タモリさんが起訴された?投資を促す偽広告【ファクトチェック】

タモリさんが起訴された?投資を促す偽広告【ファクトチェック】

「タレントのタモリさんが起訴された」というニュースを装った投稿がFacebookで広がっていますが、誤りです。起訴の事実はなく、ネットニュースを装って投資サイトへ誘導する偽広告です。

検証対象

「タモリさんの起訴が確定!」と書かれた投稿がFacebookで広がっている。

クリックすると「大スキャンダル: 日本銀行が生放送での発言でタモリさんを提訴」という記事が出てくる。

記事にはタモリさんの生放送中の発言がスキャンダルとなり、日本銀行が番組中止を求めたといった内容が書かれている。

検証過程

Yahoo!ニュースを装った記事

この記事が掲載されているページの上部には「Yahoo!ニュース」のロゴが入っている。また、テレビ朝日の人気番組「徹子の部屋」で黒柳徹子さんとタモリさんが対談している映像のスクリーンショットが使われている。

Yahoo!ニュースのロゴが入ったリンク先記事のスクリーンショット

不自然な日本語、個人情報の入力に誘導

記事の内容を確認すると、「放送に多くのメッセージを送った」など日本語が不自然だ。「徹子の部屋」を生放送番組と書くなど間違いがあり、二人の話し言葉もぎこちない。

また、唐突に「むしろタモリさん本人より提供されたリンクをチェックしたほうがいいだろう」とリンクへ誘導したり、「たった12~15週間で、Bitcode Primeのプラットフォームで1億にしてあげますよ!」などと投資を促したりしている。記事の最後には「Bitcode Prime」という投資サイトの登録フォームもあり、個人情報の入力と入金を求めている。

記事のURLも本物のYahoo!ニュースとは異なる。これらを総合すると、この記事の内容は完全に捏造されたもので、投資サイトの登録と入金を促すためのページであることがわかる。

Facebook広告を利用して拡散

でたらめな内容の投稿が広がっているのは、Facebook広告の機能を利用しているからだ。投稿には「広告」と印がついている。

これまでにもユニクロの柳井正ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長に関して、同様の手口の偽広告が拡散し、日本ファクトチェックセンター(JFC)で検証している(検証1検証2)。

判定

「タモリさんが起訴された」との記事はYahoo!ニュースを装っているが偽広告で誤り。

あとがき

偽広告を用いた詐欺は、ソーシャルメディア上で大量に拡散しています。JFCでは度々検証していますが、被害は続いています。

JFCではオンライン詐欺の実態や対策についてもメディア情報リテラシー教育の一環として、ファクトチェック講座で解説しています。参考にしてみてください。

フェイクニュースと詐欺 堀江貴文氏や前澤友作氏など「なりすまし」への対策【JFCファクトチェック講座 理論編9】
日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 理論編第8回はニュースの読み方などニュースリテラシーについてでした。第9回は急増しているオンライン詐欺とその対策について説明します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) 急増するオンライン詐欺の実態 SNSやメッセージアプリを利用したオンライン詐欺は、近年増加しています。 著名人の写真や映像を勝手に利用した詐欺広告が多く見られ、警察庁によると2023年の投資詐欺の認知件数は2271件、被害総額は約278億円に上ります。 被害者は主にFacebookやインスタグラムで詐欺に遭い、最終的にはLINEで連絡を取って振り込ませる手口が使われています。 クリティカルシンキングによる自衛 泥棒を取り締まる法律があっても自分で家に鍵をかけるように、オンライン詐欺から身を守るためには、ネット上での自衛策が必要です。 クリティカルシンキングで吟味し、立ち止まって考えましょう。突然、有名人が投資情報をあなたに売り込んでくることに疑問を持つ。そのアカウントのIDが公式のもの

YouTubeでの解説動画はこちら。

検証:リサーチチーム
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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