ロシアの乱射事件をめぐる情報戦/民主主義サミットで偽情報めぐる国際的な連携を強調

ロシアの乱射事件をめぐる情報戦/民主主義サミットで偽情報めぐる国際的な連携を強調
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日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら

2024年3月18-24日のファクトチェック週報です。140人を超える死者を出したモスクワの乱射事件をめぐり、大量の偽・誤情報が拡散するとともに、ロシア政府関係者が相次いでウクライナの関係を指摘し、ウクライナはこれを即時に否定するなど情報戦の舞台ともなっています。

JFCのファクトチェック記事

「岸田首相、被災者に『そもそも保険共済に入ってない国民が悪い』」は誤り

「岸田首相、被災者に『そもそも保険共済に入ってない国民が悪い』」との投稿が拡散しましたが、誤りです。保険・共済に加入することの重要性を述べた発言を歪曲して投稿しています。

「岸田首相、被災者に『そもそも保険共済に入ってない国民が悪い』」は誤り 「保険・共済への加入も重要」との発言を歪曲【ファクトチェック】
「岸田首相、被災者に『そもそも保険共済に入ってない国民が悪い』」との投稿が拡散しましたが、誤りです。保険・共済に加入することの重要性を述べた発言を歪曲して投稿しています。 検証対象 2024年3月6日、「岸田首相、被災者に対し『そもそも保険共済に入ってない国民が悪い』近藤和也議員『総理、被災された方に保険だとか、共済だとか、酷な言葉ですよ、正直言って。今更どうしようも出来ないですから...』」との投稿が拡散した。 この投稿は2024年3月19日時点で1100回リポストされ、表示回数は720万回に達している。返信欄には「呆れる。の一言「ちゃんと保険に入ってたら次の日から普通の生活出来るんか?」との声の一方、「岸田さんがこの台詞を言ったのは本当なのだろうか?リンクがたどれない」「この記事信用してないから他のもあったらURL貼ってくれ」との指摘もある。 検証過程 この投稿にはNewsSharingのまとめ記事のURLが貼られている。まとめ記事を確認すると、引用したX(旧Twitter)の投稿から、2024年1月24日の衆議院予算委員会(1:19〜1:21)で

「『会社負担分』の厚生年金は個人も会社ももらえない」は誤り

「『会社負担分』の厚生年金は個人も会社ももらえない まさに消えた年金」という言説が拡散しましたが、誤りです。現役世代と会社(事業主)が負担した保険料は、受給資格のある高齢者に年金として支払われます。

「『会社負担分』の厚生年金は個人も会社ももらえない」は誤り 会社が納付した保険料も年金として給付【ファクトチェック】
「『会社負担分』の厚生年金は個人も会社ももらえない まさに消えた年金」という言説が拡散しましたが、誤りです。現役世代と会社(事業主)が負担した保険料は、受給資格のある高齢者に年金として支払われます。 検証対象 2024年3月14日、「みなさんの賃金から勝手に没収されている『会社負担分』の厚生年金は個人も会社ももらえません。まさに消えた年金」との投稿が拡散した。「賃金総額」や「社会保険料」などと書いた表の一部の画像も添付されている。 この投稿は2024年3月18日時点で1900回リポストされ、表示回数は130万回に達している。返信欄には、「えっ詐欺?」「サラリーマンはもっと怒った方がいい」との声の一方、「そもそも、被保険者と事業主の人格は別です。事業主負担はあなたの賃金ではない」「年金は貯金じゃないし、払った分が返ってくるって制度でもないから論点がおかしい」との指摘もある。 検証過程 拡散した投稿には、年金に関するQ&Aのスクリーンショットが添付されている。この画像の文字のうち「ねんきん定期便 事業主負担分」をGoogle検索にかけると、画像と同じページ

「500名の朝鮮人がNHKに入り込んでいる」は誤り

「500名の朝鮮人がNHKに入り込んでいるのです」という言説が拡散しましたが、誤りです。NHKによると、職員約1万人のうち外国籍の職員は37人(0.3%)です。

「500名の朝鮮人がNHKに入り込んでいる」は誤り NHKの外国籍の職員は37人【ファクトチェック】
「500名の朝鮮人がNHKに入り込んでいるのです」という言説が拡散しましたが、誤りです。NHKによると、職員約1万人のうち外国籍の職員は37人(0.3%)です。 検証対象 2024年3月14日、X(旧Twitter)で、「500名の朝鮮人がNHKに入り込んでいるのです。外国にはない例です」などの言説が拡散した。この言説は3月20日現在で、15万件を超す閲覧回数と2400のリポストがあった。リポストでは、「NHKだけではない、全部だ」「なんの為に、受信料払ってるのか?!事実を公にしないと駄目ですね」などのコメントがついている。一方で「正しい情報を発信されたし」「とんでもないデマを書くので気をつけてください」など拡散した投稿を否定するようなコメントもついている。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)がNHKに取材したところ、「NHKの職員はおよそ1万人(2022年度で10343人)で、そのうち外国籍の職員は2024年3月現在で37人、職員全体の0.3%程度」との回答だった。 NHKによると、NHKの入社試験は国籍が不問だ。「人物本位の採用をして

その他の関連記事

Center for Countering Disinformation pushes back against Russian allegations of involvement in mass shooting

モスクワ郊外のコンサートホールで発生した無差別乱射事件をめぐり、誤・偽情報が拡散しています。それだけではなく、ロシアがウクライナが背後にいると主張し、ウクライナはそれを否定するなど情報戦も繰り広げられています。

Center for Countering Disinformation pushes back against Russian allegations of involvement in mass shooting
Ukraine’s Center for Countering Disinformation (CCD) denies any Ukrainian involvement in the mass shooting in Moscow on March 22 that claimed the lives of at least 115 people, CCD head Andriy Kovalenko said on Telegram on March 22.

偽情報が「選挙を脅かす」 韓国が民主主義サミット主催、連帯訴える

「権威主義からの防衛」などを掲げ、アメリカが主導した「民主主義サミット」の第3回首脳会合が韓国政府主催で開催されました。AIによる偽情報の拡散が自由で公正な選挙への脅威であるなどと指摘し、議長声明では「特に国境を超えて他国の選挙に影響を及ぼそうとする勢力に対し、国際社会が厳正に対応する必要性」を強調しています。朝日新聞が報じています。

偽情報が「選挙を脅かす」 韓国が民主主義サミット主催、連帯訴える:朝日新聞デジタル
韓国政府が主催する第3回「民主主義サミット」の首脳会合が20日夜、オンライン形式で開催された。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領や各国の首脳らは、AI(人工知能)などによる偽情報の拡散が、自由で公正な選…

チャールズ国王死去の偽情報はロシアのメディアが広めた

2024年3月18日、イギリスのチャールズ国王が死去したという偽情報が拡散しました。英ガーディアンはロシアのメディアが広めたと報じています。

False King Charles death story spread by Russian media outlets
One site reported monarch’s purported demise only to later concede: ‘Most likely, the information is fake’

半旗の英国旗の写真が複数投稿され、キャサリン妃の健康状態と結びつける噂が拡散

半旗で掲げられた英国旗の写真がSNSに複数登場、キャサリン妃の健康状態に関する噂が拡散しました。AFPのファクトチェック記事です。

Old photos of British flag at half-mast ignite royal rumours
Old photos of the Union flag lowered to half-mast flooded social media on March 18, fuelling rumours about the health of Britain’s Catherine, Princess of Wales. While the three photos are real, they in fact show the UK flag lowered at Buckingham Palace and the British Consulate General in Istanbul following the death of Queen Elizabeth II in 2022 and at Westminster following the deadly London Bridge attack in 2017. Live footage streamed on social media on March 18 showed the Union flag flying at full mast at Buckingham Palace.

韓国大統領の偽動画拡散、SNS各社に削除や閲覧の遮断求める

4月に総選挙を控えた韓国で,ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が自らを批判する内容の偽動画がTikTokなどのSNS上で拡散し、放送・通信コンテンツの規制を担う放送通信審議委員会(KCSC)が動画の削除や閲覧の遮断を求める措置を決めたと、NHK放送文化研究所が伝えています。

【メディアの動き】韓国大統領の偽動画拡散,SNS各社に削除や閲覧の遮断求める
4月に総選挙を控えた韓国で,ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が「無能で腐敗した…


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参院選開始、各社が続々とファクトチェック/検証5本・関連15本など【今週のファクトチェック】

参院選開始、各社が続々とファクトチェック/検証5本・関連15本など【今週のファクトチェック】

参院選が始まりました。昨年の兵庫県知事選を受けて、多くの新聞やテレビなどの報道機関がファクトチェックの取り組みを始め、次々と記事が出ています。対象には、ネットに拡散している真偽不明の言説もあれば、候補者や政党の発信もあります。多くの研究によって、人は誤った情報を目にしてもそれが間違っていると気が付かないということがわかっています。誤った情報に基づいて投票したり、棄権したりすることは民主主義を歪めます。日本ファクトチェックセンターでも、積極的に検証・解説記事を出していきます。(古田大輔) ※冒頭にミニコラムをつけるようにしました。ご意見・ご感想などはこちら。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 JFCからのお知らせ JFCファクトチェック講師養成講座はこちら 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催していま

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
大地震の前にトカラ地方で群発地震が発生する「トカラの法則」? 科学的根拠なし【ファクトチェック】

大地震の前にトカラ地方で群発地震が発生する「トカラの法則」? 科学的根拠なし【ファクトチェック】

鹿児島県・トカラ列島付近で群発している地震は大地震の予兆の「トカラの法則」だという情報がYouTubeなどで拡散していますが、誤りです。群発地震が大地震の予兆だという科学的根拠はありません。 検証対象 2025年6月∼7月、トカラ列島付近で地震が群発していることに関連して「トカラ列島の地震には『トカラの法則』というものがある」「トカラ列島で群発地震があった後、日本で巨大地震が起きる」という情報が複数のプラットフォームで大量に拡散している(例1,2,3,4)。 投稿について「とても勉強になります」「参考になりますね」などのコメントの一方で「恐怖を煽るのは、止めなさい」などの指摘もある。 検証過程 トカラ列島での群発地震 鹿児島県のトカラ列島では、2025年6月21日から7月1日までに700回を超える震度1以上の地震が群発的に続いている。(朝日新聞"トカラ列島の地震700回超す 悪石島では崖から砂煙も、男性が撮影”)。 この群発地震にあわせて、ネット上では大地震の予兆であるかのような情報が拡散した。 動画の内容と「トカラの法則」 トカラ列島で群

By 木山竣策
小泉進次郎氏が選挙期間ではないのにシートベルトなしで箱乗り?  動画は2024年の選挙期間のもの【ファクトチェック】

小泉進次郎氏が選挙期間ではないのにシートベルトなしで箱乗り? 動画は2024年の選挙期間のもの【ファクトチェック】

自民党の小泉進次郎氏が選挙期間中ではないのにシートベルトをせずに車に乗っていたという動画が拡散しましたが、誤りです。動画は2024年の衆議院議員選挙中に撮影されたもので、選挙期間中、候補者はシートベルトを着用する義務が免除されるので違法にはなりません。ただし、車から体を乗り出す行為については危険視する自治体もあります。 検証対象 2025年7月1日、「小泉進次郎氏が選挙期間でもないのにシートベルトなしで箱乗りしている」と主張する動画つき投稿が拡散した。 動画には、小泉氏が車の後部座席の窓から上半身を出し、手を降る姿が映っている。 2025年7月1日現在、この投稿は1100件以上リポストされ、表示回数は120万回を超える。投稿について「ルール守れや」「牢屋行き」というコメントの一方で「まずいつの動画なのかを調べよう」という指摘もある。 検証過程 動画は2024年の選挙中に撮影 拡散した動画をGoogleレンズで検索すると、2024年10月19日にXに投稿された同じ動画が見つかる。2024年には衆議院議員選挙があり、10月15日に公示、27日が投開票

By 木山竣策
日本政府が75歳以上の中国人観光客に対するビザ申請要件を撤廃? 緩和の発表はあったが撤廃していない【ファクトチェック】

日本政府が75歳以上の中国人観光客に対するビザ申請要件を撤廃? 緩和の発表はあったが撤廃していない【ファクトチェック】

2025年6月30日、「日本政府が中国人観光客に対する75歳以上のビザ申請要件を撤廃した」という投稿がXで拡散しましたが、誤りです。2024年12月、岩屋毅外務大臣が、中国人の観光ビザに関する発給要件を緩和すると発表したのは事実ですが、撤廃ではありません。また、2025年7月1日現在、緩和は始まっていません。 検証対象 2025年6月30日、「日本政府が中国人観光客に対する75歳以上のビザ申請要件を撤廃した」「従来は、75歳を超えると同行者の同伴や追加の健康診断書が必要でしたが、それらがすべて撤廃されました」という情報がXで拡散した。 2025年7月1日現在、リポストは1.9万回、表示回数は874万件を超える。投稿には「迷惑でしかない」「どういう大義でその判断がなされてるのか全く理解できない」などのコメントや、「外務省が6月26日に公開している件でしょうか。『75歳以上』はどこに記載があるのでしょうか」という指摘も寄せられている。 検証過程 中国人の訪日にはビザが必要 外国籍の人が日本を訪れる場合、日本のビザを取得する必要がある。中国はビザ免除国で

By 根津 綾子(Ayako Nezu)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は7月22日(火)午後2時~3時15分で、お申し込みはこちら。 https://jfckoushiyousei0722.peatix.com/ 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)