都知事選終盤の誤情報/世界のファクトチェック最前線【今週のファクトチェック】

都知事選終盤の誤情報/世界のファクトチェック最前線【今週のファクトチェック】

ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボで開かれた国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の年次総会「グローバル・ファクト11」では「AIの嘘にAIで対抗する」という議論が目立ちました。初日に登壇したノーベル平和賞受賞者のマリア・レッサ氏はプラットフォームをフレネミー(友&敵)と呼び、その役割と責任を追求しました。都知事選終盤でも誤情報が拡散、なりすまし立候補者まで登場しました。

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グローバルファクト参加報告

AIの嘘に対抗できるのはAIだけ 「ネットのクソ化」と戦う世界のファクトチェッカーの秘策は

国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の第11回年次総会「グローバル・ファクト」では、生成AIの進化によって、世界中でますます拡散する偽・誤情報とどう戦うか。様々なAIツールやその活用法の報告に注目が集まりました。

AIの嘘に対抗できるのはAIだけ 「ネットのクソ化」と戦う世界のファクトチェッカーの秘策は
世界のファクトチェックをリードする国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の第11回年次総会「グローバル・ファクト11(GF11)」が6月26-28日、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボで開かれました。生成AIの進化によって、世界中でますます拡散する偽・誤情報とどう戦うか。様々なAIツールやその活用法の報告に注目が集まりました。 「インターネットのクソ化」が進む世界 「インターネットのクソ化は全力で進行中です。今年1月の時点で、ネットの57.1%を低品質なコンテンツが占めます」 2021年にノーベル平和賞を受賞したフィリピンのジャーナリスト、マリア・レッサ氏はメインスピーカーとして初日に登壇し、オンラインプラットフォームが利益を追求する中でコンテンツが劣化していく「クソ化(Enshittification)」に言及した(発言全文はこちら)。ジャーナリストCory Doctorowの言葉であり、低品質コンテンツの大量拡散は生成AIと機械翻訳によって加速している。 「フェイクニュース」や「ファクトチェック」は、2016年のアメリカ大統領選をきっかけに世

ノーベル平和賞受賞者が語る偽情報対策 「プラットフォームはフレネミー(友&敵) 」 マリア・レッサ氏対談全文

総会初日にノーベル平和賞受賞者でフィリピンでファクトチェックに取り組んできたマリア・レッサ氏が登壇しました。AFPのグローバルニュース担当フィル・チェトウィンド氏との対談全文です。(英語原文)。

ノーベル平和賞受賞者が語る偽情報対策 「プラットフォームはフレネミー(友&敵) 」 マリア・レッサ氏対談全文
世界のファクトチェックをリードする国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の年次総会が6月26-28日にボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボで開かれた(記事はこちら)。 総会初日にノーベル平和賞受賞者でフィリピンでファクトチェックに取り組んできたマリア・レッサ氏が登壇した。以下がAFPのグローバルニュース担当フィル・チェトウィンド氏との対談全文だ(英語原文)。 状況は「地獄から煉獄」へ フィル・チェトウィンド氏 最初に聞きたいんですが、いかがお過ごしですか?保釈中ですよね? マリア・レッサ氏 はい。状況は良くなる可能性があります。まず、ここでお伝えしたかったのは、会場の皆さんの仕事は非常に重要だということです。ファクトチェッカーと言うと地味に感じるかもしれませんが、嘘が爆発的に広がる世界において、皆さんは最前線で戦っているのです。将来、私たちが振り返るとき、この瞬間が勝利の始まりか終わりの始まりか、どちらかだと認識するでしょう。 私の話でしたね。私は自分の影を追いかけています。2024年中は一切寝ないと決めました。2024年は世界的な民主主義の転換点だからです。私たち

JFCのファクトチェック記事

小池都知事を批判したカンニング竹山氏が番組から降ろされた?

TBS系の情報バラエティー「アッコにおまかせ!」で、お笑い芸人のカンニング竹山隆範氏が小池百合子都知事の答弁拒否問題や学歴詐称疑惑などを取り上げました。その結果、翌週の放送から降ろされたという言説が拡散しましたが誤りです。竹山氏は月1回程度で出演する準レギュラーで、本人も「降ろされていない」と否定しています。

小池都知事を批判したカンニング竹山氏が番組から降ろされた?【ファクトチェック】
TBS系の情報バラエティー「アッコにおまかせ!」で、お笑い芸人のカンニング竹山隆範氏が小池百合子都知事の答弁拒否問題や学歴詐称疑惑などを取り上げました。その結果、翌週の放送から降ろされたという言説が拡散しましたが誤りです。竹山氏は月1回程度で出演する準レギュラーで、本人も「降ろされていない」と否定しています。 検証対象 2024年6月30日、「カンニング竹山が先週の『アッコにおまかせ』で小池都知事の答弁拒否問題や経歴疑惑等を取り上げていた」「案の定、今週降ろされました…」という動画つき言説が拡散した。 動画では竹山氏が「都政でこの8年間何が行われたか分かっていない」「都知事の答弁拒否という問題があります」「マスコミの取材の仕方、リモートで記者クラブの人だけ当てて、フリーの人とかがいろいろ質問したいけど当てない」「経歴の疑惑とか」などと発言している。 投稿は2024年7月4日時点で1.5万件以上リポストされ、表示回数は1300万件を超える。投稿について「権力者への忖度」「テレビの現実」というコメントが付く一方で「カンニング竹山さんはアッコにおまかせは月1の出


秋田県沿岸部で桁違いの放射線量を観測中?

X(旧Twitter)で「秋田県沿岸部で桁違いの放射線量を観測中」という言説が拡散しましたが、誤りです。秋田県内の観測地点で放射線量に異常は見られません。

秋田県沿岸部で桁違いの放射線量を観測中?【ファクトチェック】
X(旧Twitter)で「秋田県沿岸部で桁違いの放射線量を観測中」という言説が拡散しましたが、誤りです。秋田県内の観測地点で放射線量に異常は見られません。 検証対象 Xの「ツイッター速報」で2024年7月3日夜「秋田県沿岸部で桁違いの放射線量を観測中 通常の数万倍」という言説が拡散した。 7月4日現在480万を超える閲覧と6100のリポストがあり、「隣の国から流れて来たってこと?」「原潜が秋田の近くで壊れたとか?」などのコメントがついている。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は秋田県環境管理課に取材した。秋田県では拡散した言説に関して問い合わせが電話やメールで来たことから、ウェブサイトで「放射線量に異常はない」という告知を出したと回答した。 その告知では「県内各地点において24時間体制で放射線量の数値を測定し、〔原子力規制委員会〕放射線モニタリング情報共有・公表システムに数値データを送信しています。直近1か月間のデータでは、各測定地点ともに投稿にあるような異常値は検知されておりませんので、ご安心ください」と呼びかけている。この1ヶ月間

今週のJFC動画

都知事選挙、小池百合子知事の画像がミーム化

小池百合子都知事の演説会で、「カイロ大学首席卒業」と書いた垂れ幕があったとする画像が拡散しましたが、誤りです。白紙の垂れ幕に、第三者が別な画像を埋め込んだコラ画像です。

ファクトチェックの理論と実践を学ぶ動画講座を開始へ

7月8日からYouTubeでファクトチェック講座の動画配信を始めます。現代の情報環境を知ってリテラシーを獲得する「理論編」10本、ファクトチェックを実践するための10本、計20本を順次公開していきます。これは第0章です。

JFC YouTube講座 - 日本ファクトチェックセンター (JFC)
ファクトチェックやリテラシーを動画で解説するYouTube講座です。

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都知事選、なりすまし立候補者が相次ぐ?

過去最多の56人が立候補した東京都知事選挙で、実際には立候補していない人物が、SNS上で立候補したという投稿が拡散しています。NHKがその背景を取材しました。

都知事選 なりすまし立候補!? 相次ぎ拡散 混乱の背景は | NHK
【NHK】過去最多となる56人が立候補した東京都知事選挙。SNS上には実際には立候補していない人の“なりすまし立候補”の投稿が拡散…

能登半島地震での誤情報、偽情報 総務省通信白書

総務省が2024年の情報通信白書を公表。この中には「能登半島地震​」で拡散した誤情報・偽情報についての現地調査の報告があります。

関係情報:情報通信関連:情報通信白書

パリオリンピックと国民議会選挙を標的にした情報工作

ロシアの偽情報による影響工作がパリオリンピックと仏国民議会選挙を標的にしているとアメリカABCニュースが報じています。

Russian-linked cybercampaigns put bull’s-eye on France’s Olympics and elections
Cybersecurity experts and French officials say Russian disinformation campaigns against France are zeroing in on legislative elections and the Olympic Games which open in Paris at the end of the month

英国総選挙、ボットによるものと思われる偽情報が拡散

7月4日に投票が実施された英国総選挙では、ボットによるものと思われるXアカウントのコンテンツが6万以上ポストされ、それらが1億5000万回も閲覧されたと国際NGO「Global Witness」がレポートしています。

Bot-like tweets seen 150 million times ahead of UK elections | Global Witness
Tweets posted by accounts suspected of being bots have been seen 150 million times, prompting concerns about attacks on democracy and informed debate

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2025年1月から軽自動車の自賠責保険、修理費用が170%値上げ? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

2025年1月から軽自動車の自賠責保険、修理費用が170%値上げ? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

2025年1月から軽自動車の自賠責保険170%、車検費用は120%、修理費用が170%値上げという情報が拡散しましたが、誤りです。情報はまとめサイトの記事を引用したもので、情報のソースはありません。 検証対象 2024年12月16日、自動車保有者の負担の国別比較とする棒グラフと共に、「【悲報】2025年1月から軽自動車の維持費が大幅値上げ」「自賠責保険証170%、車検費用平均120%、修理費用平均170%値上げ、10年落ちの軽自動車は更に自賠責保険料増額」という情報が拡散した。 2024年12月26日現在、この投稿は2万件以上リポストされ、表示回数は300万回を超える。投稿について「軽自動車のメリットがなくなっていく」「車ないと生活できないのに」というコメントの一方で「これで合ってるかな?」という指摘もある。 検証過程 ソースのないまとめサイトを引用 検証対象のリンクはまとめサイト「NewsSharing」の記事だ。2つのX投稿を引用している。 1つは2024年12月15日にXユーザーが投稿した「軽自動車の維持費こんなに値上げすんのか?」という投

By 宮本聖二
トルコ・エルドアン大統領が「クルドを絶滅させる」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

トルコ・エルドアン大統領が「クルドを絶滅させる」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

トルコ・エルドアン大統領が「クルドを絶滅させる」と発言したという情報が拡散しましたが、不正確です。拡散した投稿は、まとめサイトのXアカウントで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。引用元とされるサイトは、円と外貨の為替レートを表示するもので、エルドアン大統領の発言に関する情報ではありません。 検証対象 2024年12月25日、「トルコ、エルドアン大統領『ク◯ドを絶滅させる』」という情報が拡散した。 2024年12月27日現在、この投稿は600件以上リポストされ、表示回数は7万回を超える。投稿について「是非ともお願いします」「流石」というコメントの一方で「んなわけあるか」という指摘もある。 検証過程 まとめサイトと添付記事の内容が不一致 検証対象のリンクは、まとめサイト「TweeterBreakingNews-ツイッ速!」の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「トルコ、エルドアン大統領『クルドを絶滅させる』」で、ソースと書かれているリンクは為替レートのサイトでエルドアン大統領に関する情報は一切ない。 関連

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
自民党・高市早苗議員が日本銀行に提訴された? 投資に誘導する偽広告【ファクトチェック】

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自民党の衆院議員、高市早苗氏が日本銀行に提訴されたという広告が出現していますが、誤りです。投資を促す偽広告で、高市氏以外の著名人の画像が無断利用された事例を日本ファクトチェックセンターで繰り返し検証しています。 検証対象 2024年11月ごろ、「日本銀行が生放送での発言で高市早苗氏を提訴」という広告がFacebookなどに表示された。 広告のリンクにアクセスすると、高市氏と評論家の寺島実郎氏が対談している記事が表示される。高市氏が生放送の発言が原因で提訴されたという内容だ。 検証過程 ソーシャルメディアの広告機能を使った偽記事 Facebookなどのソーシャルメディアの広告機能を使って記事に見せかけた捏造コンテンツを拡散させ、正体不明の投資サイトなどに誘導する手口は蔓延している。 日本ファクトチェックセンターはこれまでにも、多くの事例を検証してきた。「柳井正氏が拘束された?」「日銀、生放送の発言で柳井正を提訴?」 いずれも衝撃的な見出しでクリックを誘っている。今回の事例を見てみる。 読売新聞オンラインのロゴ付きだが内容に不自然さ この記事

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
自民・小野寺政調会長が「国民の手取りが増えてしまう」と発言? 発言の切り取り【ファクトチェック】

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自民党の小野寺五典政調会長が「国民の手取りが増えてしまう」と発言した、という情報が拡散しましたが、不正確でミスリードです。NHKの討論番組で「手取りが増えてしまう」と発言したのは事実ですが「年収の壁」の引き上げ議論の中で、所得ごとに手取りの増え方に差があることを指摘する発言の一部が切り取られたものです。 検証対象 2024年12月22日、自民党の小野寺五典政調会長が「国民の手取りが増えてしまう」と発言したとするポストがXで拡散した。小野寺氏が「年収の壁」問題について発言しているような画像がついているが、内容は画像からは明らかではない。 投稿には「手取りが増える事の何がまずいのか聞きたいねぇ」という文言もあり、小野寺政調会長が国民の手取りが増えることに否定的な発言をしたかのような印象を与える。 2024年12月26日現在、この投稿は15000件以上リポストされ、表示回数は160万回を超える。投稿について、対象の番組の動画を用いて「言ってた🥹」というコメントや、「あはは😂😂何がまずい??教えて小野寺さん🤣🤣」というコメントもある。 検証過程 日

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)