食品の放射能残留基準をゆるく変更? 2012年から逆に厳しくなった【ファクトチェック】
2024年から食品の放射能濃度の残留基準がゆるくなったという情報が拡散しましたが、誤りです。基準の変更は2012年で、拡散した情報とは逆に基準は厳しくなりました。
検証対象
2025年1月8日、「2024年から食品中の放射能濃度(セシウム137) の残留基準は、極めて高濃度に設定されました。特に水は以前の25万倍です」という情報が拡散した。投稿には「事故前(H20年度)の食品放射線量」と「厚生労働省H24年度基準値」を比較した表が添付されている。
2025年1月17日現在、この投稿は1000件以上リポストされ、表示回数は20万回を超える。投稿について「ゴールをずらすってやつ」「こうでもしない限りあちこちで基準値超えがでてくる」というコメントの一方で「注釈ちゃんと読んだ?」と間違いを指摘する声もある。
検証過程
基準値の変更は2012年
拡散した情報には「2024年に変更された」とあるが、添付された画像を確認すると「事故前(H20年)」と比較して「H24年度基準値」とある。西暦では「2012年度」となり、単純な間違いだ。検証対象の投稿をしたアカウントも1月9日に「平成24年」と訂正している。
拡散した表の比較に誤り
拡散した表の出典を見ると「日本分析センター平成20年度事業報告書」とある。その下のURLは「2008年度 日本分析センター年報」のものだ。
拡散した表の「事故前の食品放射線量のデータ」の列にある「上水0.00004Bq/L」などの数字は日本分析センター年報の「表3.2 環境試料中の90Sr、137Cs濃度(平成20年度分析分)」(13ページ)から引用している。これは平成20年度(2008年度)までに実際に上水や米などから検出されたセシウム137の平均値だ。
その右に並ぶ「厚生労働省平成24年度基準値」の「上水10」などの数字は、厚生労働省「新しい基準値の概要」で確認できる。この数字が規制の目安となる「基準値」だ。つまり、基準値の変化を示すものではなく、実際に検出されたセシウム137と基準値を比較するもので、その結果が「25万倍」などと書かれている。
福島第一原発事故で基準変更
2011年3月の福島第一原発事故後、厚労省は「より一層、食品の安全と安心を確保する」ことを目指して食品に含まれる放射性物質に新たな基準値を設定した。(厚生労働省「新しい基準値の概要」)
「放射性物質を含む食品からの被ばく線量の上限を、年間5ミリシーベルトから年間1ミリシーベルトに引き下げる」という内容で、基準は変更前より厳しくなっている。
判定
2024年から食品の放射性物質(セシウム137) の残留基準が高濃度に設定されたという情報が拡散したが、誤り。実際の検出された値と基準値を比較した誤った表に基づいており、食品に含まれる放射線量の基準値は、2011年の福島第一原発事故後、より厳しいものになっている。
検証:木山竣策
編集:藤森かもめ、宮本聖二、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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