小中高生の自殺がはじめて500人超。原因1位は「親の貧困による生活苦」?【ファクトチェック】
「小中高生の自殺者数が初の500人超え、原因1位は『親の貧困による生活苦』」という言説が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのXアカウントで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。厚生労働省は主な原因として「家庭問題」「学業不振」「友人関係」などを挙げています。
検証対象
2024年10月29日、「小中高生の自殺者数が初の500人超え、遺書に書かれた原因1位は「親の貧困による生活苦」😰」という投稿が拡散した。この投稿は10月30日現在、323万回以上の閲覧回数と9300件以上のリポストを獲得している。
投稿はまとめサイト「ツイッター速報〜BreakingNews」によるものだ。
検証過程
まとめサイトと添付記事の内容が不一致
検証対象の投稿に添付されたリンクはまとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」の記事だ。引用元はテレビ朝日の記事と毎日新聞の記事、そして、掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「小中高生の自殺者数が初の500人超え、遺書に書かれた原因1位は『親の貧困による生活苦』😰」になっている。
テレ朝の記事は2024年10月29日に配信した「小中高生の自殺者数500人超と高止まり 厚生労働省「危機的な状況」として対策を強化」。2023年の全国の自殺者2万1837人のうち、小中高生は513人で、過去最多だった2022年から1人減ったと報じている。理由について「年齢が若いほど自殺の動機がわからない場合が多い」と述べている。
毎日新聞の記事は2024年10月29日付「「経済・生活問題」で自殺、2年で1.5倍 自殺白書 物価高背景か」。2024年版自殺対策白書の分析結果として、小学生の自殺原因や動機は「家族による叱責など『家庭問題』が男女ともに高い傾向が見られた」と述べている。
一方で「中学・高校生では男女差が見られ、男子は学業不振や進路関連の悩みなどが多く、女子は友人関係などの悩みが中学生では顕著であり、高校生は病気などの健康問題(うつ病などの精神疾患)の割合が高かった」と説明している。
いずれの記事も小中高生の自殺原因・動機が「親の貧困による生活苦」であるとは言っていない。
小中高生の自殺原因・動機
JFCは厚労省の「2024年度版自殺対策白書」を確認した。白書によると、こどもの自殺原因・動機には男女間、小中高生間の違いがみられる。
小学生男子では自殺原因・動機が明らかになっていない「不詳」と孤独感などを含む「その他」がともに29.4%で1位。中学生男子では学業不振やいじめなどの「学校問題」が45%超、「家庭問題」も31.5%だった一方、高校生男子は「学校問題」が51.4%と突出していた。
小学生女子は「家庭問題」「学校問題」が30%を超え、中学生女子は「学校問題」が45.3%と最も多く「家庭問題」と「不詳」が20%台で続いた。高校生女子では、精神疾患等の病気を含む「健康問題」の39.4%が最も多くを占め、30%台の「学校問題」が次に多かった。
小中高生男子・女子のいずれにおいても、事業不振や生活苦などを理由とする「経済・生活問題」は自殺原因・動機では5%未満であることがわかる。
「ツイッター速報」は匿名掲示板を転載するまとめサイトで、ニュースメディアではない。日本ファクトチェックセンター(JFC)は過去にも「ツイッター速報」が拡散させた複数の言説を検証し、いずれも「誤り」か「不正確」と判定している(検証1、検証2、検証3)。
判定
「小中高生の自殺者数が初の500人超え、原因1位は『親の貧困による生活苦』」は誤り。見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルで、厚労省の白書によると、小中高生の自殺原因・動機で「経済・生活問題」は、割合が低い。
検証:リサーチチーム
編集:藤森かもめ、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら。
ファクトチェックやメディア情報リテラシーについて学びたい方は、こちらの無料講座をご覧ください。ファクトチェッカー認定試験や講師養成講座も提供しています。