トランプ氏、イベルメクチン店頭販売の大統領令に署名? そのような大統領令はない【ファクトチェック】

トランプ氏、イベルメクチン店頭販売の大統領令に署名? そのような大統領令はない【ファクトチェック】

トランプ大統領がイベルメクチンを店頭販売できるようにする大統領令に署名したという情報が拡散しましたが、誤りです。2025年2月13日現在、そのような大統領令への署名はありません。

検証対象

2025年2月10日、「トランプ大統領がイベルメクチンを店頭販売できるようにする大統領令に署名した」という情報が拡散した。

2025年2月13日現在、この投稿は2400件以上リポストされ、表示回数は34万回を超える。投稿について「羡ましすぎます」「嬉しい情報」というコメントの一方で「ソースはどちらですか?」という指摘もある。

検証過程

イベルメクチンとは

イベルメクチンとは、寄生虫などが原因で引き起こされる感染症の特効薬。新型コロナウイルスに対する有効性が議論されてきたが、製薬会社「興和」は2022年9月、「有効性が見られなかった」と公表し、治療薬としての承認申請を断念した(NHK)。

イベルメクチンをめぐる誤情報は多数拡散され、日本ファクトチェックセンター(JFC)でも過去に検証し誤りと判定している。

安倍元首相、160万回分のコロナワクチンを返送し国民にイベルメクチンを投与?【ファクトチェック】
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大統領令はあったのか

トランプ大統領は2025年1月20日に就任すると、多数の大統領令に署名した。大統領令を含めたトランプ氏の動向はホワイトハウス公式サイトから確認することができる。

サイトを確認すると、2025年2月13日15時現在、「米国のWHOからの脱退」や「化学療法や外科手術による切除から子どもを守る」などの大統領令が出されているが、イベルメクチンの店頭販売についてや、その他イベルメクチンに関連する大統領令は確認できない。

判定

大統領令はホワイトハウス公式サイトで確認できるが、2025年2月13日現在、イベルメクチンに関する大統領令は出されていない。よって誤りと判定した。

検証:木山竣策
編集:宮本聖二、古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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田母神氏「発がん性物質を含んでいるため米国で発売禁止の除草剤を日本が引き受けている」? 禁止されていない【ファクトチェック】

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田母神俊雄・元航空幕僚長が「発がん性物質グリホサートを含んでいるため、ラウンドアップという除草剤は米国で発売が禁止されたのに、日本ではグリホサートの含有基準が大幅に緩和されている」などと主張しましたが、不正確です。ラウンドアップの主成分グリホサートはアメリカで禁止されておらず、日本での緩和は一部にとどまります。 検証対象 2025年1月25日、 「発がん性物質グリホサートを含んでいるため米国で発売が禁止されたラウンドアップという除草剤を日本が引き受けている」などと主張する田母神氏の投稿がXで拡散した。 田母神氏は、東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授・鈴木宣弘氏がネットで発信した内容だと前置きしたうえで、グリホサートの危険性について述べている。鈴木氏は、食料安全保障や農業政策に関する研究で知られる農業経済学者で、輸入小麦製品からの残留グリホサートに懸念を示し、国産品への切り替えを提唱している。しかし、彼の主張は誤りだとする指摘もある。 投稿は2月6日現在、3600回以上リポストされ、56.9万を超える表示がある。投稿に対して「アメリカの植民地ですね」「

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