富山県でササニシキの栽培が禁止? 特定品種の栽培を制限する法令はない 【ファクトチェック】

富山で米のササニシキの栽培が禁止されたという情報が拡散しましたが、誤りです。栽培を禁じるような法令はありません。宮城県で育成され東北を中心に栽培されているササニシキは、北陸の富山県ではこれまでもほとんど栽培されていませんでした。
検証対象
2025年4月6日、医師の内海聡氏が「富山でササニシキが禁止されたという情報が出回っている」という主張をXに投稿、拡散した。4月10日には46万を超える閲覧と2500以上のリポストがあったが、その後この投稿は削除された。
「ササニシキの栽培が禁止された」という情報は、Xだけでなくインスタグラムでも拡散していた。4月16日現在、それらの投稿の多くは削除されている。
「ササニシキないと困ります」「ササニシキ禁止。自由や権利人権無視」といったコメントのほか「元々、富山でササニシキはほとんど栽培されていないし東北でも近年は激減したと聞いてるから禁止する意味が分からない」という指摘もある。
検証過程
ササニシキとは
ササニシキは1963年に宮城県で誕生し、東北を中心に栽培されてきた(宮城県)。あっさりとした味と食感から和食や寿司に合うと人気が出た。「東の横綱ササニシキ、西の横綱コシヒカリ」とまで呼ばれ、1990年にはコシヒカリに次ぐ20万7000haで作付けされた(宮城米マーケティング推進機構、農研機構)。
しかし、気候変動と病気の影響を受けやすく、1993年の冷害と翌年の猛暑で収量不足になったことで作付け面積は減少し、2003年には1万6300haに。現在は宮城県を除くと東北でも栽培面積は数%台にまで減っている(農研機構)。
富山県とササニシキ
ササニシキは現在も宮城県や岩手県では奨励品種だが、富山県ではほとんど栽培されていない(農研機構)。
各県が定める米の奨励品種は、栽培される地域の気候や土壌などに適したものが選ばれ、米農家は種子を安定的に手に入れることができる。このため、農家も奨励品種を優先する傾向がある。富山県の奨励品種は「コシヒカリ」「てんたかく」「てんこもり」「富富富」などで、コシヒカリが作付け面積の65%を占める(富山県米麦協会)。
日本ファクトチェックセンター(JFC)は富山県農産食品課に取材した。
担当者は「特定の品種の植え付け、販売を禁止、制限するような条例はない。ササニシキの植え付けも禁止されているわけでないので、県外から種籾を入手して栽培する方はいるかもしれないが、ほぼないのではないか」と話す。
農林水産省は、農産物検査法に基づいて毎年米の品種ごとの検査量のデータを公表している。このデータを見ても、2006年から2023年産まで富山県でササニシキが栽培されて検査されたという記録はない(農水省)。
判定
「富山でササニシキの栽培が禁止された」は、誤り。これまでも富山県ではササニシキはほとんど栽培されていないが、栽培する米の品種を制限するような法令はない。
検証:宮本聖二
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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