USAIDとNHKの繋がりを示す文書が発見された? 資金提供とは無関係な記述【ファクトチェック】

第2次トランプ政権が解体を進めている米国際開発庁(USAID)について「USAIDとNHKの繋がりを示す文書が発見された」との主張が拡散しましたが、誤りです。USAIDの資料に、英語の教育コンテンツを販売する日本の会社・団体の例として、当時NHKの関連団体だったNHKインターナショナル(現・一般財団法人NHK財団国際事業本部)が挙げられるなど付録部分で触れられているだけで、資金提供などの繋がりを示すものではありません。
検証対象
2025年3月7日、独立系メディアを名乗るまとめサイト「NewsSharing」のXアカウント「USAIDとは無関係と言っていたNHKさん、USAIDとの繋がりを示す文書が発見され、NHKがCIAモッキンバード作戦の日本最前線基地だった事が判明してしまう」と投稿した。
3月24日現在、投稿は1.2万件以上のリポストと95万件以上のインプレッションを獲得している。「わざわざNHKニュース内でも懸命に否定していたのに」「日本のメディアが外国の諜報機関の巣窟だったとは」などのコメントが付いている。
検証過程
「文書」は発展途上国の教育改善に関するハンドブック
まとめサイト「NewsSharing」が引用した投稿は、USAIDが1972年に公開したハンドブックを根拠に「USAIDとNHKの繋がり」を主張している。
このハンドブックはアーカイブサービスWayback Machineで閲覧できる。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ハンドブックの内容を確認した。
「Educational technology and the developing countries, a handbook (教育技術と発展途上国、ハンドブック)」と題するこの文書は、教育開発などに携わる非営利団体がUSAIDの委託を受けて作成したもの。発展途上国が直面する教育をめぐる問題を解決する施策の提案がこのハンドブックの目的だ。
教育プロジェクトを支援する組織として付録でNHK関連団体を紹介
ハンドブック巻末の付録(120頁以下)には、教育プロジェクトの実施に役立つ情報提供や教材支援などに取り組む米国内外のさまざまな規模の組織を5つのセクションに分けて紹介している。
紹介される組織の多くが米国内のものであるなかで、日本のNHKの関連団体NHKインターナショナル(現・一般財団法人NHK財団国際事業本部)が141頁に紹介されている。拡散した投稿に付けられた画像の部分だ。この文書でのNHKインターナショナルを紹介する記述は以下の通り(日本語訳はJFC)。
「NHK INTERNATIONAL(NHKサービスセンター、新日本ビル、東京都千代田区内幸町)は、日本放送協会(NHK)の子会社(subsidiary)であり、英語の教師用マニュアルや全文テキストを完備した教育テレビ番組や英語での番組素材(segments in English)を販売しています。日本は、世界で最も広範かつ先進的な教育テレビサービスを提供しています。」
このハンドブックには「NHK」の名前が7箇所にある。いずれも付録部分で、NHK INTERNATIONAL以外は、アジア放送連合(ABU)の所在地として「NHK Bldg.」や参考文献などの出版情報としての紹介の記述であり、いずれも「NHK」とUSAIDの関係性を示すものはない。
USAIDをめぐる偽情報は日本でも拡散
USAIDから日本のメディアに資金が流入しているという偽情報は、大量に拡散している。
JFCはこうした偽情報について解説記事を公開している。また、NHKも「USAIDから資金提供を受けている事実はありません」と自らの記事で説明している(NHK)。
判定
1972年3月にUSAIDが公開したハンドブックの巻末資料にNHKインターナショナル(現・一般財団法人NHK財団国際事業本部)は紹介されているが、英語教材の販売をする団体としての紹介にとどまる。その他の付録の中の参考文献の紹介などの記述で「USAIDとNHKの繋がりを示す文書が発見された」は、誤り。
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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