポンドットコムが運営するwebサイト「nippon.com」が配信したYahooニュースを根拠としている。「nippon.com」のロゴとともに「生活保護を受ける外国人世帯(世帯主が日本国籍を持っていない世帯)の数は、22年で56万8197世帯」と書かれたスクリーンショットを貼り付けたものもある。 この「22年で56万8197世帯」という数字に関して、nippon.comは7月9日、以下のようなおわびを掲載し、オリジナルの記事を削除している。

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参院選で外国人受け入れが争点の一つとなる中で「外国人は不起訴だらけ」という投稿が拡散していますが、誤りです。法務省の統計を見ると、外国人の起訴率は日本人よりも高くなっています。 検証対象 参院選で外国人受け入れが争点の一つとなる中で「外国人は不起訴だらけ」「外国人犯罪の不起訴率が上がっている」「外国人犯罪の不起訴が多い」などの投稿がX、TikTok、YouTubeなど複数のプラットフォームで大量に拡散している(例1,2,3)。 検証過程 刑法犯の起訴率は外国人の方が高い 法務省が公開している犯罪白書の最新データを見ると、2023年の起訴率は殺人や強盗や傷害などの刑法犯全体で36.9%、外国人の刑法犯起訴率は41.1%と外国人の方が高い。 また、過去10年を遡っても全体が30%台なのに対し、外国人は40%台で、いずれの年も外国人の方が起訴率は高い(いずれも法務省”令和6年度 犯罪白書”)。 全体の起訴率については、犯罪白書P43の2-2-4-2図「起訴・不起訴人員等の推移」、外国人の起訴率については、4-9-3-2図「来日外国人被疑事件 検察庁終局

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ベッセント米財務長官の来日目的は不正選挙の監視? 万博を訪問、関税交渉が焦点【#参院選ファクトチェック】

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参院選に関連し、「米国財務長官ベッセント氏が7月19日に来日するのは選挙不正を監視するため」という情報が拡散しましたが、誤りです。来日目的は大阪万博の訪問で、関税に関する閣僚級協議が開かれるかも注目されています。また、一般的に国際的な選挙監視は当事国と協議して実施するものですが、そのような事実もありません。 検証対象 7月12日、「不正監視」「トランプ大統領、7/19に大阪へ財務長官率いる代表団派遣を発表!※参院選投票日前日w」などと記した投稿が拡散した。 この投稿は7月14日現在、1.2万回以上リポストされ、表示回数は876万回を超える。投稿には「トランプさんまじでありがとう」「きっちり選挙に合わせて送り込んできましたね」などのコメントや、「これ本当?」「万博に来るだけじゃないの?」という指摘もある。 検証過程 ベッセント氏の来日は事実 検証対象のリンクは、まとめサイト「もえるあじあ」の記事で、米国ホワイトハウスの7月9日の発表を引用している(The White House”President Trump Announces Presidenti

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は7月22日(火)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfckoushiyousei0722.peatix.com/ 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

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JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

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