仏政府「第三次世界大戦が来る」と国民に食料備蓄指示? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

フランス政府が「第三次世界大戦が来る」として国民に食料備蓄を指示したとする投稿が拡散しましたが、誤りです。拡散した投稿はまとめサイトのXアカウントで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているのみです。
検証対象
2025年3月25日、「フランス政府、国民に食糧備蓄を指示『今年第三次世界大戦が来る』」という投稿が拡散した。この投稿は2025年3月31日までに296万回以上の閲覧回数と4500件以上のリポストを獲得している。
検証過程
検証対象のリンクは、まとめサイト「ツイッター速報〜BreakingNews」の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「フランス政府、国民に食糧備蓄を指示『今年第三次世界大戦が来る』」で、The People’s Voice(TPV)が2025年3月20日に配信した記事「France Orders Citizens to Stockpile Food: “World War 3 Is Coming This Year”」を引用元にしている。
TPVは「大手メディアの扱わないニュースを扱うことで読者に真実を伝える」と自称するサイトで、米国に拠点を置く。JFCは過去にも、TPVが発信した新型コロナ関連の情報をファクトチェックして「誤り」と判定している(記事1、記事2)。
TPVは、CNNの記事を引用し、「フランス政府は、市民に対して年末までに食料備蓄と第三次世界大戦に備えることを命じる緊急指令を発出した。これは、テロ攻撃、パンデミック、サイバー攻撃、さらには放射性降下物などに直面した際の対処法が詰め込まれた赤裸々な20ページのサバイバルガイドにまとめられている」と述べている。
JFCは引用されたCNNの2025年3月19日付の記事「France to distribute ‘survival manual’ to prepare households for emergencies – including armed conflict(フランスが武力紛争を含む緊急事態に備えて「サバイバル・マニュアル」を各世帯に配布へ)」を確認した。
記事によると、フランス政府は「差し迫った危機」に備えてサバイバルマニュアルの配布を計画しているという。差し迫った危機には、自然災害、サイバー攻撃、パンデミック、テロ攻撃や武力衝突などが想定されているが、フランソワ・バイル首相の広報によるCNNへの説明に「第三次世界大戦」の文言はない。
このマニュアルは「さまざまな危機への市民の弾力性を高めることの促進」が目的で、市民に対策を命じるものではない。マニュアルでは、すべての世帯が飲料水(6リットル)、食品12缶、停電に備えてバッテリーや懐中電灯を含む「サバイバルキット」などを用意することを勧めている(CNN)。
判定
拡散した投稿はまとめサイトによるもので、引用しているTPVの記事は、その元ネタであるCNNの記事を正確に引用していない。CNNでは武力衝突を含む緊急時の対策を推奨するマニュアルとして伝えられていたものが、TPVでは市民に食料備蓄や戦争に備えることを政府が命じるマニュアルになっている。よって、「フランス政府が『第三次世界大戦が来る』として国民に食料備蓄を指示」は誤りと判断した。
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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