「日本のウクライナ支援は54兆円」「日本に来たウクライナ人の99%が帰国拒否」?【ファクトチェック】
「日本のウクライナ支援は総額54兆円にのぼる」「日本に来たウクライナ人、99%が帰国拒否、日本国籍を要求」という投稿が拡散しましたが、誤りです。日本の2024年1月15日までの支援額は、およそ1兆2000億円です。また日本財団のアンケート調査で99%が帰国を拒否したという結果は出ていません。
検証対象
ロシアのウクライナ侵攻が始まって2年になる2024年2月、「日本のウクライナ支援の総額は54兆円にのぼるらしい」「もう不要だろう」などという内容の投稿が拡散した。
その投稿には、「日本に来たウクライナ人、99%が帰国拒否。日本に永住させろと日本国籍を要求中」とも書かれている。この投稿は2月28日時点で、180万の閲覧数を獲得している。
検証過程
ウクライナ支援に日本から総額54兆円?
ドイツのシンクタンク「キール世界経済研究所」は、ロシアのウクライナ侵攻以後の42の国・機関によるウクライナへの財政、人道、軍事分野での支援に関する統計を公開している。
そのうち2024年1月15日までの日本のウクライナへの累計支援額は75億ユーロ(約1兆2000億円)だ。54兆円ではない。
投稿にあった「54兆円」という数字は、2023年3月に世界銀行がウクライナの復興支援にかかる総額を算出し、発表した4110億ドルと一致する。世界銀行が発表したときに「およそ54兆円」という報道がある(共同通信、時事通信)。
2023年6月には、朝日新聞とNHKが4110億ドルをおよそ58兆円と報道。これは、共同や時事が3月に報じたときよりも円安ドル高が進んだことによるものだ。
日本に来たウクライナ人の99%が日本国籍を要求?
また、今回拡散したXの投稿には「日本に来たウクライナ人の99%が帰国拒否、日本国籍要求中」と書いてある。
投稿に使われた写真は、2月23日にウクライナからの避難者を支援している公益財団法人日本YMCA同盟が開催したシンポジウムの様子だ(時事通信)。
YMCA同盟は、1月にウクライナから避難してきた153人に対するアンケート調査を実施した。その中で「戦争が終了した場合、どのような選択を希望するか」という質問に、72人(47.1%)が「日本に残り、定住を試みる」、62人(40.5%)が「しばらくの間状況をみる」と答え、「速やかに帰国する」を選択したのは16人(10.5%)だった(時事通信)。
ウクライナから避難した人々の支援に当たる日本財団は、2023年11月15日から12月末にかけて、1000人を超える避難者にアンケート調査を実施している。
その中で「帰国の意思、希望」についての質問では、最も多い39%の人が「できるだけ長く日本に滞在したい」と答え、次に「ウクライナの状況が落ち着くまでは、しばらく日本に滞在したい」と答えた人が33.9%いる。
日本ファクトチェックセンター(JFC)の取材に対して日本財団は、避難者から日本国籍の取得について「問い合わせを受けた記録はない」と話している。
判定
「日本のウクライナ支援が54兆円にのぼる」「日本に来たウクライナ人、99%が帰国拒否、日本国籍を要求」は誤り。これまでの日本の支援額は約1兆2000億円、日本財団によるウクライナからの避難者のアンケート調査では「99%が帰国を拒否している」という結果は出ていない。
あとがき
ロシアのウクライナ侵攻が始まって2年、支援をめぐって誤情報、偽情報が増えています。特に、国内では日本の支援額が多すぎるという言説が拡散しており、JFCでは検証をしています(「日本だけがウクライナに巨額の支援」は誤り 欧米諸国よりも少なくGDP比では支援国下位)。
世界銀行は、侵攻2年でウクライナ復興に必要な金額はさらに増えて4860億ドルになる見込みだと2月15日に発表しています。各報道機関が日本円にして72兆円にのぼると報じています(NHK)。
検証:宮本聖二
編集:藤森かもめ、野上英文、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。検証記事を広げるため、X、Facebook、YouTube、Instagramでのフォロー・拡散をよろしくお願いします。毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンからどうぞ。
また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を。