バイデン大統領「食べ物と飲み物は汚染され、全ての戦争は嘘に基づいている」と発言?【ファクトチェック】

バイデン大統領「食べ物と飲み物は汚染され、全ての戦争は嘘に基づいている」と発言?【ファクトチェック】

アメリカのバイデン大統領が「あなたのお金は偽物」「食べ物と飲み物は汚染され、全ての戦争は嘘に基づいてる」などと発言する動画が拡散しましたが、誤りです。動画はAIで加工されています。

検証対象

2024年3月4日、バイデン大統領が「あなたのお金は偽物」「食べ物と飲み物は汚染され、全ての戦争は嘘に基づいてる」「あなたの国は小児性愛者の集団によって運営されている」と発言する動画が英語圏を中心に拡散した。

この投稿は2024年3月8日時点で1700回以上リポストされ、表示回数は65万件を超える。その後、日本語字幕付きの動画も拡散し、「ついに言いましたか」というコメントが付く一方で、「フェイク?」と指摘する投稿もある。

検証過程

拡散した動画は14秒間。バイデン大統領は英語で以下のように語っている。

「あなたのお金は偽物で、食べ物と水は汚染されており、全ての戦争は嘘に基づき、あなたの国は小児性愛者の集団によって運営されています。あなたはクソみたいな事に気を取られ、それについて何もすることができません」

この動画はいつ撮影されたものなのか。動画右上のロゴを元に「Biden The Sun」でYoutube検索すると2021年3月26日にイギリスメディア「The Sun」が投稿した「Joe Biden completely forgets what he’s talking about in excruciating press conference(ジョー・バイデン、耐え難い記者会見で自分が話していることを完全に忘れる)」という動画が見つかった。拡散した動画の0秒時点、The Sunの動画の3秒時点から同時に再生し比較すると、背景、バイデン大統領の動き、右上のロゴなどが一致している。

The Sunの動画(1分42秒)は、バイデン大統領が記者からのアメリカ議会に関する質問に対して、回答に戸惑う様子が写っている。「私はかなり現実的な男です」「私は物事をやり遂げたい」などと話しているが、拡散した動画にある「あなたのお金は偽物」などの発言は全くない。

動画の同じ箇所を静止画にして比較すると、下の拡散した画像よりも上のThe Sunの画像の方が、バイデン大統領の口角が大きく自然に上がっていることがわかる。また、拡散した動画は画質が悪い。

こうしたことから、拡散した動画は偽造した語りをThe Sunの映像に入れてAIの加工で唇を動かしたものだと分かる。

判定

バイデン大統領が「食べ物と飲み物は汚染され、全ての戦争は嘘に基づいている」と発言する動画はAIによる加工で誤り。

検証:木山竣策
編集:古田大輔


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

経営ビザ取得者の「9割が不正」? 疑いがある事業者に対する調査【ファクトチェック】

経営ビザ取得者の「9割が不正」? 疑いがある事業者に対する調査【ファクトチェック】

厳格化された経営・管理ビザについて「外国人事業者の内9割が、経営実態のない会社、日本への移住目的、高度医療を受けるため悪用していた」という投稿がXで拡散しましたが、不正確です。全体の9割が不正だったかのように読めますが、不正が9割というのは「疑わしい事業者約300件を対象にした調査結果」で、経営ビザ取得者の9割という意味ではありません。 検証対象 拡散した投稿 2026年5月10日、「経営・管理ビザの厳格化により申請が96%減少。また既存の会社を調査した結果、9割が不正。つまり外国人事業者の内9割が、経営実態のない会社、日本への移住目的、高度医療を受けるための悪用していた」という投稿がXで拡散した。投稿は、ニュース番組の動画も添付している。 検証する理由 6月2日現在、この投稿は1万回以上リポストされ、表示回数は66万回を超える。投稿について、「『9割が不正』は扱いに注意がいる」という指摘もあるが、「9割不正って大問題ですよ」「これが外国人が集まる理由」などと誤解しているコメントも多いため、検証する。 検証過程 経営・管理ビザの厳格化 政府

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
インドで巨大な「雹(ひょう)」が降った? 動画は生成AI【ファクトチェック】

インドで巨大な「雹(ひょう)」が降った? 動画は生成AI【ファクトチェック】

「インドの雹 スケールがデカすぎる」という文言とともに、氷の塊のようなものが街を壊す動画がXで拡散しましたが、現実の映像ではありません。動画はAIで生成の特徴を多く含んでいます。 検証対象 拡散した投稿 2026年5月25日、「インドの雹 スケールがデカすぎる」という文言とともに、両手で抱えきれないほどの大きさの氷の塊が降り、車や建物を壊す動画がXで拡散した。 検証する理由 5月29日現在、この投稿は1200件以上リポストされ、表示回数は397万回を超える。投稿には「とても危険」「実際に研究があったはず」というコメントの一方で、「これホンマ?」という指摘もある。 検証過程 15秒間の動画には、不自然な描写が多く含まれている。 例えば0:02から0:03にかけて、大きな氷の塊が屋根を壊す場面があるが、屋根は氷が落下する前に崩れている。また0:04から0:05では、白い車のボンネットに落ちた氷の塊が、建物と車のわずかな間へ吸い込まれるように消えている。  ツールもAIの可能性が高いと判定 「Hive Moderation(Hive AI D

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)
ドイツでアジアの偽情報対策の関係者が集まる会合/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

ドイツでアジアの偽情報対策の関係者が集まる会合/JFC記事・動画や関連記事【今週のファクトチェック】

ドイツ外務省がアジアのファクトチェッカーや偽情報対策の関係者を招くプログラムでケルンに来ています。1週間、ボンやベルリンなどドイツ各地を周り、偽情報対策について議論します。 偽・誤情報は簡単に国境を超えます。特に自動翻訳が一般化したことで、言語の壁はさらに低くなりました。国家レベルで他国に世論を操作する「影響工作」もあれば、オンライン詐欺などの国際的な犯罪もあります。 検閲や情報統制のような手法ではなく、言論の自由や人権を尊重しながら、健全な情報空間を守るにはどうしたらいいか。知見を共有する狙いです。 参加者は韓国、台湾、タイ、フィリピン、インドネシア、モンゴル、日本からは私(古田)が参加しています。ドイツでの訪問先は外務省、メディア規制当局、公共放送、ファクトチェック団体、研究機関など様々です。 議論のテーマもファクトチェックの手法にとどまらず、メディアリテラシー教育、海外からの影響工作を調査するナラティブ分析、法的な規制など多岐に及ぶでしょう。 アジアの関係者が集まる場としては、これまで、台湾、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、韓国での会合に参加した

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
湖に浮く黄色い粉は「ウランの放射性物質」? 元動画の投稿者は「花粉」【ファクトチェック】

湖に浮く黄色い粉は「ウランの放射性物質」? 元動画の投稿者は「花粉」【ファクトチェック】

湖に浮いた黄色い粉を撮影した動画について「ウランの放射線物質」と主張する投稿が拡散しましたが誤りです。黄色い粉はシラカバ花粉で、放射性物質ではありません。元の動画を投稿したユーザーも「この黄色はシラカバ花粉」と説明しており、放射性物質を疑って撮影したものではありませんでした。 検証対象 拡散した投稿 2026年5月25日、黄色い粉のようなものが岸に流れ着いている動画に「普通に化学総研に持って行き、成分を調べれば1発ですね。ウランの放射線物質なら直ぐに分かります」と書いた投稿が拡散した。 検証する理由 5月29日現在、この投稿は700件以上リポストされ、表示回数は31万回を超える。投稿について「放射能汚染に対する備えも必要になるかもしれません」というコメントの一方で「ウランの比重は水より重いから違うと思う」という指摘もある。 黄色い粉を巡る投稿はほかにも「黄色い粉の正体は放射性物質のようです☢️⚠️謎の風邪とも関連があるかもしれません🏥🏴‍☠️」「福岡に降り注いだ『謎の黄色い粉』花粉でもなく黄砂でもない。そしてその後の『謎の風邪』」という投稿が拡

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は6月27日(土)午後4時~5時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0627.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)