反ワクチンのきっかけは/親中キャンペーンの研究【ファクトチェック週報】

反ワクチンのきっかけは/親中キャンペーンの研究【ファクトチェック週報】
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日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら

2024年2月5日-2月11日のファクトチェック週報です。パンデミック条約、気候変動などは、偽情報が拡散しやすい分野として知られ、WHOや国連も注意を呼びかけています。ワクチン反対派になるきっかけに迫る研究やネット上の親中国キャンペーンを追いかけたカナダの研究も紹介しています。

JFCのファクトチェック記事

池上彰氏の番組の「左翼は『在日的』な考えをする人」は誤り

池上彰氏が出演したテレビ朝日の番組で、池上氏が「左翼は『在日的』な考え方をする人」と説明したとする画像が拡散しましたが、誤りです。番組で使われた「左翼は『革新的』な考え方をする人」という画像を加工したものです。

池上彰氏の番組の「左翼は『在日的』な考えをする人」は誤り 加工された画像が拡散【ファクトチェック】
池上彰氏が出演したテレビ朝日の番組で、池上氏が「左翼は『在日的』な考え方をする人」と説明したとする画像が拡散しましたが、誤りです。番組で使われた「左翼は『革新的』な考え方をする人」という画像を加工したものです。 検証対象 2024年2月4日、テレビ朝日の番組内容と見られる画像とともに「暗に右翼が日本人で左翼が在日と言っちゃってるじゃん」というポストが拡散した。画像は右翼を「『昔ながらの日本』を大事にする人」、左翼を「『在日的』な考え方をする人」と説明し、後者は人物が「つり目」になっている。このポストは2024年2月9日現在、30万回以上の表示回数と1300件以上のリポストを獲得している。 検証過程 拡散した画像は、池上彰氏が出演するテレビ朝日の「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」(2010ー2011年放送)のタイトルロゴの入ったイラストだ。日本ファクトチェックセンター(JFC)が拡散した画像について、テレビ朝日に問い合わせたところ、「改変された画像です」という回答を得た。 検証対象に似たイラストの画像は2010年7月14日放送の「そうだったのか!

Facebook上で日本郵便公式を装ったアカウントに注意

日本郵便公式を装った偽のアカウントがFacebook上で拡散しています。友達リクエストやURL等に注意してください。個人情報を入力すると悪用される恐れがあります。

Facebook上で日本郵便公式を装ったアカウントに注意 個人情報が悪用される恐れ
日本郵便公式を装った偽のアカウントがFacebook上で拡散しています。友達リクエストやURL等に注意してください。個人情報を入力すると悪用される恐れがあります。 公式に酷似している偽アカウント 日本郵便の公式アカウント「ぽすくま」を装ったFacebookアカウント(リンクはアーカイブ)がSNSを通じて拡散している。 偽物と公式アカウントを比べると、アカウント名(ぽすくま【日本郵便】)やトップ画像、プロフィール画像は同一に見える。友達一覧には、日本郵便勤務を名乗る人物もいる。しかし、フォロワー数や投稿数の少なさなどの不自然な点が多い。 細部で見分ける:少なすぎるフォロワー数・投稿 公式アカウントとの違いはフォロワー数や投稿数に現れることが多い。公式アカウントのフォロワー数は2024年2月8日時点で1.7万人だが、偽アカウントは72人と少ない。また、偽アカウントのページには個人情報の入力を促すキャンペーンページへのリンクのみが投稿されている。 Facebookでの判別方法 Facebookではアカウントごとのユーザーネームを設定できる。これが偽物と

WHO「パンデミック条約に加入しない国は疫病Xに罹る」は誤り

世界保健機関(WHO)が「パンデミック条約に加入しない国は疫病Xに罹る」と発信したかのような言説が拡散しましたが、誤りです。そのような声明は出していません。

WHO「パンデミック条約に加入しない国は疫病Xに罹る」は誤り そのような発信はない【ファクトチェック】
世界保健機関(WHO)が「パンデミック条約に加入しない国は疫病Xに罹る」と発信したかのような言説が拡散しましたが、誤りです。そのような声明は出していません。 検証対象 2024年2月7日、「WHOは、パンデミック条約に加入しない国は、疫病Xに罹る‼️ 疫病って!加入しないと疫病に罹るんだ」という投稿がX(旧Twitter)で拡散した。投稿にはYahoo!ニュースのリンクが添付されている。 2024年2月8日現在、このポストは458回以上リポストされ、表示回数は4.6万回を超える。投稿について「加入しない国に疫病をばら撒くという予告」というコメントの一方で「そんなことは一言も書いてない」と指摘する声もある。 検証過程 パンデミック条約とは 2019年末に起きた新型コロナウイルスの世界的な感染爆発(パンデミック)をうけて、WHOは疾病の世界的な感染を防ぐことを目的とした国際保健規則(IHR)の見直しを計った。2024年5月の総会に提出、採択する作業が進んでいる。これがいわゆる「パンデミック条約」だ(外務省)。 日本は「国際的な規範を強化することが重要

「(画像)トランプとプーチンが密会」は誤り

アメリカのトランプ前大統領と、ロシアのプーチン大統領が密会してワインを飲んでいるかのような画像が拡散しましたが、加工された画像です。

「(画像)トランプとプーチンが密会」は誤り 加工された画像【ファクトチェック】
アメリカのトランプ前大統領と、ロシアのプーチン大統領が密会してワインを飲んでいるかのような画像が拡散しましたが、加工された画像です。 検証対象 2024年2月4日に投稿されたポストでは「もうすぐわかるよ...裏舞台を知ってる人には、ビッグニュースですよね」という文言とともに、トランプ前大統領とプーチン大統領のツーショットが添付されている。白いワイシャツにノーネクタイ姿で、ワイングラスを持っている。 このポストは2024年2月7日時点で、62万件以上の表示と、4000件以上のいいねを獲得している。 検証過程 写真はどのように広がったか アメリカのトランプ前大統領とロシアのプーチン大統領の首脳会談は複数回行われ、会食もしているが(2018年7月16日フィンランド・ヘルシンキ)、この画像のように二人が隣り合ってワイングラスを傾ける親密な様子の写真はこれまで発表も報道もされていない。 今回の画像はテレグラムに投稿されたものを転載する形でXで拡散した。GoogleのFact Check Explorerの画像検索機能を使うと、2024年1月9日にアメリカの

「新型コロナワクチン接種開始後38万人が超過死亡」は誤り

「ワクチンの接種が始まってから2年半で38万人以上の超過死亡」という言説が拡散していますが、誤りです。国立感染症研究所は、ワクチン接種が始まった2021年5月から2年半の間で、超過死亡は最大で19万1285人というデータを発表しています。また、この数値が「ワクチンによるもの」というわけではありません。

「新型コロナワクチン接種開始後38万人が超過死亡」は誤り 数値に隔たり、死因と結びつける言説にも注意
「ワクチンの接種が始まってから2年半で38万人以上の超過死亡」という言説が拡散していますが、誤りです。国立感染症研究所は、ワクチン接種が始まった2021年5月から2年半の間で、超過死亡は最大で19万1285人というデータを発表しています。また、この数値が「ワクチンによるもの」というわけではありません。 検証対象 日本ファクトチェックセンター(JFC)のLINEのAIチャットに「ワクチンが始まって2年半で36万人の超過死亡は本当か?」と質問がきた。JFCが調べるとX(旧Twitter)では「日本国内の超過死亡が接種前比で38万人以上になる」など30万人以上の超過死亡がいるとの投稿が拡散し、中には150万回以上閲覧されているものがある(例1、例2、例3)。 こうした投稿には、「40万て言ったら金沢や町田の人口ほぼ全てに迫る」や「高齢者を中心に寿命を短くしたいから、かな」などのリポストのほか、「高齢者の人口が増えたのが一番では」などの反応もある。 検証過程 超過死亡数のデータは国立感染研が公開 「超過死亡」とは過去データから例年並みの死者数を予測し(予測

「気候変動は疑似科学で危機は存在しない」は誤り

「気候変動は疑似科学で危機は存在しない」という言説が拡散しました。以前、日本ファクトチェックセンター(JFC)が誤りだと検証した内容と全く同じ記事が、別のサイトから発信されています。

「気候変動は疑似科学で危機は存在しない」は誤り 全く同じ記事が再拡散【ファクトチェック】
「気候変動は疑似科学で危機は存在しない」という言説が拡散しました。以前、日本ファクトチェックセンター(JFC)が誤りだと検証した内容と全く同じ記事が、別のサイトから発信されています。 検証対象 2024年1月30日、ネットメディアJAPAN NEWS NAVIが「ノーベル物理学賞受賞者含む300人の学者が『気候変動の緊急事態など存在しない。科学の危険な腐敗だ』と宣言/『風力、太陽光は完全な失敗で環境を破壊しているだけだ』」という記事を配信した。 記事は2023年7月に海外のネットメディアThe Daily Scepticの英文記事をもとにして作られている。2022年ノーベル物理学賞の共同受賞者ジョン・クラウザー博士が「気候危機など存在しない」と発言している上に、同調する宣言に科学者300人が署名しており、人間による気候変動への影響を信じることは「明白な誤り」だという内容だ。 この記事は見出しも内容も、JFCが2023年8月21日に検証し、誤りと判定したものと同じだ。前回はTotal News Worldというサイトから発信されていた。 検証過程 気

その他のメディアの注目記事

論文:ワクチン反対派となるきっかけは何か 大量のツイートから分析

東京大、早稲田大、筑波大の研究グループがコロナ禍でのワクチンに関する大量のツイートを分析し、新たにワクチン反対派になる人の特徴を明らかにした研究です。コロナ禍前からワクチン反対派だった人々は政治への関心が高くリベラル政党とのつながりが強いのに対し、コロナ禍で反対派になった人々は政治への関心は薄い一方、陰謀論やスピリチュアリティ、自然派食品や代替医療への関心が強く、これらがワクチン反対派になるきっかけとなっていることを示しています。

人はなぜワクチン反対派になるのか ―コロナ禍におけるワクチンツイートの分析―
東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫教授と、同大学未来ビジョン研究センターの榊剛史客員研究員、早稲田大学小林哲郎教授、筑波大学吉田光男准教授らによる研究グループは、コロナ禍におけるワクチンに関する大量のツイートを機械学習を用いて分析し、新たにワクチン反対派になる人の特徴を明らかにした。

時事通信:中国企業、日本など30カ国で偽サイト カナダ研究機関が報告

カナダの研究機関「Citizen Lab」の研究を紹介した記事です。中国企業が日本など30ヵ国でニュースメディアを運営し、中国寄りの偽情報やプレスリリースを流している、と指摘しています。

中国企業、日本など30カ国で偽サイト カナダ研究機関が報告:時事ドットコム
カナダの研究機関は7日、中国企業が日本を含む約30カ国で地元メディアを装った偽ニュースサイトを運営し、中国に好意的な情報を発信しているとの報告書を公表した。これらのサイトはいずれも中国・深センのPR会社が運営に関わっており、2020年春ごろから開設されたという。

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岩手・大船渡の山火事は兵器によるもの? 災害時の陰謀論に注意【ファクトチェック】

岩手・大船渡の山火事は兵器によるもの? 災害時の陰謀論に注意【ファクトチェック】

岩手県大船渡市の山火事をめぐって「兵器によって起こされた」「スマートシティ化のために狙ってやっている」などの主張が拡散していますが、誤りです。アメリカの火災でも同様の情報がありました。災害時にはこうした陰謀論が拡散します。 検証対象 2025年2月27日頃から、岩手県大船渡市の大規模な山林火災をめぐって「火災は兵器によって引き起こされた」「DEW(指向性兵器)で焼き払っている」「大船渡市のスマートシティ化のために土地を確保して住民を追い払うことを狙って起こされた」などの主張が複数拡散している(例1 、例2、例3)。 中には44万を超える閲覧と1700のリポストを獲得しているものもあり、「狙い済まして町を潰すってときに今後もこういうことが起きますね」「不自然な火事が多すぎる」「やはり立候補地でしたか」など投稿内容を真に受けるコメントが多くついている。 これらの情報に関しては、NHKが「根拠のない情報」「偽情報」などと注意喚起する記事を出している。 検証過程 岩手・大船渡の山火事 2月26日頃、岩手県の大船渡市で山火事が発生した。3月1日の朝までに焼

By 宮本聖二
イーロン・マスクが石破政権を批判? 政権への言及はない【ファクトチェック】

イーロン・マスクが石破政権を批判? 政権への言及はない【ファクトチェック】

イーロン・マスク氏が石破政権の少子化対策を批判したという動画が拡散しましたが、不正確です。発言の引用元とされる動画で、マスク氏はAIについて発言しているだけで、日本や出生率については話していません。また、マスク氏は日本の少子化についてはたびたびXで私見を投稿していますが、政権批判とは結びついていません。 検証対象 2025年2月16日、「イーロンマスク、🇯🇵政権の無能っぷりをぶった斬る」という文言とともにマスク氏が石破政権や、日本の政策を批判したという内容の動画が拡散した。 2025年2月27日現在、この投稿は7900件以上リポストされ、表示回数は47万回を超える。投稿について「情け無い」「イーロンさん、助けてください」というコメントがついている。 検証過程 引用元の動画で、マスク氏は日本について触れていない 拡散した動画には以下のような字幕がついている。 「当たり前のことを言うようだが、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」「しかし日本政府を見ているとまるで少子化を推進するような経済政策を行ってきたと

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
石破首相「自民党は公約を守る気が一切ありません」と国会答弁? 文脈を無視した切り取り【ファクトチェック】

石破首相「自民党は公約を守る気が一切ありません」と国会答弁? 文脈を無視した切り取り【ファクトチェック】

石破茂首相が国会で、「自民党は公約を守る気が一切ありません」などと答弁したかのような動画が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。石破首相の発言を切り取り、キャプションには発言していない内容も加えています。 検証対象 2025年2月1日、「石破茂『自民党は公約を守った事ありません、私もやりません』現役の総理大臣が公約を守る気が一切無いと国会答弁で言い切りやがった」というタイトルを付けたショート動画がYouTubeにアップロードされた。 この動画は、長さが59秒で最初から43秒間は国会で石破首相が発言している様子、その後の16秒間は、れいわ新選組の山本太郎代表の国会ではない場で発言する様子で構成されている。動画は2月26日時点で約120万回再生されている。 「政治家として1番言ってはいけないこと」「堂々と、『私総理大臣は、詐欺します』と国民に宣言してしている」などのコメントが付く一方で、フェイクや切り取りを疑う声もある。 検証過程 59秒に編集された動画 拡散した動画は59秒間。「石破茂『自民党は公約を守る気が一切ありません』」「石破茂 内閣総理大

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
最高裁が外国人への生活保護は違法と確定? 判決は「対象となりうる」【ファクトチェック】

最高裁が外国人への生活保護は違法と確定? 判決は「対象となりうる」【ファクトチェック】

「外国人への生活保護は2014年に最高裁で違法判決が出て確定している」といった主張が複数拡散しましたが、誤りです。外国人への生活保護をめぐる2014年7月の最高裁判決は、外国人は生活保護法の対象である「国民」には含まれないものの、自治体の裁量によって保護の対象となりうると示したもので、外国人への生活保護を違法だと確定したわけではありません。この主張は過去に何度も拡散し、誤りだと指摘されています。 検証対象 2025年2月中旬、外国人への生活保護について、「2014年に最高裁で違法判決が出て確定している」などといった主張がXで複数拡散した(投稿1、投稿2、投稿3)。 「最高裁第2小法廷 千葉勝美裁判長〝生活保護法が保護の対象とする「国民」に外国人は含まれない〟初の判断」とテロップの入ったニュース画面のスクリーンショットを添付している投稿もある。 これらの投稿には「ずっとおかしいって思っていました」「まともな感覚の最高裁判事がいてくれた」などのコメントがつく一方で、「旧厚生省の通達や自治体の裁量による行政措置を違法認定していません」などの指摘もある。 検証

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)