東工大総合型選抜、女子枠は筆記試験なし?【ファクトチェック】

東工大総合型選抜、女子枠は筆記試験なし?【ファクトチェック】

東京工業大学の総合型選抜入試で、女子枠は筆記試験をしないという言説が拡散しましたが、不正確(ミスリード)です。一般枠と同じ試験内容にもかかわらず、女子枠の説明のみを切り抜いています。

検証対象

2024年6月20日、東工大の総合型選抜で、女子枠は筆記試験をしないという言説が拡散した。この言説は、女子枠の筆記試験のスコアについて説明しているポストを引用。検証対象に添付された画像には、「女子枠」と書かれた表があり、東工大の工学院、物質理工学院、情報理工学院は筆記試験を「実施しない」と書かれている。

このポストは、2024年7月10日時点で、160万回以上の閲覧と、1500回以上のリポストを獲得している。

検証過程

総合型選抜入試とは、書類審査や小論文、面接などによる評価を組み合わせて選抜する方法だ。例えば、東工大の総合型選抜を説明したページでは、「総合型選抜で求める学生像」の一つに「柔軟な発想力と、その発想を他者と共有するための説明力および他者の発想を理解できる能力に秀でた素質が認められる者」とあり、筆記試験だけでは測れない能力を求めると書いてある。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、東工大の総合型選抜について、女子のみが筆記試験をしないのかどうかについて調べた。

東工大は2022年11月10日に、「東京工業大学が総合型・学校推薦型選抜で143人の『女子枠』を導入」というニュースを出した。同大学のサイトには「令和6年度及び令和7年度大学入学者選抜について(予告)」というPDF資料も出ており、4ページ目に検証対象が添付した画像と同一の表が見つかる。

資料によれば、同大は「他の分野と比較して特に女子学生の占める割合の少ない理工系分野において女性活躍推進を目指し」て、女子枠を設定。検証対象の言説が挙げた3つのうち、工学院は女子枠のみ、物質理工学院、情報理工学院は一般枠と女子枠それぞれを募集する。

選抜は第1段階と第2段階に分かれ、言説は第2段階の「女子枠」の記載のみを切り抜いている。実際には一般枠の募集がある物質理工学院、情報理工学院で、いずれも筆記試験を「実施しない」と明示しており、女子枠に限った特例措置ではないことがわかる。

東京工業大学・令和6年度及び7年度大学入学者選抜について(予告)

判定

東工大による総合型選抜入試の「女子枠」のみを取り上げて、筆記試験を「実施しない」とする言説は不正確(ミスリード)。「一般枠」も同じ形式にもかかわらず、女子枠の記載だけを切り抜いている。

検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、藤森かもめ、野上英文

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。検証記事を広げるため、XFacebookYouTubeInstagramでのフォロー・拡散をよろしくお願いします。毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンからどうぞ。

また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

USAIDが日本のメディアを操作?/女性へのAED使用で訴えられる?【今週のファクトチェック】

USAIDが日本のメディアを操作?/女性へのAED使用で訴えられる?【今週のファクトチェック】

「女性にAEDを使うと訴えられる」という情報がたびたび拡散します。ほぼありえないリスクを考慮して、女性の命を危険にさらすことになります。アメリカから広がったUSAIDデマが日本にも。背景も含めて解説しました。 ✉️ 日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週の解説記事 繰り返し拡散する「女性にAED使用で訴えられる」 警察や弁護士の解説による正しい知識で救命を 男性が女性にAEDを使うと「性被害などで訴えられるリスクがあるので、使わない方がよい」と呼びかける情報が、何度も拡散しています。 そのためにAED使用をためらってしまうと、女性の命を脅かす事態を招きかねません。日本ファクトチェックセンター(JFC)は警察や専門家への取材で、AED使用をめぐる現状をまとめました。 繰り返し拡散する「女性にAED使用で訴えられる」 警察や弁護士の解説による正しい知識で救命を男性が女性にAEDを使う

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
兵庫・迎山県議 「私を批判すれば国民にツケが回る」と発言? コメントを歪曲【ファクトチェック】

兵庫・迎山県議 「私を批判すれば国民にツケが回る」と発言? コメントを歪曲【ファクトチェック】

兵庫県の迎山志保県議が「私を批判すれば国民にツケが回る」などと発言したという情報が拡散しましたが、不正確です。公人に向けた批判に対する迎山県議のコメントを歪曲したものです。 検証対象 迎山県議が「私を批判すれば、やがては国民にツケがまわる」などと言ったかのような情報が繰り返し拡散している(例1、例2)。 2024年11月の投稿は「迎山しほ議員、斎藤知事を辞任させておいて 私を批判するな!批判を続ければ政治は劣化する!国民にツケが回るからな!この態度は流石にヤバくないか?」という内容で、斎藤知事を擁護し、迎山議員を批判する内容だ。 この投稿は2025年2月18日にも「迎山しほ議員『私を批判すれば、やがては国民にツケがまわる』国民にこんな事言う県議初めて見ました」という文言と共に再び拡散している。 これらの投稿には迎山県議の「全てが公人ということでさらされるのが当たり前 批判されるのが当たり前」「政治の世界もどんどんと結果的には劣化をしていく」「国民にツケが回っていく」などのコメントが抜き出された画像が添付されている。 検証過程 画像にある「報道特集」

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「USAIDが日本メディアを操作」 デマ拡散の背景にある報道不信

「USAIDが日本メディアを操作」 デマ拡散の背景にある報道不信

「USAIDは世界中のメディアに資金提供」「言論操作している」などの情報が世界中に拡散しました。その多くはすでに検証されていますが「日本メディアも関係している」というリストまで出回りました。何が事実で何が誤りか。デマが拡散する背景も含めて解説します。 きっかけはトランプ政権によるUSAID批判 発端は1月に就任したトランプ大統領がアメリカ政府の対外援助を管轄するUSAID(アメリカ国際開発庁)を通じた対外援助を90日間停止する大統領令に署名したことです。トランプ政権が掲げる「アメリカ・ファースト」に沿った動きでした。 2月に入り、トランプ大統領や政府効率化省トップについたイーロン・マスク氏は、USAIDを批判する発言を繰り返しました。 トランプ氏の発言 「急進的な狂人たちによって運営されている」(CNN, 2月3日) 「USAIDやその他の機関で何十億ドルもの資金が盗まれ、その多くが民主党に有利な報道をするための『報酬』としてフェイクニュースメディアに支払われているようだ」(CBS, 2月13日) マスク氏の発言 「USAIDは犯罪組織だ」(CN

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
兵庫・百条委員会が議事録をすべて破棄? 県議会サイトで公開【ファクトチェック】(追記あり)

兵庫・百条委員会が議事録をすべて破棄? 県議会サイトで公開【ファクトチェック】(追記あり)

兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラの疑いなどで告発された問題で、調査をしている県議会百条委員会が、議事録を公開せずにすべて破棄したという情報が拡散しましたが、誤りです。議事録は県議会のウェブサイトで公開されています。 検証対象 2025年2月18日、兵庫県議会の百条委に関して、「百条委員会の議事録は全部破棄ってホントですか? 全部公開されずに破棄? 兵庫県議員アタマオカシイやろ」という情報が拡散した。 この情報に対して「百条委員会に使った金は委員に全部払ってもらうしかないな」「そもそも百条委員会がデマだったということか」などのコメントがついているほか「兵庫県文書問題会議録で全部見ることできるけど」と疑問を投げかけるものがある。 検証過程 兵庫県議会は2024年6月13日、地方自治法百条に基づいて斎藤知事のパワハラ疑惑などを調べる「文書問題調査特別委員会(通称:百条委員会)」を設置した。 6月14日から始まった委員会は、2025年1月27日まで計15回開かれている。県議会は、12月25日の分を除く、計14回分を 議会検索システムで公開している。「会議録の閲

By 宮本聖二