プーチン大統領と習国家主席が米ウ首脳会談を一緒に観た? 過去の動画を加工【ファクトチェック】

ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が、2025年2月米ワシントン・ホワイトハウスで開かれた米国・ウクライナ首脳会談でのトランプ、ゼレンスキー両大統領の口論を一緒に観たかのような動画が拡散しましたが、誤りです。動画は2018年6月にプーチン大統領が訪中した際の映像を加工したものです。
検証対象
2025年3月17日、「プーチンと習近平が一緒に トランプとゼレンスキーが 揉めた 会談動画を観ているのが シュールだな」などと主張する投稿が拡散した。
投稿には動画が添付され、テーブルを挟んで向かい合うプーチン大統領と習主席が映像を観ている様子が映っている。二人が観ている動画にはトランプ、ゼレンスキー両大統領が口論している姿が映っている。
投稿は3月19日時点で1000件以上のリポストと25万件以上のインプレッションを獲得した。
「一緒に見てるの素晴らしい👍歴史的瞬間ですね」「G7は終わる 米中ロのBIG3ができるかもね」などのコメントが付く一方、「フェイク」との指摘もある。
拡散した動画と同一のものは、YouTube(例1、例2)やTikTok(例1、例2)でも拡散している。
検証過程
米ウ首脳会談の席上で両首脳が口論
2025年2月28日、米ワシントンのホワイトハウスで米ウ首脳会談が開かれた。ウクライナの鉱物資源に関する合意文書に署名する予定だったが、記者団の前でトランプ大統領とゼレンスキー大統領が口論となり、合意文書の署名は見送られ、予定していた共同記者会見も中止された(ロイター通信、BBC)。
プーチン大統領と習主席の動画は2018年6月のもの
拡散した動画は、プーチン大統領と習主席が向かい合って座っている。日本ファクトチェックセンター(JFC)がGoogleレンズで画像検索したところ、2018年6月8日にプーチン大統領が中国を公式訪問し、習主席と共に中国鉄路高速(CRH)に乗車して北京から天津に向かった際の画像が見つかった(ロシア大統領府)。
ロシア大統領府のサイトによると、両首脳の他に両国の国鉄にあたるロシア鉄道・中国鉄路のトップが同行し、国際貨物輸送に関する覚書に署名した。
また、この訪問に際して中国国営放送が運営する中国国際電視台(CGTN)がYouTubeに投稿した動画には、CRHの電車内モニターに映し出される映像を見る両首脳の姿が映っている。モニターに映っている動画はCRHが走行する様子や中国の自然風景などだ。
つまり、拡散した動画は2018年のプーチン大統領訪中の際の動画を加工したものだ。この動画の字幕には、スペイン語で「プーチンと習は、トランプがゼレンスキーと口論しているのを見ている。*ユーモア目的で作成された(Putin y Xi ven a Trump discutiendo con Zelenski *CREADO FINES HUMORISTICOS)」とあり、加工動画であることがわかる。
米ウ首脳会談前後に中露両国首脳の会談はない
トランプ大統領とゼレンスキー大統領が口論となった2025年2月28日以降、プーチン大統領と習主席が会談したという中露両国の政府発表はない(ロシア大統領府、中国政府)。
判定
プーチン大統領と習近平国家主席が、トランプ大統領とゼレンスキー大統領が口論している米ウ首脳会談の動画を一緒に観たという主張はフェイク動画で誤り。2018年6月にプーチン大統領が中国を公式訪問した際の動画を加工している。
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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