スーツを着るゼレンスキー大統領? ロシア侵攻開始前の姿【ファクトチェック】

スーツを着るゼレンスキー大統領? ロシア侵攻開始前の姿【ファクトチェック】

アメリカのトランプ大統領との面会でスーツを着ていなかったことが批判されたウクライナのゼレンスキー大統領が「他のVIPの前ではスーツ」という情報が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。拡散した画像はロシアによる侵攻前のものです。

検証対象

2025年3月2日、ゼレンスキー氏がスーツを着ている写真と共に「シュワブの前ではスーツなのかなぁ」とキャプションのついた投稿が拡散した。

この投稿には、1500以上のリポストがついたほか、75万を超す閲覧がある。この投稿には「ホワイトハウスに中国製の服できて TRUMP政権を舐めてかかる」「トランプ大統領をシュワブよりも下に見てる?」といったコメントのほか、過去の写真という指摘もある。

検証過程

拡散したのは侵攻開始前の写真

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、Googleレンズで調べた。2020年1月にスイスで開催された世界経済フォーラム年次総会でクラウス・シュワブ会長とゼレンスキー氏が話す写真と同じであることがわかった。

ウクライナ大統領府で公開されている2020年のダボス会議での写真

ゼレンスキー氏は、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻後、「戦争が終わるまで兵士と同じ服装でいる」と宣言して、ダークな色のTシャツやスウェット、セーターなどを着ている。各国の首脳と会うときもスーツを着ていない。

シュワブ会長と映った写真は、侵攻開始の2年以上前のものだ。インドのファクトチェック団体「Newschecker」もこの写真を検証し、侵攻開始前の写真で現在のものとして拡散するのは「文脈が欠落している」と判定している。

判定

ウクライナのゼレンスキー大統領がスーツを着ている写真が最近のもののように拡散したが、侵攻開始前に撮影されたもの。ミスリードで不正確と判定する。

検証:宮本聖二
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

アロンアルファは止血に使える? 医療用のみ可能【ファクトチェック】

アロンアルファは止血に使える? 医療用のみ可能【ファクトチェック】

「アロンアルファは止血に使える」という情報が拡散しましたが、不正確です。医療用アロンアルフアAは止血などに使えますが、市販されているものは「人体に関わる場所については安全性の確認ができていません」と公式サイトに書かれています。 検証対象 2025年5月10日、「アロンアルファが止血に使える⁉️という報告」「まさかのアロンアルファが使えて、副作用もなさそう、という報告です」という投稿が拡散した。 2025年5月15日現在、この投稿は2600件以上リポストされ、表示回数は141万回を超える。投稿について「元々医療用に開発されたものですよね」「よく使います」というコメントの一方で「アロンアルファでも医療用と一般用は違う」という指摘もある。 検証過程 アロンアルフアとは、東亞合成株式会社が販売する瞬間接着剤。1963年から工業用アロンアルフアを販売し、1965年には医療用「アロンアルフアA三共」を発売、1971年には家庭用が発売され話題となった(東亜合成株式会社「アロンアルフアのひみつ」)。 「アロンアルファAⓇ」は医療用 拡散した投稿には日本救急医学会

By 木山竣策
政治家や政党関係者を騙り投資を呼びかける偽アカウントに注意

政治家や政党関係者を騙り投資を呼びかける偽アカウントに注意

政治家や政党関係者らを装って、投資を呼びかけるなどの偽アカウントが、XやInstagramで相次いでいます。本人のアカウントが注意を呼びかけています。真偽を見極めるため、必ずフォロワー数や過去の投稿やIDなどを確認しましょう。 InstagramやXに登場した偽アカウント 国民民主党の榛葉賀津也幹事長の場合、榛葉氏を装って、投資を呼びかけるメッセージを送るInstagramアカウントが出現している。榛葉氏は2025年5月8日、Xで「榛葉賀津也のアカウントが投資を呼びかけることなどは、絶対にありません。どうぞご注意ください」と注意喚起している。 東京都の加藤雅之都議の偽アカウントも出現している。加藤氏は「フォロー数、フォロワー数、投稿数が全く異なりますので、冷静に見れば偽アカウントとわかりますが、Instagramユーザーの方はくれぐれもご注意ください」と注意喚起した。 自治体の首長になりすますケースもある。岡山県総社市の片岡聡一市長はXの偽アカウントがあるので「報告をして」とユーザーに呼びかけた。偽アカウントは2025年5月15日現在、凍結されている。

By 木山竣策
仏マクロン大統領と独メルツ首相が麻薬を使用? 高画質で確認するとティッシュ【ファクトチェック】

仏マクロン大統領と独メルツ首相が麻薬を使用? 高画質で確認するとティッシュ【ファクトチェック】

フランスのマクロン大統領とドイツのメルツ首相が同席した動画について、2人が麻薬を使ったかのように主張する投稿が拡散しましたが、誤りです。動画を高精細の動画と静止画で確認すると、映っているのは麻薬の粉が入った袋ではなく、ティッシュです。 検証対象 2025年5月12日、「仏マクロン大統領と独メルツ首相の怪しい動き(ヤク?)ウ・ゼレンスキー大統領との会談の後」というコメント付きの投稿がXで拡散した。動画も添付され、3人の男性が机を囲み、談笑している。そのうち2人の男性が、机の上にあった白い小さなものをそれぞれ手で隠す様子が映っている。 2025年5月14日現在、投稿は800回以上リポストされ、表示は61万回を超える。投稿には「マクロンさんは常習者の可能性が高いです」「冗談ですよね…?」などのコメントのほか、「紙ナプキンです」というコミュニティーノートの指摘もある。 検証過程 動画は列車の中の3首脳の様子 拡散した動画は1分1秒間で、画質は粗いがマクロン仏大統領、メルツ独首相、スターマー英首相の3人が談笑している様子を撮影したものだ。 2025年5月1

By 根津 綾子
立憲民主党、消費税最低25%を主張していたが選挙前に0%に変えた? 党の見解ではなく、直ちに増税を意図していない【ファクトチェック】

立憲民主党、消費税最低25%を主張していたが選挙前に0%に変えた? 党の見解ではなく、直ちに増税を意図していない【ファクトチェック】

「立憲民主党が消費税最低25%を主張していたが選挙前に0%に変えた」という情報が拡散しましたが、不正確です。立憲民主党の小川淳也幹事長は過去に「将来的に消費税を25%に」と発言しましたが、小川氏個人の発言で党の見解ではありません。また、小川氏の発言も、今の日本で直ちに増税を目指すというものではありませんでした。 検証対象 2025年4月29日、「立憲民主『消費税は25%必要!』選挙前は0%って言います」という動画がYouTubeで拡散した。 動画では「消費税最低25%必要と主張していたのに選挙になったらゼロにしますと言い始める。皆さん、これが立憲民主党ですよ」とナレーションがついている。動画について「国民をなめるな!」「消費税詐欺にみなさん注意しましょう」というコメントがついている。 検証過程 小川氏「消費税25%は必要」と発言したのは事実 小川氏は2023年1月に放映された「朝まで生テレビ」で、消費税について「最低でも北欧並みの25%は必要でしょう、将来的にね」と発言し、話題になった。 小川氏のこの発言はXでもたびたび拡散している(例1、例2)

By 木山竣策

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月21日(土)午後2時~3時半で、お申し込みはこちら。 https://jfckousiyousei0621.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのよう

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

JFCファクトチェッカー認定試験  教材と申し込みはこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)