(動画)イスラエル兵がハマスの航空機をミサイル攻撃?【ファクトチェック】
イスラエル兵がイスラム組織ハマスの航空機を撃墜したとする映像は、誤りです。ミリタリーゲームの映像を使ったもので現実ではありません。
検証対象
2023年10月10日、「イスラエル兵がハマスの航空機を完全破壊」というコメントとともに、地上の兵士が空中を飛ぶ航空機をミサイルで撃墜する動画が拡散した。
別のアカウントでは、2023年10月8日、同じ動画だが、攻守を入れ替えて「ハマスの兵士が、イスラエルの軍用ヘリを撃墜している」とコメントをつけた映像も拡散している。
このほかにも、一つの動画に、異なる解説をつけた投稿が世界中で拡散している。
検証過程
検証対象の動画は、冒頭で地上の兵士が右肩に地対空ミサイルのようなものを抱えて撃つシーンがある。これとよく似た映像は、2023年3月にYouTubeへ投稿され、「#ARMA3」というハッシュタグがつけられている。
「ARMA3」は、チェコにある「Bohemia Interactive」という会社が開発したミリタリーゲームだ。同社のサイトによると、ARMA3は、過去の紛争などをシミュレートし、ユーザーが20種類超の車両や40種超の武器を使って戦うゲームだ。
この会社は公式サイトのブログでARMA3の映像がフェイク動画に使われていることに対して
「これが現実の戦闘映像と間違われ、戦争プロパガンダとして利用されることは決して喜ばしいことではありません」と警告している。
また、ARMA3を利用したフェイク動画を見極める方法も挙げている。
- わざと画質が落とされている
- 暗闇や夜間の映像になっている
- 動く人物が使われることはあまりない(人間の動きをゲームはリアルに再現出来ていない)
- 爆発や火、煙といった粒子を含む画像はリアルに再現できないのでフェイクかどうかがわかりやすい
また、Bohemia InteractiveはFacebookやX(Twitter)などのプラットフォーム業者に、ARMA3を使った映像がアップロードされると削除を要請し、報道機関やファクトチェッカーとも連携しているという。
ロイターはARMA3の映像を使った偽情報をたびたびファクトチェックしている。2023年8月29日の記事では、ロシア軍機がNATO・北大西洋条約機構軍のF16戦闘機を撃墜したという言説を検証。「この動画はArma 3のゲーム映像を加工したもので虚偽である」と書いている。
判定
イスラエル兵がイスラム組織ハマスのヘリコプターを撃墜したとする映像は、ミリタリーゲームの映像を使った偽動画で誤り。
あとがき
イスラム組織ハマスによる大規模な攻撃とこれに対するイスラエルによる報復作戦をめぐって数多くの誤った言説が世界中で急激に拡散しています。過去の関係のない映像やゲーム映像などを利用して双方の憎悪を煽る例もあります。
驚くような映像を見た時は、一旦立ち止まり、ファクトチェックされていないか、映像の中に怪しい部分はないか確かめることが必要です。特に今回のゲーム動画のような例は急増しています。注意しましょう。
検証:宮本聖二
編集:古田大輔、野上英文、藤森かもめ
イスラエル・パレスチナをめぐる検証まとめ
検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。
「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。
X(Twitter)、Facebook、YouTube、Instagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を。