「NHK受信料、スマホ所持でも徴収へ。有識者会議の意見一致」は誤り。会議を開いた総務省は、意見が一致した事実はないと否定している【ファクトチェック】

「NHK受信料、スマホ所持でも徴収へ。有識者会議の意見一致」は誤り。会議を開いた総務省は、意見が一致した事実はないと否定している【ファクトチェック】

「NHK受信料、スマホ所持でも徴収へ。有識者会議の意見一致」という言説が拡散されましたが誤りです。産経新聞の記事を不適切に引用したもので、総務省は「そのような事実はない」と述べています。

検証対象

2023年5月1日のツイッター速報のツイートは「NHK受信料、スマホ所持でも徴収へ。有識者会議の意見一致」という見出しとともに自身のまとめサイトへのリンクが掲載されている。このツイートは5月9日現在、2300万件以上の表示と3.7万件以上のいいねを獲得した。

画像

このツイートのリンク先であるまとめサイト内では、2023年4月27日に産経新聞がYahoo!ニュースへ配信した記事が貼られていた。返信欄では「そのうち生きてるだけで料金支払わされそう」や「やる事がもうメチャクチャだな…」といった反応があった。

検証過程

リンク先が引用している産経記事の見出しは「ネット時代のNHK財源は『受信料収入』で 総務省有識者会議」。記事内では「スマホ所持だけで課金するのではなく、アプリを入れるなど能動的な行動をした人から負担を求めるべきだとする見方が多数を占めた」とあり、ツイッター速報の見出しと異なる。

記事は、2023年4月27日に総務省が開いた第7回公共放送ワーキンググループについて報じたものだ。この会議の内容は5月9日現在、公開されていないが、総務省が会議で配布した資料の17ページに、これまでの会合で出た主な意見を紹介している。

「受信料制度の在り方に関しては、インターネットに接続する機器を保有しているだけで受信料を払うというような制度をいきなり考えるというのは難しいのではないか」(第1回:山本主査代理、宍戸構成員、瀧構成員、長田構成員、林構成員)

「スマホのアプリをインストールするような自らNHKを受信できる環境を整えようとする視聴者については、ある意味積極的に受信に関与しようとするのであるから、このWGで議論自体はしても良いのではないか」(第1回:三友主査、林構成員)

このように「スマホを所持するだけで受信料を徴収するべきである」と構成員の意見が一致したという記録はこれまでにない。

日本ファクトチェックセンター(JFC)が総務省へ、第7回公共放送ワーキンググループでスマホを所持するだけで受信料を徴収するべきである」との意見が一致したかどうかを問い合わせたところ、「そのような事実はありません」との回答があった。

また、これまで7回行われた議論では、「『インターネットに接続する機器を保有しているだけで受信料を払うというような制度をいきなり考えるというのは難しいのではないか』という趣旨の意見が複数の構成員から示されています」との回答があった。

判定

「スマホ所持でも受信料を徴収することで、有識者会議の意見が一致した」という言説に関して、Twitter速報が引用した記事自体にも「一致した」という文言はなく、総務省の記録などにその事実はないことから、誤り。

検証:本橋瑞紀、宮本聖二
編集:藤森かもめ、古田大輔

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現 公式が注意喚起

東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現 公式が注意喚起

東京新聞編集局の偽Xアカウントが出現しています。公式アカウントが「投資の勧誘をする『なりすまし』アカウントが確認されています。東京新聞とは全く関係ありません」と注意を呼びかけています。 リプライに投資を呼びかける偽アカウント X(旧Twitter)で東京新聞編集局の投稿にリプライ形式で投資を呼びかけるなりすましのアカウントが出現した。 2024年5月8日、東京新聞編集局の公式アカウントが「『東京新聞編集局』を名乗って、同じアイコン、背景を使って投資の勧誘をする『なりすまし』アカウントが確認されています。東京新聞とは全く関係ありません」と注意を呼びかけている。 なりすましアカウントは、公式アカウントの投稿にツリー形式で表示されるリプライを付けている。公式アカウントと同じアイコンでLINEの友達追加を促している。 公式アカウントは8万以上のフォロワーがいるのに対し、偽アカウントは5月9日15時の時点で0人だ。またIDも英数字の羅列になっている。 あとがき 著名人のなりすましアカウントや偽の広告がSNSに次々と出てきています。詐欺サイトへの誘導や個人情報

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
杉田水脈氏「『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していない」 は誤り 自身が国会で認め、記録も存在【ファクトチェック】

杉田水脈氏「『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していない」 は誤り 自身が国会で認め、記録も存在【ファクトチェック】

自民党の杉田水脈衆議院議員が「そもそも『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していません」とX(旧Twitter)に投稿しましたが、誤りです。2016年2月に投稿した記録がアーカイブで残っており、2022年11月の参議院予算委員会で杉田氏自身も認めています。 検証対象 2024年5月2日、自民党の杉田水脈衆議院議員がX(旧Twitter)で、「杉田水脈議員の在日コリアン投稿 人権侵犯と認定 大阪法務局」というNHKの記事(2023年10月)を否定した。 杉田氏は、NHK記事を引用した別アカウントに返信する形で「残念ながらこのNHKの記事、事実とは程遠いです。そもそも『民族衣装のコスプレおばさん』なんて投稿していませんし」などと主張している。 2024年5月7日時点で、杉田氏のポストは180万回以上の視聴と3600回のリポストがあり、引用元のコメントにも37万回以上の閲覧がある。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、杉田氏が「民族衣装のコスプレおばさん」と投稿したかどうかを調べた。 「大阪法務局が杉田氏を人権侵犯と認定」と各社が報

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り 接種から一定期間経過すれば献血できる【ファクトチェック】

「日本政府がコロナワクチン接種者の献血を禁止」は誤り 接種から一定期間経過すれば献血できる【ファクトチェック】

日本政府がコロナワクチンを接種した人の献血を禁止するという言説が拡散しましたが、誤りです。日本赤十字社では接種から一定期間が経過すれば献血を受け入れています。「ワクチン接種者の献血禁止」は繰り返し拡散しています。 検証対象 2024年5月1日、X(旧Twitter)で、「日本政府はワクチンを接種した人の献血を禁止。"汚染された血液"」というコメントと、岸田文雄首相の写真を付けたポストが拡散した。ポストは、科学者を名乗る人物の英文の投稿「Japan to ban vaccinated people from donating ‘tainted blood’」を引用している。 5月7日から8日にかけてこの投稿はXによって削除されたが、120万を超える閲覧数があり、「80%の日本人のは、もう献血できない」「日本赤十字社どうするんだろうね?」 と言ったコメントがついたほか、「こないだ献血しましたよワクチン2回と問診にこたえてますが」という投稿に疑問を投げかけるコメントもあった。 検証過程 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、厚生労働省医薬局血液対策課に取

By 宮本聖二
政治関連の偽・誤情報の拡散/SNS規制求める声/AIがもたらす危機【注目のファクトチェック】

政治関連の偽・誤情報の拡散/SNS規制求める声/AIがもたらす危機【注目のファクトチェック】

✉️日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 衆院補選の影響もあり、政治関連の偽・誤情報が拡散しました。こういった状況を受けて、各社の世論調査ではSNS規制を求める声が高まっています。法的な規制には、言論の自由への悪影響も懸念されており、慎重な議論が必要ですが、同時にAIなどで広がる危機への素早い対策も求められています。 JFCのファクトチェック記事 「衆院補選、8時に当確はおかしい、不正選挙だ」は誤り 衆院補選について「開票が始まっていないのに当確が出たのは不正選挙」という言説が拡散しましたが、誤りです。報道各社が事前取材と有権者への調査などに基づいて投票締め切り直後に当選確実を報じたもので、一般的な手法です。 「衆院補選、8時に当確はおかしい、不正選挙だ」は誤り 出口調査や事前の取材によるゼロ票打ち【ファクトチェック】衆院補選について「開票が始まっていないのに当確が出たのは不正選挙」という

By 宮本聖二, 古田大輔(Daisuke Furuta)