(動画)イスラエル占領軍がガザに核爆撃?【ファクトチェック】

(動画)イスラエル占領軍がガザに核爆撃?【ファクトチェック】

イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突で、「イスラエル占領軍がガザに核爆撃した」という言説が映像と共に拡散しましたが誤りです。映像は、2020年にレバノンのベイルート港で起きた大爆発で、イスラエル・パレスチナでの武力衝突とは関係がありません。また、硝酸アンモニウムによる爆発の様子であり、核爆発ではありません。

検証対象

2023年10月16日、「イスラエル占領軍がガザに核爆撃」という動画付き投稿がSNSで拡散した。動画には、街路樹に囲まれた車道の奥で爆発が起き、人々が悲鳴を上げて逃げる様子が映っている。この投稿は、2023年10月19日時点で900回以上リポストされ、表示回数は100万件を超える。

画像

投稿について「戦争は恐ろしすぎる」などと同調するコメントの一方で、「核じゃない」「レバノンの爆発とそっくり」「2020年のレバノンベイルート港爆発事故の映像です」という指摘がある。

検証過程

2020年8月4日、レバノンでは、ベイルート港に保管されていた大量の硝酸アンモニウムが爆発を起こし、死者200人超の大災害となった。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、「2020年のレバノンベイルート港爆発事故の映像」という指摘を基に、今回の動画がベイルート港で撮影されたものかどうか。また、検証対象の動画がいつからネット上に存在するかを調べた。

画像
Googleマップより

映像の撮影場所を特定するため、撮影者の前方で爆発が起きていることや、動画内で双方向車線の道路があることを考慮し、Googleマップのストリートビューを確認した。

画像
左が検証対象の動画 右がGoogleストリートビュー

その結果、西側の海岸沿いの爆心地から1.5キロほど離れた場所に、映像と同じ建物、看板、旗を揚げるポールを画像で発見することができた。このため、爆発の映像が撮影されたのは、確かにレバノンのベイルート港付近であり、ガザではない。

また、検証対象の動画を検索した結果、Youtubeショートには2020年8月6日に「Massive Explosion in Beirut Port: “Shock Wave ”」として同一の映像が投稿されている。「ベイルート港での大爆発」と記していた。

CNNBBCは、レバノン港爆発事故の原因について、倉庫に保管されていた2750トンの硝酸アンモニウムだと報じている。動画は硝酸アンモニウムによる爆発の様子であり、核爆発ではない。

判定

動画は、2020年に起きたレバノンのベイルート港爆発事故の様子を撮影したもので、イスラエル・パレスチナでの武力衝突とは関係ない。硝酸アンモニウムによる爆発で、核爆発でもない。したがって、誤りと判定した。

検証:木山竣策、鈴木刀磨
編集:藤森かもめ、宮本聖二、野上英文、古田大輔

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐる検証まとめ

イスラエル・パレスチナ情勢をめぐり大量の誤情報/偽情報 検証方法を解説【ファクトチェックまとめ】
イスラエル・パレスチナの武力衝突に関連し、大量の誤情報/偽情報が世界的に拡散しています。互いの憎悪を煽るような投稿もあり、混乱に拍車をかけています。日本ファクトチェックセンター(JFC)がこれまでに検証した事例とともに、対応策をまとめました。 ※新たな検証があれば記事を更新します(最終更新2023年11月17日)。 対立煽る誤情報/偽情報 間違った情報に関して、一般的には「フェイクニュース」や「デマ」という言葉が使われることが多いですが、その内実は複雑です。 真偽が不確かな情報で社会が混乱する「情報汚染」を情報の意図と正誤で3つに分類すると、図のようになります。「誤情報:意図的ではないが誤っている」「悪意ある情報:意図的だが誤っていない」「偽情報:意図的に誤っている」の3つです。 ロシアとウクライナの戦争がそうであるように、イスラエル・パレスチナをめぐっても、大量の誤情報/偽情報/悪意ある情報が拡散しています。情報汚染は対立を煽り、混乱を悪化させます。発信元の確認や他の情報源との比較をするようにしましょう。 誤情報/偽情報の検証方法 大量に流れる情

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

「ファクトチェックが役に立った」という方は、シェアやいいねなどで拡散にご協力ください。誤った情報よりも、検証した情報が広がるには、みなさんの力が必要です。

X(Twitter)FacebookYouTubeInstagramなどのフォローもよろしくお願いします。またこちらのQRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、真偽が気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

秋田県知事「熊に小型の爆発物を食べさせて爆破すればハンターは必要ない」と発言? 後半部分が捏造【ファクトチェック】

秋田県知事「熊に小型の爆発物を食べさせて爆破すればハンターは必要ない」と発言? 後半部分が捏造【ファクトチェック】

秋田県の佐竹敬久知事が「熊に小型の爆発物を食べさせて爆破すればハンターは必要ない」と発言したとする情報が拡散しましたが、不正確です。拡散した投稿はまとめサイトのXアカウントからで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。後半部分が捏造です。 検証対象 2024年12月18日、「秋田県知事『熊に小型の爆発物食べさせて爆破すればハンター必要ない』」という情報が拡散した。 2024年12月20日現在、この投稿は340件以上リポストされ、表示回数は8万回を超える。投稿について「狂ってる」「それはちょっと」というコメントの一方で「マジでいった?」という指摘もある。 検証過程 まとめサイトは掲示板サイトのタイトルを引用 検証対象のリンクは、まとめサイト「TweeterBreakingNews-ツイッ速!」の記事だ。 タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「【悲報】秋田県知事「熊に小型の爆発物食べさせて爆破すれはハンター必要ない」←🧸」で、読売新聞オンラインが2024年12月17日にライブドアニュースで配信した記事「秋田県知事、ク

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
年金支給開始年齢は80歳からにすべきと小泉進次郎氏が発言? AIが誤情報を再生産【ファクトチェック】

年金支給開始年齢は80歳からにすべきと小泉進次郎氏が発言? AIが誤情報を再生産【ファクトチェック】

「小泉進次郎氏が2024年9月に年金支給開始年齢は80歳からにすべきと発言した」という情報が拡散しましたが、誤りです。拡散した情報はAIが生成したもので、小泉氏の発言は年金受給開始の選択の幅を広げる内容のものでした。 検証対象 2024年12月19日、「忘れっぽい日本国民の皆様のために貼っておきます」という文言と共に、「年金支給開始年齢は80歳からにするべきだと発言していた政治家は誰ですか?」という質問に生成AIが「小泉進次郎です」と回答したという情報が拡散した。 2024年12月20日現在、この投稿は8300件以上リポストされ、表示回数は224万回を超える。投稿について「元取れるの100歳超え」「AIが社会問題解決する」というコメントの一方で「少し調べればデマ」という指摘もある。 検証過程 以前にも拡散した誤情報をAIが再生産 自民党の小泉進次郎氏が「年金支給開始年齢は80歳からにすべき」と発言したという情報は以前にも拡散している。 自民党総裁選に絡んで2024年9月、日刊ゲンダイの記事をもとにしたまとめ記事などによる情報が拡散したもので、日本

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
WHO事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言? ワクチン開発前のニュースの切り取り【ファクトチェック】

WHO事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言? ワクチン開発前のニュースの切り取り【ファクトチェック】

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が「コロナ感染に効くワクチンは無い」と発言したとの主張が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。2020年8月3日の会見で「(新型コロナウイルスの)感染から守ってくれるワクチンをみんなが期待している。しかし現時点で特効薬はなく今後もないかもしれない」と発言していますが、当時は新型コロナウイルスのワクチンを開発中でした。 検証対象 2024年12月18日、「WHO テドロス事務総長 コロナ感染に効くワクチンは無い と言う」などと主張する投稿が拡散した。 投稿にはニュース番組と思われる22秒の動画が添付されている。「WHO ワクチンに期待高まるも「感染から守る特効薬ない」などの字幕が出た後、以下のようにニュースが読み上げられる。 アナウンサー:WHOは、新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいる一方、現時点では感染から守る特効薬はないとして過度な期待に警鐘を鳴らしました。 テドロス事務局長(字幕):感染から守ってくれるワクチンをみんなが期待している。 しかし、現時点で特効薬はなく、今後もないかもしれない。

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
田村元厚労相が国会で「年収200万円は低収入でない」と答弁?そのような直接的な発言はない【ファクトチェック】

田村元厚労相が国会で「年収200万円は低収入でない」と答弁?そのような直接的な発言はない【ファクトチェック】

自民党の田村憲久・元厚生労働大臣が「年収200万円は低収入でない」と国会答弁したとの主張が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。一定以上の所得がある後期高齢者の医療費窓口負担増をめぐり衆議院予算委員会審議で、共産党の宮本徹衆院議員の「年収200万円の75歳以上の方が低所得者なのか高所得者なのか」という質問に「75歳以上の後期高齢者の所得の中では単身で年収200万円は上位30%に該当する」と述べており「年収200万円が低収入ではない」と答弁したわけではありません。 検証対象 2024年12月14日、「田村元厚労相が国会答弁で年収200万は低収入でないと言ってた」などと主張する投稿がX(旧Twitter)で多数拡散した(例1、例2、例3)。 「200万じゃ生活できない」「そう言ってる国会議員の年収を200万にしたらいい!」などのコメントが寄せられる一方で、情報源を疑う声もある。 検証過程 田村元厚労相が200万円に言及した国会の答弁 日本ファクトチェックセンター(JFC)は、国会会議録検索システムで、発言者を田村元厚労相に限定して「二百万」というキー

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)