ブッシュ元大統領がテレビの生中継中に亡くなる? 映像は1992年のもの【ファクトチェック】

ブッシュ元大統領がテレビの生中継中に亡くなる? 映像は1992年のもの【ファクトチェック】

ブッシュ元大統領がテレビの中継中に亡くなったという動画付き言説が拡散しましたが、誤りです。動画は1992年に日本で開かれた夕食会でジョージ・H・W・ブッシュ大統領が倒れた際に撮影されたものです。

検証対象

2024年8月13日、「訃報 速報 ブッシュ大統領が、テレビの生中継中にお亡くなりになりました」という動画付き言説が拡散した。動画には「That time President Bush Died on Live TV. To be replaced by clone?(その時、ブッシュ大統領はテレビの生放送で亡くなりました。クローンに置き換えるために?)」と書かれ、倒れる男性が救護される様子が映っている。

2024年8月16日時点でこの投稿は280件以上リポストされ、表示回数は418万件を超える。投稿について「今日ですか?」「岸田と同じタイミング?」などのコメントがついている。

検証過程

動画は1992年に撮影

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、動画がいつ撮影されたものかを確認した。

動画の一部を切り出しGoogle画像検索すると、18年前にYouTubeに一般ユーザーが投稿した動画がみつかる。概要欄には「1992年1月8日: ブッシュ大統領が日本訪問中に体調を崩し、宮澤喜一首相に嘔吐」とある。

1992年の夕食会とは

1992年の夕食会について検索すると日本テレビの記事「“1992年の秘話”明らかに 夕食会で倒れた米大統領「天国にいるような…」 外交文書公開」がみつかる。1992年1月、宮澤首相(当時)が主催した夕食会でジョージ・H・W・ブッシュ米大統領(当時)が嘔吐し、倒れたという内容だ。

会場は一時騒然としたが、5分ほどして立ち上がり、「ちょっと皆さんの注意を引こうと思って」とジョークを飛ばしたという。

ブッシュ親子のその後は

拡散した言説には「ブッシュ大統領が」とあるが、共に大統領となったブッシュ親子のどちらかは明示していない。映像に映っている父のジョージ・H・W・ブッシュ元大統領は2018年に94歳で死去した。

息子のジョージ・W. ブッシュ元大統領の訃報を報じている報道機関はない。

2024年7月、トランプ前大統領の暗殺未遂事件に対しジョージ・W. ブッシュ元大統領はXアカウント「George W. Bush Presidential Center」から声明を出している。このアカウントも訃報については一切声明がない。

判定

映像は1992年に撮影されたもので、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領は2018年に既に亡くなっている。また、息子のジョージ・W.ブッシュ元大統領については、関係するアカウントや世界の報道機関は訃報を報じていない。よって「訃報 速報」とした動画の言説は誤りと判定した。

検証:木山竣策
編集:古田大輔

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。検証記事を広げるため、XFacebookYouTubeInstagramでのフォロー・拡散をよろしくお願いします。毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンからどうぞ。

また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報について質問すると、AIが関連性の高い過去のJFC記事をお届けします。詳しくはこちらの記事を

もっと見る

USAIDが日本のメディアを操作?/女性へのAED使用で訴えられる?【今週のファクトチェック】

USAIDが日本のメディアを操作?/女性へのAED使用で訴えられる?【今週のファクトチェック】

「女性にAEDを使うと訴えられる」という情報がたびたび拡散します。ほぼありえないリスクを考慮して、女性の命を危険にさらすことになります。アメリカから広がったUSAIDデマが日本にも。背景も含めて解説しました。 ✉️ 日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週の解説記事 繰り返し拡散する「女性にAED使用で訴えられる」 警察や弁護士の解説による正しい知識で救命を 男性が女性にAEDを使うと「性被害などで訴えられるリスクがあるので、使わない方がよい」と呼びかける情報が、何度も拡散しています。 そのためにAED使用をためらってしまうと、女性の命を脅かす事態を招きかねません。日本ファクトチェックセンター(JFC)は警察や専門家への取材で、AED使用をめぐる現状をまとめました。 繰り返し拡散する「女性にAED使用で訴えられる」 警察や弁護士の解説による正しい知識で救命を男性が女性にAEDを使う

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
兵庫・迎山県議 「私を批判すれば国民にツケが回る」と発言? コメントを歪曲【ファクトチェック】

兵庫・迎山県議 「私を批判すれば国民にツケが回る」と発言? コメントを歪曲【ファクトチェック】

兵庫県の迎山志保県議が「私を批判すれば国民にツケが回る」などと発言したという情報が拡散しましたが、不正確です。公人に向けた批判に対する迎山県議のコメントを歪曲したものです。 検証対象 迎山県議が「私を批判すれば、やがては国民にツケがまわる」などと言ったかのような情報が繰り返し拡散している(例1、例2)。 2024年11月の投稿は「迎山しほ議員、斎藤知事を辞任させておいて 私を批判するな!批判を続ければ政治は劣化する!国民にツケが回るからな!この態度は流石にヤバくないか?」という内容で、斎藤知事を擁護し、迎山議員を批判する内容だ。 この投稿は2025年2月18日にも「迎山しほ議員『私を批判すれば、やがては国民にツケがまわる』国民にこんな事言う県議初めて見ました」という文言と共に再び拡散している。 これらの投稿には迎山県議の「全てが公人ということでさらされるのが当たり前 批判されるのが当たり前」「政治の世界もどんどんと結果的には劣化をしていく」「国民にツケが回っていく」などのコメントが抜き出された画像が添付されている。 検証過程 画像にある「報道特集」

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「USAIDが日本メディアを操作」 デマ拡散の背景にある報道不信

「USAIDが日本メディアを操作」 デマ拡散の背景にある報道不信

「USAIDは世界中のメディアに資金提供」「言論操作している」などの情報が世界中に拡散しました。その多くはすでに検証されていますが「日本メディアも関係している」というリストまで出回りました。何が事実で何が誤りか。デマが拡散する背景も含めて解説します。 きっかけはトランプ政権によるUSAID批判 発端は1月に就任したトランプ大統領がアメリカ政府の対外援助を管轄するUSAID(アメリカ国際開発庁)を通じた対外援助を90日間停止する大統領令に署名したことです。トランプ政権が掲げる「アメリカ・ファースト」に沿った動きでした。 2月に入り、トランプ大統領や政府効率化省トップについたイーロン・マスク氏は、USAIDを批判する発言を繰り返しました。 トランプ氏の発言 「急進的な狂人たちによって運営されている」(CNN, 2月3日) 「USAIDやその他の機関で何十億ドルもの資金が盗まれ、その多くが民主党に有利な報道をするための『報酬』としてフェイクニュースメディアに支払われているようだ」(CBS, 2月13日) マスク氏の発言 「USAIDは犯罪組織だ」(CN

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
兵庫・百条委員会が議事録をすべて破棄? 県議会サイトで公開【ファクトチェック】(追記あり)

兵庫・百条委員会が議事録をすべて破棄? 県議会サイトで公開【ファクトチェック】(追記あり)

兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラの疑いなどで告発された問題で、調査をしている県議会百条委員会が、議事録を公開せずにすべて破棄したという情報が拡散しましたが、誤りです。議事録は県議会のウェブサイトで公開されています。 検証対象 2025年2月18日、兵庫県議会の百条委に関して、「百条委員会の議事録は全部破棄ってホントですか? 全部公開されずに破棄? 兵庫県議員アタマオカシイやろ」という情報が拡散した。 この情報に対して「百条委員会に使った金は委員に全部払ってもらうしかないな」「そもそも百条委員会がデマだったということか」などのコメントがついているほか「兵庫県文書問題会議録で全部見ることできるけど」と疑問を投げかけるものがある。 検証過程 兵庫県議会は2024年6月13日、地方自治法百条に基づいて斎藤知事のパワハラ疑惑などを調べる「文書問題調査特別委員会(通称:百条委員会)」を設置した。 6月14日から始まった委員会は、2025年1月27日まで計15回開かれている。県議会は、12月25日の分を除く、計14回分を 議会検索システムで公開している。「会議録の閲

By 宮本聖二