2025年1月から軽自動車の自賠責保険、修理費用が170%値上げ? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

2025年1月から軽自動車の自賠責保険、修理費用が170%値上げ? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

2025年1月から軽自動車の自賠責保険170%、車検費用は120%、修理費用が170%値上げという情報が拡散しましたが、誤りです。情報はまとめサイトの記事を引用したもので、情報のソースはありません。

検証対象

2024年12月16日、自動車保有者の負担の国別比較とする棒グラフと共に、「【悲報】2025年1月から軽自動車の維持費が大幅値上げ」「自賠責保険証170%、車検費用平均120%、修理費用平均170%値上げ、10年落ちの軽自動車は更に自賠責保険料増額」という情報が拡散した。

2024年12月26日現在、この投稿は2万件以上リポストされ、表示回数は300万回を超える。投稿について「軽自動車のメリットがなくなっていく」「車ないと生活できないのに」というコメントの一方で「これで合ってるかな?」という指摘もある。

検証過程

ソースのないまとめサイトを引用

検証対象のリンクはまとめサイト「NewsSharing」の記事だ。2つのX投稿を引用している。

1つは2024年12月15日にXユーザーが投稿した「軽自動車の維持費こんなに値上げすんのか?」という投稿だ。添付された画像には「2025年1月から軽自動車維持費値上げ」「軽自動車の普及に伴い自賠責保険料170%値上げ 車検費用平均120%値上げ 修理費平均170%値上げ」「自民党・財務省早期解体」などと書かれている。

検証対象の値上げの数値はこの投稿をもとにしている。しかし、この数値などの根拠になるソースは書かれていない。

自賠責保険の2025年4月改定は決まっていない

拡散した情報のうち「自賠責保険料の170%値上げ」について、日本ファクトチェックセンター(JFC)は、損保各社が作る損害保険料算出機構に取材した。

損害保険料算出機構の広報担当者によると、自賠責保険の料率改定は、金融庁の諮問機関である自賠責保険審議会で決定される。しかし、定期的に改定されるわけではなく来年2025年4月に改定があるかどうかは、24年12月25日現在、わからないという。

直近3回の改定における軽自動車の自賠責保険料(保険期間24か月の例)の変遷は以下のとおり。

(2020年4月改定)21,140円
(2021年4月改定)19,730円
(2023年4月改定)17,540円【現在】

改定率は20年から21年に6.7%の値下げ、21年から23年でみると11%の値下げになっている。

車検、修理費用の大幅値上げは根拠不明

「車検費用平均120%値上げ」「修理費平均170%値上げ」については、JFCは、自動車整備事業者の業界団体に取材した。

「修理費用や重量税を除く車検整備費用は、各会員事業者が定めることで、業界団体で料金表があるわけでも、会員業者に価格について指示することもない」と、一律の改定率があるわけではない。

「全体的に物価が上がっているので、仕入れ部品の値上げなどによって費用が上がる傾向にあるのは確かだ」とする一方、「来年から一気に170%値上げというのは根拠はない」との見解を示した。

こうした情報の拡散について「団体としては見積もりを出すなど透明性を確保することを会員業者に指導しているので、ユーザーの皆さんは、こうした拡散している情報を鵜呑みにせず、業者に見積もりを出してもらった上でその業者に車検や修理を依頼するのかを判断してほしい」と述べた。

拡散したグラフはJAF作成資料

この投稿には「自動車ユーザーの税負担の国際比較」グラフの画像が添付されている。

この画像をGoogleレンズで検索すると、一般財団法人 道路新産業開発機構がまとめた資料「諸外国の道路整備・維持管理方針と自動車関連諸税(2016 年 5月時点整理)」に添付された「JAF による自動車ユーザーの税負担の国際比較」のグラフが見つかる。

このグラフは、自動車全体の税負担について他国と比較したもので、軽自動車の自賠責保険、修理費用とは関係ない。

判定

拡散した投稿はまとめサイトによるもので、ソースはXユーザーの投稿を引用している。自賠責保険が2025年から値上げするのか、そもそも改定があるのかは12月25日現在決まっていない、また車検や修理の値上げに関しても自動車整備事業者の業界団体は、来年一律に大幅な値上げがあるということについては根拠はないとする。したがって、誤りと判定した。

検証:木山竣策、宮本聖二
編集:藤森かもめ、野上英文、古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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