埼玉県川口市に外国人のみ入居可能な物件? 物件情報の画像は加工されたもの【ファクトチェック】

埼玉県川口市に外国人のみ入居可能な物件? 物件情報の画像は加工されたもの【ファクトチェック】

埼玉県川口市に「外国人のみ入居可能」「日本人不可」とする賃貸物件があるとの言説が画像付きで拡散しましたが、誤りです。拡散した画像は千葉県の異なる物件の画像を合成したものです。

検証対象

2024年11月12日、「日本人不可×だって‼埼玉県川口市は、もう日本ではないですね⁉」との投稿がX(旧Twitter)で拡散した。

投稿には、「川口市栄町3丁目戸建 賃貸」などと記載された物件情報と共に、屋内の2枚の画像が添付されており、「外国人のみ入居可能」「日本人不可」と書かれている。

この投稿は11月14日時点で9000件以上のリポストと300万件以上のインプレッションを獲得している。

投稿には「おかしいよね 移民の強制送還を早急に願います」「こうなったことに対する現川口市長と現埼玉県知事の責任はきわめて重い」などのコメントが付く一方で、「捏造」「わざわざ日本語で案内する意味」との指摘もある。

検証過程

日本ファクトチェックセンター(JFC)が「Google画像検索」で検証したところ、左上のキッチンの画像と右上の間取り図は千葉県習志野市の物件、下のリビングの画像は千葉県市川市の物件の画像がヒットした。

この2つの物件はどちらも住宅情報サイト「suumo」に掲載されている中古の戸建てで、販売用だ。賃貸ではない上、どちらも「外国人のみ入居可能」「日本人不可」といった条件はついていない。川口市には「栄町3丁目」という住所はあるが、賃貸物件とされる表や画像は合成されたもので、架空の物件情報だ。

判定

拡散した「埼玉県川口市の外国人のみ入居可能・日本人不可の物件」の画像は誤り。川口市とは関係のない千葉県の物件2件の画像を合成したものだ。

あとがき

埼玉県川口市には、トルコなどから来たクルド人が数多く住んでいます。トルコ政府からの迫害を逃れるためだとして難民認定申請したものの認められず、帰還しないまま「仮放免」で在住する人も少なくありません。こうしたクルド人と地元の人の間で生活習慣の違いなどから摩擦が起きていることから、クルド人に対する誹謗中傷や誤った情報が頻繁に拡散しています。

JFCでは、これまでにもクルド人問題に関連した言説を複数検証して「誤り」「不正確」と判定しています。事実に基づいて冷静に考えることが大切です。

クルド人が使用許可を取らずに 公園で勝手にお祭り? ニュース映像に虚偽のテロップを追加【ファクトチェック】
「公園の使用許可が出ていないのに、 勝手にお祭りをするクルド人」という言説が拡散しましたが、誤りです。許可をとって公園を使用しています。拡散した動画には虚偽の内容のテロップが付け加えられています。 検証対象 2024年8月15日、「公園の使用許可が出ていないのに、 勝手にお祭りをするクルド人」とする動画が拡散した。 この投稿は2024年8月19日時点で3900件以上リポストされ、表示回数は30万件を超える。「やりたい放題ですね」「政府はバカなの?」というコメントのほか、「ちゃんと埼玉県の許可を取っている。この出店の横に、県の公園職員も居た」という疑いの声もある。 検証過程 検証対象の動画の右上の字幕にあるように「一部市民の抗議も 在日クルド人 新年を祝う祭り開催」とGoogle検索すると、Yahoo!ニュースに配信された日テレNEWS の記事が見つかる。 この日テレNEWS の記事は2024年3月20日に配信された、さいたま市の秋ヶ瀬公園でのクルド人の新年を祝う伝統的なお祭り「ネウロズ」に関するものだ。「ネウロズ」は、「国を持たない世界最大の民族」と
「日本人は川口市から出ていけ」と掲げる外国人の画像? 細部に生成AIや合成などの特徴【ファクトチェック】
「日本人は川口市から出ていけ」と書いた看板を掲げる外国人の画像が拡散しましたが、誤りです。画像には生成AIを用いた特徴があり、実際には無い合成された画像です。 検証対象 2024年8月7日、「なにこれ お前らが出ていけや」というコメント付きの画像が拡散した。画像では、外国人風の男性が「日本人は川口市から出ていけ」とプラカードを掲げ、背景には「おかしのまちおか 川口店」「松屋」などの看板が見える。 投稿は2024年8月8日時点で600件超リポストされ、表示回数は6万件を超える。投稿について「遂にこの事態」「全員捕まえてください」というコメントがある一方で、「手の込んだ合成画像」という指摘もある。 検証過程 指にAI生成画像の特徴 画像を確認すると、中央に写る男性の右手が小指から人差し指までで5本あるように見える。「日本人は川口市から出ていけ!」と書かれたボードを持った人の指も小指が非常に長い。 指などの細部の描写が苦手なのは生成AIによる画像の特徴だ。 看板の画像は「貼り付け」 次に看板を見てみる。生成AIで画像を作ると、看板の文字の描写が崩
「川口のクルド団体がテロ支援」とテレビ朝日が報道? 一部カットされた動画が拡散【ファクトチェック】
「川口のクルド団体がテロ支援」とテレビ朝日が報道したかのような動画が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。当事者が反論する部分がカットされています。テレビ朝日も「テレビ朝日で放送し配信したものだが意図的な編集によるものだ」と回答しています。 検証対象 2024年8月25日、「これ普通に国際問題では?トルコの友達も驚いてる」との投稿がX(旧Twitter)で拡散した。 投稿には「ANN NEWS」の字幕が入ったニュースと思われる1分13秒の動画が添付されている。動画には「川口のクルド団体『テロ支援』トルコ政府が資産凍結決定」「クルド人2000人住む川口市 『対応できない』騒動に困惑」のタイトルテロップが入り、以下のようにニュースが読み上げられている。 女性アナウンサー:現在、およそ2000人のクルド人が暮らしているという埼玉県川口市。街を歩けば、クルド人の姿を見かけます。そのクルド人、多くはトルコからやってきたと見られています。 SNS投稿:テロ支援になってしまわないのか? SNS投稿:トルコ政府がテロ組織支援者に認定しているのに日本政府は何もしないの

検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、藤森かもめ、野上英文


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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在日朝鮮人の生活保護に年間2兆3千億円? 外国籍の受給世帯は2.8%【ファクトチェック】

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在日朝鮮人の生活保護に年間で2兆3千億円が使われているかのような言説が拡散しましたが、誤りです。日本全体の生活保護の総額は、近年、約3.5兆〜3.7兆円で推移しています。2兆3千億円だと全体の6割超ということになりますが、世帯主が外国籍の受給世帯数は全体の約2.8%にとどまります。 検証対象 拡散した言説 2025年11月1日、「在日特権の廃止に賛成の人!! 手を上げて!!」という文言付きの画像が拡散した。 画像には「日本人差別をなくそう」「年計2兆3千億円が在日朝鮮人の生活保護費として使われているのをご存じですか?」などと書いてある。 検証する理由 11月4日現在、投稿は6000回以上リポストされ、表示は14.4万件を超える。 投稿には「流石に2兆円はない」「日本の生活保護の年間予算全体が約3兆円程度であり、そのうち外国籍世帯は2〜3%、約1200億円前後しかありません」などの指摘もあるが、「在日朝鮮人の生活保護者は帰国してもらいましょう」「日本の政治家は日本人を何だと思っているんだろう」など同調するコメントも多い。 検証過程 近年の日

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クマによる人身被害は増えていないのに騒いでいる? 死者数はすでに過去最多【ファクトチェック】

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クマによる人身被害の数を示すグラフとともに「報道が過熱している」という趣旨の情報が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。拡散したグラフの2025年度分の数値は9月末までの6か月分のデータです。2025年4~10月のクマ被害による死者は過去最多の12人。人身被害者数も過去最多の2023年度と同水準で、被害や目撃情報の増加とともに報道も増えています。 検証対象 拡散した言説 2025年11月4日、「マスコミの報道が今年だけ過熱していないか?」という文言とともに「クマ類による人身被害」というグラフが付いた投稿がXで拡散した。 検証する理由 この投稿を引用している人の中には「やっぱりそうだったか。テレビ見てると今年だけ異常に熊被害が多いように感じるが、実際はそうじゃない。報道が多いだけ」や「メディアにとって、人々の関心をクマに向けておきたい何かがあるのだろうね」など、2025年度のクマの被害が少ないかのような反応が多数ある。 検証過程 グラフは2025年9月末時点までの数字 拡散した棒グラフには「Yahoo!ニュースオリジナル」「出展:環境省(2

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高市首相の偽広告、警察庁などが注意喚起 投資を促す典型的なオンライン詐欺

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高市早苗首相が投資を促す偽広告がインターネット上で拡散していると、自民党や警察庁が注意喚起をしています。ソーシャルメディア上の広告機能を使った典型的なオンライン詐欺の手口です。 YouTubeに高市首相の偽広告 X、Facebook、YouTubeなど、インターネットのプラットフォーム上にはこれまでも多数の偽広告が広がっている。その多くは著名人や実在するニュースサイトを偽装して投資を呼びかけたり、個人情報を取得したりしようとする。 今回拡散したのは、高市氏が投資を呼びかけるという内容だ。実際には高市氏は関係がない。 上記のリンクは現在、「孫正義氏と日本の主要機関が新たな投資プラットフォームを発表」という偽の記事につながっている。偽記事を掲載しているサイトにはNHK WORLDのロゴが付いているが、偽物だ。 自民党広報や警察庁もSNSで注意喚起 自民党広報は、10月24日に公式Xアカウントで「これらの広告は高市総裁および自由民主党とは一切関係がありません」「広告を見かけても、👉 絶対にアクセスしないで下さい」などと注意を呼び掛けている(自民党広報@j

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ビル・ゲイツ氏が気候変動対策から撤退? 撤退ではなく新たな方法論を提言【ファクトチェック】

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マイクロソフト社の共同創業者ビル・ゲイツ氏が、気候変動対策から撤退するかのような投稿が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。ゲイツ氏は「気候変動は重要な問題だが、気温上昇の抑制を最優先にするのではなく、人類の福祉を向上する施策の一環と位置付けるべき」と述べており、気候変動対策からの撤退を表明したという事実はありません。 検証対象 拡散した言説 2025年10月30日、「ビル・ゲイツ、気候変動活動(気候変動デマとも言う)撤退を宣言」などの文言とともに、ゲイツ氏のインタビュー動画が拡散した。 検証する理由 11月4日現在、投稿は4300回以上リポストされ、表示は184.3万件を超える。 投稿には「気候変動対策を最優先すべきではない、という位置づけを表明した事が撤退にはならないだろ」などの指摘もあるが、「気候変動ビジネスが思いのほか金にならんかったんやね」「ビル・ゲイツは、二酸化炭素を減らすには牛のゲップをやめさせる必要があると言って、代替肉の培養を進めようとまでしたヤツだ。この急旋回はかなり不自然だ」など同調するコメントも多い。 検証過程 添

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ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

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日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は11月28日(土)午後5時~6時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei1128.peatix.com/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にど

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理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

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