台湾は中国の情報操作にどう向き合うか/政府主導の取り組みへの懸念 【注目のファクトチェック】

台湾は中国の情報操作にどう向き合うか/政府主導の取り組みへの懸念 【注目のファクトチェック】
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2024年2月12-18日のファクトチェック週報です。LGBTQも誤った情報が流れやすい話題の一つです。世界的な注目を集めた台湾総統選について、台湾政府の偽情報対策の担当大臣インタビューもぜひ読んでみてください。中国から流れてくる情報への対応について、日本への示唆に富みます。

JFCのファクトチェック記事

「(動画)岸田首相が、日本人は10%で残りの90%は移民や不法難民で構わないみたいな発言」は誤り

岸田文雄首相が「日本人の割合は10%で残りは移民や不法難民で構わない」と発言したかのような動画が拡散しましたが、誤りです。動画は、岸田首相の発言の一部を切り取ったもので、「国内の外国人が9割で構わない」という発言はしていません。

「(動画)岸田首相が、日本人は10%で残りの90%は移民や不法難民で構わないみたいな発言」は誤り 岸田首相の発言の一部を切り取っている 【ファクトチェック】
岸田文雄首相が「日本人の割合は10%で残りは移民や不法難民で構わない」と発言したかのような動画が拡散しましたが、誤りです。動画は、岸田首相の発言の一部を切り取ったもので、「国内の外国人が9割で構わない」という発言はしていません。 検証対象 2024年2月10日、「日本国に暮らす日本人の割合は10%で残りの90%は移民や不法難民で構わないみたいな発言の岸田文雄総理大臣…」という説明付きで岸田首相が発言する動画が拡散した。2月12日現在で240万を超える閲覧件数があり、5800のリポスト、1万7000のいいねがついている。 この投稿には「ヨーロッパの惨状を良く見てよ!」「人口が100万人に減ったら言えばいい」など岸田首相がしたとする発言に反発する書き込みのほか「元の動画で確認したが、キリトリです」と指摘する書き込みもあった。 検証過程 2024年2月に拡散した投稿の動画は、2023年7月22日に令和国民会議(令和臨調)が開いた1周年大会での岸田首相の発言だ。令和臨調は「日本社会と民主主義の持続可能性について」をキーワードに経済界、労働界、学識経験者など有志

「ヒラリー・クリントン、児童性売買捜査の『要注意人物』に指定」は誤り

ヒラリー・クリントン元米国務長官が「児童性売買捜査の『要注意人物』に指定される」というポストが拡散しましたが、誤りです。アメリカで性的目的の人身売買容疑で起訴され、自殺したジェフリー・エプスタイン氏関連の文書が公開されたことが拡散のきっかけとなっています。

「ヒラリー・クリントン、児童性売買捜査の『要注意人物』に指定」は誤り エプスタイン文書で再燃 【ファクトチェック】
ヒラリー・クリントン元米国務長官が「児童性売買捜査の『要注意人物』に指定される」というポストが拡散しましたが、誤りです。アメリカで性的目的の人身売買容疑で起訴され、自殺したジェフリー・エプスタイン氏関連の文書が公開されたことが拡散のきっかけとなっています。 検証対象 2024年1月28日、クリントン元国務長官が「児童性売買捜査の『要注意人物』に指定される」というポストが拡散した。このポストは2024年2月13日現在、33万回以上の表示回数と2200件以上のリポストを獲得している。 クリントン元国務長官が児童性売買に絡んでいるという言説は、過去にも拡散し、ファクトチェック団体のPolitiFactやUSA Todayが検証して「誤り」と判定している。 検証過程 まとめサイトの引用元は 今回拡散したのは、まとめサイト「トータルニュースワールド」のポストだ。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、これまでもトータニュースワールドの記事を検証し、誤りと判定している(検証1、検証2)。 トータルニュースワールドは今回、「illuminatibot」という

「男ですと言ったら男になれる。女ですと言ったら女になれる」は誤り

岡山家裁津山支部が性別適合手術を望まない申立人の性別変更を認めたことについて、「男ですと言ったら男になれる。女ですと言ったら女になれる」との言説が拡散しましたが、誤りです。性別変更には複数の条件が必要で、性自認のみで性別の変更はできません。

「男ですと言ったら男になれる。女ですと言ったら女になれる」は誤り 性自認のみで性別変更はできない【ファクトチェック】
岡山家裁津山支部が性別適合手術を望まない申立人の性別変更を認めたことについて、「男ですと言ったら男になれる。女ですと言ったら女になれる」との言説が拡散しましたが、誤りです。性別変更には複数の条件が必要で、性自認のみで性別の変更はできません。 検証対象 2024年2月7日、「男ですと言ったら男になれる。女ですと言ったら女になれる」という投稿が拡散した。 この投稿は2024年2月15日時点で3300回リポストされ、表示回数は140万回を超える。 返信欄には「言ったもん勝ち」「これで困るのは、女性」との声の一方で、「手術受ける時って、受けたいから受けれるでもなく、専門医師の審査何度もあって、心折れるぐらいの難関審査くぐってやっと受けれるのです。それと同等審査を経ての申立てであれば、おいそれクリアできません」などの指摘もある。 検証過程 言説の背景 この投稿は、KSB瀬戸内海放送の2024年2月7日の記事を引用し、「男ですと言ったら男になれる。女ですと言ったら女になれる」と、性自認のみで性別変更が認められていると主張している。引用元の記事は、トランスジェ

「1~2年後には今の諭吉の銀行券を使えなくさせる」は誤り

2024年7月3日に出る新しい紙幣について、「1〜2年後には今の諭吉の銀行券を使えなくさせる」という言説が拡散しましたが誤りです。今までの紙幣も引き続き使うことができます。

「1~2年後には今の諭吉の銀行券を使えなくさせる」は誤り 現行の紙幣は使用できる【ファクトチェック】
2024年7月3日に出る新しい紙幣について、「1〜2年後には今の諭吉の銀行券を使えなくさせる」という言説が拡散しましたが誤りです。今までの紙幣も引き続き使うことができます。 検証対象 2024年2月13日、「今年の7月に、新しい日本銀行券が発行されるのをご存じですか? この目的は、国民の保有する現金や資産、タンス預金のあぶり出しのため」「1〜2年後には、今の諭吉の銀行券を使えなくさせる」という言説がX(旧twitter)で拡散した。 2024年2月15日現在、2700回以上リポストされ、表示回数は211万回を超える。投稿について「そうなんだ」というコメントの一方で「法律上はまだ1円札も使えます」と指摘する声もある。 検証過程 日本銀行券(紙幣)の3券種(一万円、五千円、千円)は、2024年7月3日に新しい紙幣が登場する(新しい日本銀行券特設サイト)。 2023年6月、財務省は新しい日本銀行券の発行時期について発表した。現在の紙幣については「現行の日本銀行券は、新しい日本銀行券が発行されたあとも、引き続き通用します」と書いている。 また「『現行の日本

「(動画)2月14日の京都の地震だとして拡散した動画」は誤り

2024年2月14日、京都で最大震度4を観測する地震が起きました。その様子を撮影したものだとする石灯籠が倒れる映像などが拡散しましたが、誤りです。使われた映像は1月1日の能登半島地震のものです。

「(動画)2月14日の京都の地震だとして拡散した動画」は誤り 能登半島地震の映像【ファクトチェック】
2024年2月14日、京都で最大震度4を観測する地震が起きました。その様子を撮影したものだとする石灯籠が倒れる映像などが拡散しましたが、誤りです。使われた映像は1月1日の能登半島地震のものです。 検証対象 2024年2月14日午後3時29分ころ、京都市伏見区で最大震度4を観測する地震があった。 その直後から「京都地震 ちょっと揺れましたね」というテキストや「#地震びっくり、#京都地震」などのハッシュタグのついたX(旧ツイッター)の投稿が拡散した。投稿には、住宅とその前に停まった車が大きく揺れる様子や石灯籠が倒壊する映像と、地図に各地の震度を示した画像がついている。投稿の閲覧数は多いもので50万近くある(例1、例2、例3)。 検証過程 拡散した投稿は、左に地震の動画、右に地震発生を示す地図の画像を付けている。 動画は二つの映像が編集で組み合わされている。最初のカットは、車が左右に大きく振られ、住宅も幾度も歪むような様子をとらえている。画像検索で能登半島地震時の映像であることがわかった。京都の地震の前の1月に同じ映像が数多くYouTubeやTikTok、

JFCのその他の記事

中国からの偽情報「選挙に影響」 台湾大臣インタビュー

中国からの情報工作に神経を尖らせる台湾では、ファクトチェック、メディアリテラシー、法的なルール設定など包括的な誤情報/偽情報対策に取り組む。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、政府で偽情報対策を包括的に担当する羅秉成(ロウ・ピンチェン)無任所大臣に話を聞いた。

中国からの偽情報「選挙に影響」 台湾大臣インタビュー
中国からの情報工作に神経を尖らせる台湾では、ファクトチェック、メディアリテラシー、法的なルール設定など包括的な誤情報/偽情報対策に取り組む。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、政府で偽情報対策を包括的に担当する羅秉成(ロウ・ピンチェン)無任所大臣に話を聞いた。 選挙への偽情報の影響「多くは中国から」 ──台湾総統選は世界的な関心を集めました。特に偽情報の拡散と中国からの影響への注目が高かったですが、実際にはどのような影響があったのでしょうか。 「明確な指標を示すのは難しいが、私たちは偽情報が選挙にある程度影響したと分析しています。その多くは中国からです」 ──具体的なデータはありますか。 「様々なデータがありますが、例えば、(民間研究機関の)台湾AIラボがTikTokについて分析したところ、中国に関連して拡散した主なコンテンツの62%が中国に対して好意的で中国による台湾統一を肯定する内容でした。逆に台湾に言及するコンテンツの95%が否定的で、民進党が台湾を破滅させるなどのものでした。次期総統に選ばれた民進党の賴清徳(ライチントー)氏に対しては67%

その他のメディアの関連記事

A global rise in government-led fact-checking initiatives cause concern, worries of misuse

「政府主導のファクトチェックの動きが世界的に増加 悪用される恐れ」。偽情報対策の名の下に、政府が自らファクトチェックを実施する事例が世界的に増えています。公正性・非党派性がファクトチェックの原則の一つですが、そうではない事例が特に権威主義的な国で目立つ、という指摘です。台湾の羅大臣インタビューと合わせて読んでみてください。米ポインター研究所から。

(※英語が苦手という方は、Google翻訳などの機能を使うと良いでしょう。Chromeに拡張機能を入れるとページをワンクリックで丸ごと翻訳してくれます)

A global rise in government-led fact-checking initiatives cause concern, worries of misuse - Poynter
Fact-checkers and academics worry the trend could jeopardize independent initiatives and access to accurate information

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政治家の発言を歪める偽情報/ヴァンス副大統領が日本を批判?/ゼレンスキー大統領の偽画像【今週のファクトチェック】

政治家の発言を歪める偽情報/ヴァンス副大統領が日本を批判?/ゼレンスキー大統領の偽画像【今週のファクトチェック】

国内外の政治家の発言を歪める誤情報を検証しました。石破首相、ゼレンスキー大統領など、対象は様々です。権力者が事実に基づいて発言しているかを検証するのもファクトチェックの重要な役割ですが、権力者の発言を捏造したり、改変したり、ミスリードしたりしている投稿を検証することも重要です。 ✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週のファクトチェック マイナンバーカードでの本人確認が禁止される?まとめサイトによるもの 「マイナンバーカードでの本人確認を禁止」との投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのもので、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。警察庁はマイナンバーカードの画像を送信して本人を確認する方法を2027年4月に廃止する方針です。 マイナンバーカードでの本人確認が禁止される?まとめサイトによるもの【ファクトチェック】「マイナンバーカードでの

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毎年16億円の税金が「救う会」へ流れている? 政府「公金の支出はない」【ファクトチェック】

毎年16億円の税金が「救う会」へ流れている? 政府「公金の支出はない」【ファクトチェック】

毎年16億円の税金が「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」に支出されていると主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。救う会全国協議会や加盟組織が公表する決算報告には公金による収入があったことを示す記述はありません。政府の拉致問題対策本部も公金支出を否定しています。 検証対象 2025年2月26日、「拉致問題は茶番劇です 血税から毎年 16億円 搾取」と主張する投稿が拡散した。 投稿は2000件以上のリポストと170万件以上のインプレッションを獲得している。「毎年16億円って何に消費されてるの?被害者家族で集まって食事会ですかね?」「一種の拉致被害ビジネスになっておるのなら、ソレはソレで解決しないほうが、イイよなあ」などのコメントがつく一方で、「どこからの情報ですか?」「陰謀論」などの指摘もある。 検証過程 「救う会」とは 拡散した投稿で名指しされた「救う会」とは「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」のことだ。 1997年3月、拉致被害者の家族によって「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)」が結成され

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ドイツが「アメリカからの独立」のため核武装を表明? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

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ドイツが「アメリカからの独立」のため核武装を表明したとの主張が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのもので、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。次期首相就任が有力視されているフリードリヒ・メルツCDU党首が米国への軍事的依存からの脱却を目指す考えを示したのは事実ですが、ドイツの核武装を表明したわけではありません。 検証対象 2025年3月3日、「【速報】ドイツが「アメリカからの独立」のため核武装を表明」との投稿が拡散した。 投稿は3月5日時点で3000件以上のリポストと約90万件のインプレッションを獲得している。「同じ敗戦国として、敗戦から学び、培った国家の在り方の違いを感じる」「日本もそうしろ。核保有は憲法改正不要だし」などのコメントが付く一方で、元記事と内容が違うとの指摘もある。 検証過程 まとめサイトと添付記事の内容が不一致 検証対象のリンクは、まとめサイト「Tweeter Breaking News —ツイッ速!」の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「【速報】ドイツが『アメリカから

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河野太郎前デジタル相がメール税を検討? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

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河野太郎前デジタル大臣がメール税を検討しているという情報が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのXアカウントで、見出しは一般ユーザーのX投稿を引用しているだけです。 検証対象 2025年2月26日、「河野太郎氏、『メール税』を検討か…」という情報が拡散した。 2025年3月5日現在、この投稿は3100件以上リポストされ、表示回数は130万回を超える。この投稿に「どこまでも金取りたいの」「議員税も導入しよう」というコメントの一方で、「検討をしたという事実はありません」と指摘するコミュニティノートもついている。 検証過程 検証対象のリンクは、まとめサイト「Share News Japan」の記事だ。タイトルは一般ユーザーのXの投稿で、投稿には河野氏が「メール税」について語る動画が添付されている。 この動画のオリジナルを探すと、2025年1月5日配信のニコニコ生放送「河野太郎のLIVE配信 たろうとかたろう」が見つかった。河野氏がユーザーからの質問に答える形式のライブ配信番組だ。2025年3月5日現在、アーカイブをニコニコ生放送とYouTu

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