イランのデモ隊が銅像にイラン革命前の国旗を掲げる画像? 一部が加工【ファクトチェック】

イランのデモ隊が銅像にイラン革命前の国旗を掲げる画像? 一部が加工【ファクトチェック】

イランで拡大している反政府運動をめぐって、デモ隊が群衆に囲まれながらイラン革命前の国旗を銅像に掲げる画像が拡散しましたが、現実の画像ではありません。画像の一部は加工されています。

検証対象

拡散した投稿

2026年1月11日、「イランのデモ隊が革命政府が立てた銅像に登り、イラン革命前の国旗を掲げてる写真、これもうピューリッツァー賞でしょ」という画像つき投稿が拡散した。

画像にはイランの古い国旗を男性が銅像の上に掲げ、下に集まった群衆がスマホで撮影したり、同じように旗を掲げたりする様子が映っている。

検証する理由

1月13日時点、この投稿は7600件以上リポストされ、表示回数は201万回を超える。投稿について「これはいい写真」「まさにベストショット」というコメントの一方で「手前の観衆とよじ登ってる人の縮尺が合わない」という指摘もある。

検証過程

イランの反政府運動

イランでは、通貨下落と物価急騰をきっかけに、昨年末から反政府運動が各地に拡大した。

BBCによると、イラン政府は弾圧を激化させ、これまでに数百人の抗議者が死亡しているという(以上、BBC.”イラン、アメリカに攻撃されたら報復すると警告 反体制デモの死者500人超と人権団体”)。

拡散した画像は

拡散した画像を確認すると、反政府運動のシンボルになっている緑、白、赤に獅子があしらわれた旧国旗を男性が銅像の上で掲げている。その手前に群衆が集まり、スマートフォンで撮影したり、同じように旗を掲げる様子が映っている。

しかし、銅像の上に映る男性より手前に映っているはずの群衆の手や腕が男性よりも小さい。手前に写る人物の方が小さいのは不自然だ。

元動画の存在

イランの反政府運動を巡っては、ネット上に多数の動画が掲載されている。Xで「Iran」と検索すると、BBC VerifyのジャーナリストShayan Sardarizadeh氏が投稿した動画の1つに、拡散した画像と同じ画角で像の上に旗を掲げる人物の動画がある。

動画は全1分4秒。銅像に登り旧国旗を掲げる人物が映っている。動画の49秒時点を確認すると、拡散した動画と画角、旗の揺れ方などが完全に一致する。

動画(49秒時点)と拡散した画像の比較

しかし、拡散した画像とは違い、スマートフォンで撮影したり旗を掲げるような群衆は確認することができない。

完全に同じ画角の元動画が存在すること、旗を掲げる人物と手前の群衆の縮尺の違いから、拡散した画像は動画の切り抜きで、手前の群衆はあとから追加されたことがわかる。

判定

拡散した画像は旗を掲げる人物と手前の群衆の縮尺が違う。また、画像と同じ画角の動画もあるが群衆は写っていない。よって、実際の画像ではなく、誤りと判定した。

あとがき

イランで反政府運動が広がっていることは事実であり、また、銅像に旗を掲げた人物がいることも事実です。しかし、拡散した画像は一部が加工されたものでした。

現実の状況に加工された画像や動画が混入することで、情報は混乱します。画像をよく見れば、違和感があることがわかる事例です。確認を徹底しましょう。

出典・参考

BBC.”イラン、アメリカに攻撃されたら報復すると警告 反体制デモの死者500人超と人権団体”.https://www.bbc.com/japanese/articles/c0erqq4727yo ,(閲覧日2026年1月13日)

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

多言語で広がる日本に関する偽・誤情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

多言語で広がる日本に関する偽・誤情報/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

日本ファクトチェックセンター(JFC)は電通総研との共催で「情報インテグリティシンポジウム」を開きました。AIによるディープフェイクの氾濫、選挙とファクトチェック、メディアリテラシーの普及など、各分野の専門家で議論しました。 状況は非常に厳しいと言わざるを得ません。発表やパネル討論の内容は今後、記事にしていきますのでしばらくお待ちください。 情報環境の悪化は「今週のファクトチェック」の内容を見ても明らかです。日本に関する誤った情報が多言語で拡散し、逆に英語から日本語へと浸透していく現象も加速しています。 例えば、「高市早苗首相が訪米時に長崎に原爆を落としたパイロットの墓に献花した」という情報はロシアやイランのメディアが報じ、英語でも拡散しました。「バイデン元大統領が死去」という情報は、エイプリルフールの英語でのネタ投稿がXの自動翻訳機能で日本語になっていました。 JFCでは、日本に関する偽・誤情報が海外でも拡散している場合には、英語でも発信するようにしています。ソーシャルメディアで国境を超えて正確な情報を広げるためだけではありません。生成AIが誤った情報を学習するの

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
バイデン元大統領が死去? エイプリルフールネタが日本語で拡散【ファクトチェック】

バイデン元大統領が死去? エイプリルフールネタが日本語で拡散【ファクトチェック】

米国のバイデン前大統領が死去したという情報が拡散しましたが、誤りです。2026年4月3日時点でそのような情報や報道はありません。Xの投稿が自動で翻訳されるようになったことで、現地のエイプリルフール投稿が日本語で拡散しました。 検証対象 拡散した投稿 4月2日、「バイデン元大統領亡くなったのかよ、、、」という投稿が拡散した。投稿には「速報: 元アメリカ合衆国大統領ジョー・バイデンが83歳で死去」と書かれた投稿のスクリーンショットが添付されている。 検証する理由 4月3日現在、この投稿は360件以上リポストされ、表示回数は496万回を超える。投稿には「まあ年齢的にも仕方ないよね」「まさか、バイデン」というコメントの一方で「こういうのはダメだよ」という指摘もある。 検証過程 拡散した画像はエイプリルフール投稿 拡散している投稿の画像は、別の投稿者によるXの投稿をスクリーンショットしたものだ。画像に表示されている日時は、日本時間の4月2日午前3時になっている。 しかし、この元の投稿者は、直後のリプライ欄に「today's date Wednesd

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は4月25日(土)午前10時~11時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0425.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)