トランプ大統領、消費税やガソリン税などを撤廃しない国は関税を10倍に?まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

トランプ大統領、消費税やガソリン税などを撤廃しない国は関税を10倍に?まとめサイトによるもの【ファクトチェック】

米国のトランプ大統領が「消費税やガソリン税、自動車重量税を撤廃しない国は関税を10倍にすると発表した」と主張する投稿が複数拡散しましたが、誤りです。拡散元はまとめサイトで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。

検証対象

2025年2月20日、トランプ大統領が「消費税やガソリン税、自動車重量税を撤廃しない国は関税を10倍にすると発表した」と主張する投稿が複数拡散した(投稿1投稿2投稿3)。

投稿には「日本がちゃんとトランプさんの言う事聞いたら即効景気良くなる!」「トランプ大統領が日本の首相だったらよかったのに」などのコメントがつく一方で「ソースは」と指摘する声もある。

検証過程

拡散した投稿のリンク先は、いずれもまとめサイト「Tweeter Breaking News — ツイッ速!」の同一の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「『V8を讃えよ』トランプさん消費税とガソリン税と自動車重量税を撤廃しない国は関税10倍にすると発表 」から取り、FNNプライムオンラインが2025年2月19日に配信した記事「『25%程度』自動車関税が現行の“10倍”に…トランプ大統領が4月2日発表へ 日本も対象なら“大打撃”不可避」が引用元だとしている。

FNNプライムオンラインの記事は、トランプ大統領が2月18日の米国フロリダ州での会見で、米国に輸入される自動車への関税率について「25%程度になると思う」と述べたという内容だ。現在の関税は2.5%のため実際に引き上げが適用されれば10倍に引き上げられることになる。トランプ大統領は関税引き上げの対象に日本も含むかどうかなどの詳細は、4月2日に発表するとしている。

記事は「トランプ大統領が米国に輸入される自動車の関税率を現行の10倍となる25%へ引き上げることを表明」と報じているが、消費税・ガソリン税・自動車重量税の撤廃などには言及していない。

判定

「トランプ大統領が消費税やガソリン税、自動車重量税を撤廃しない国は関税を10倍にすると発表した」との主張は誤り。トランプ大統領が米国に輸入される自動車の関税を現行の10倍へ引き上げる方針を示したのは事実だが、日本の税制には言及していない。

あとがき

日本ファクトチェックセンター(JFC)では、これまでにもまとめサイトから拡散した情報を多数検証し、その全てを「誤り」及び「不正確」と判定しています。

太宰府天満宮が「日本遺産」取り消し、環境保護を優先したから? まとめ記事によるもの【ファクトチェック】
福岡県の太宰府天満宮が、訪日外国人を排除して環境保護を優先したため、日本遺産から取り消されたという情報が拡散しましたが、誤りです。太宰府天満宮を含む地域が2025年2月に日本遺産から外されたのは事実ですが、天満宮単体ではなく、理由もインバウンド観光客の排除ではありません。 検証対象 2025年2月5日、「太宰府天満宮が『日本遺産』取り消し、インバウンド観光客を排除し環境保護を優先したから」という情報が拡散した。 2025年2月6日現在、この投稿は9800件以上リポストされ、表示回数は450万回を超える。投稿について「太宰府天満宮に拍手」「外人が来ないなら清々する」というコメントの一方で「捏造です」というコミュニティノートでの指摘もある。 検証過程 日本遺産と太宰府天満宮 日本遺産とは、個々の遺産ではなく、地域の有形・無形の遺産を一体的に指定してPRするもので、文化庁が認定する(日本遺産ポータルサイト)。 現在、文化庁の日本遺産には104件が登録されている(日本遺産ポータルサイト「すべてのストーリー」)。 太宰府天満宮を含む太宰府市をはじめとする
チェジュ航空機事故で韓国警察が「日本によるテロ」と捜査?まとめサイトによるもの【ファクトチェック】
韓国の務安(ムアン)国際空港で起きたチェジュ航空機事故をめぐり、「韓国警察が日本によるテロの可能性があるとして捜査」という情報が拡散しましたが、誤りです。見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。韓国法務部(日本の法務省に相当)に日本の実在する弁護士をかたった爆破予告が届き、警察が捜査に乗り出したという報道はありますが、チェジュ航空機の事故を日本によるテロとして捜査しているわけではありません。 検証対象 2024年12月31日、複数のまとめサイトで「【速報】済州航空事故 韓国警察が日本によるテロの可能性があるとして総力を上げて捜査開始」との記事が配信された(例1、例2、例3)。まとめサイトや一般ユーザーがXで記事へのリンクを共有して拡散した例もある(例4、例5、例6)。 「都合の悪いものは全て日本のせいにする 自分らの設備と安全管理の杜撰さを認めなくないだけ」「流石、韓国人だな。魔女裁判じみた事をまだ信じてるとは。他責思考の極み」などのコメントが寄せられる一方で、「現地のニュース内容そうじゃない」といった指摘もある。 検証過程 務
2025年1月から軽自動車の自賠責保険、修理費用が170%値上げ? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】
2025年1月から軽自動車の自賠責保険170%、車検費用は120%、修理費用が170%値上げという情報が拡散しましたが、誤りです。情報はまとめサイトの記事を引用したもので、情報のソースはありません。 検証対象 2024年12月16日、自動車保有者の負担の国別比較とする棒グラフと共に、「【悲報】2025年1月から軽自動車の維持費が大幅値上げ」「自賠責保険証170%、車検費用平均120%、修理費用平均170%値上げ、10年落ちの軽自動車は更に自賠責保険料増額」という情報が拡散した。 2024年12月26日現在、この投稿は2万件以上リポストされ、表示回数は300万回を超える。投稿について「軽自動車のメリットがなくなっていく」「車ないと生活できないのに」というコメントの一方で「これで合ってるかな?」という指摘もある。 検証過程 ソースのないまとめサイトを引用 検証対象のリンクはまとめサイト「NewsSharing」の記事だ。2つのX投稿を引用している。 1つは2024年12月15日にXユーザーが投稿した「軽自動車の維持費こんなに値上げすんのか?」という投
トルコ・エルドアン大統領が「クルドを絶滅させる」と発言? まとめサイトによるもの【ファクトチェック】
トルコ・エルドアン大統領が「クルドを絶滅させる」と発言したという情報が拡散しましたが、不正確です。拡散した投稿は、まとめサイトのXアカウントで、見出しは掲示板サイトのスレッドタイトルを引用しているだけです。引用元とされるサイトは、円と外貨の為替レートを表示するもので、エルドアン大統領の発言に関する情報ではありません。 検証対象 2024年12月25日、「トルコ、エルドアン大統領『ク◯ドを絶滅させる』」という情報が拡散した。 2024年12月27日現在、この投稿は600件以上リポストされ、表示回数は7万回を超える。投稿について「是非ともお願いします」「流石」というコメントの一方で「んなわけあるか」という指摘もある。 検証過程 まとめサイトと添付記事の内容が不一致 検証対象のリンクは、まとめサイト「TweeterBreakingNews-ツイッ速!」の記事だ。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「トルコ、エルドアン大統領『クルドを絶滅させる』」で、ソースと書かれているリンクは為替レートのサイトでエルドアン大統領に関する情報は一切ない。 関連

まとめサイトから拡散する情報を一々検証する必要があるのかという意見もあります。しかし、そのセンセーショナルな見出しから、誤・偽情報を拡散してしまう人が数多く存在することは事実です。今回の検証対象でも、いずれも数千回以上のリポストを獲得し、見出しを信じていることがわかるコメントを書き込む人も多くいました。

JFCでは信頼できる情報源の見分け方を解説しています。

フェイクニュースと情報源 国の隠蔽やメディアの誤報もある中で信頼できるのは【JFCファクトチェック講座 理論編7】
日本ファクトチェックセンター(JFC)のファクトチェック講座です。 理論編第6回は国際的なファクトチェックのルールや偽・誤情報が拡散する背景にもある「ナラティブ」についてでした。第7回は信頼できる情報源について説明します。 (本編は動画でご覧ください。この記事は概要をまとめています) インターネット情報の信頼性と判断 ファクトチェックや偽・誤情報に関して大学などで講義をしていると、必ず質問されるのが「絶対に間違えない信頼できる情報源はどこですか?」 残念ながら、絶対に間違えず、中立・客観・公平で、あなたに必要なものが全て揃っているような情報源は存在しません。 情報発信のプロである新聞やテレビなどのマスメディアも誤報を流します。国が情報を隠蔽したり、改ざんしたりした事例もあります。 全ての意思決定は情報から しかし、国も報道機関も何もかも信用できないとなると、日々の生活に困ります。 明日の天気、事件や災害時の対応、家をどこに買うか、何に投資するか、ワクチンを打つか、どうすれば健康になれるか、将来のために何を勉強しようか、誰に投票しようか...。

検証:リサーチチーム
編集:古田大輔、宮本聖二、藤森かもめ、野上英文

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

ファクトチェックやメディア情報リテラシーについて学びたい方は、こちらの無料講座をご覧ください。ファクトチェッカー認定試験や講師養成講座も提供しています。

理論から実践まで学べるJFCファクチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験
JFCファクトチェッカー認定試験 教材と申し込みはこちら
日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や
JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は12月22日で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei1222.peatix.com/event/4221579/view 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的に

もっと見る

K2シロップは添加物が多く副作用が心配だから服用しないほうがいい?安全性は証明されている【ファクトチェック】

K2シロップは添加物が多く副作用が心配だから服用しないほうがいい?安全性は証明されている【ファクトチェック】

赤ちゃんに起こりやすい出血を防ぐための薬・K2(ケーツー)シロップの添加物や副作用を心配し、飲まないよう呼びかける声がXで複数拡散していますが、誤りです。同様の言説は過去にも繰り返し拡散していますが、K2シロップはビタミンKが足りないことで起こる出血症の予防効果が高い薬で、確かに添加物は使われていますが、その安全性は証明されています。 検証対象 2025年1月14日以降、K2シロップに含まれる添加物や化学物質の影響や、副作用を心配する声がXで複数拡散した(例1、例2、例3)。 投稿には「ほぼ毒しか入っていない」というコメントの一方で、「誤った情報を流布するのを今すぐやめて下さい」などの批判もある。 検証過程 K2シロップとは 新生児はビタミンKの不足による出血症を起こしやすく、頭蓋内出血など致命的な事例もある。K2シロップは1mLあたり、ビタミンK2を2mg含み、予防薬として普及。現在は生後3ヶ月になるまで週に1回、計13回飲む「3ヶ月法」が推奨されている(日本小児科学会 新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言)。 添加物は危

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
USAIDが日本のメディアを操作?/女性へのAED使用で訴えられる?【今週のファクトチェック】

USAIDが日本のメディアを操作?/女性へのAED使用で訴えられる?【今週のファクトチェック】

「女性にAEDを使うと訴えられる」という情報がたびたび拡散します。ほぼありえないリスクを考慮して、女性の命を危険にさらすことになります。アメリカから広がったUSAIDデマが日本にも。背景も含めて解説しました。 ✉️ 日本ファクトチェックセンター(JFC)がこの1週間に出した記事を中心に、その他のメディアも含めて、ファクトチェックや偽情報関連の情報をまとめました。同じ内容をニュースレターでも配信しています。登録はこちら。 今週の解説記事 繰り返し拡散する「女性にAED使用で訴えられる」 警察や弁護士の解説による正しい知識で救命を 男性が女性にAEDを使うと「性被害などで訴えられるリスクがあるので、使わない方がよい」と呼びかける情報が、何度も拡散しています。 そのためにAED使用をためらってしまうと、女性の命を脅かす事態を招きかねません。日本ファクトチェックセンター(JFC)は警察や専門家への取材で、AED使用をめぐる現状をまとめました。 繰り返し拡散する「女性にAED使用で訴えられる」 警察や弁護士の解説による正しい知識で救命を男性が女性にAEDを使う

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
兵庫・迎山県議 「私を批判すれば国民にツケが回る」と発言? コメントを歪曲【ファクトチェック】

兵庫・迎山県議 「私を批判すれば国民にツケが回る」と発言? コメントを歪曲【ファクトチェック】

兵庫県の迎山志保県議が「私を批判すれば国民にツケが回る」などと発言したという情報が拡散しましたが、不正確です。公人に向けた批判に対する迎山県議のコメントを歪曲したものです。 検証対象 迎山県議が「私を批判すれば、やがては国民にツケがまわる」などと言ったかのような情報が繰り返し拡散している(例1、例2)。 2024年11月の投稿は「迎山しほ議員、斎藤知事を辞任させておいて 私を批判するな!批判を続ければ政治は劣化する!国民にツケが回るからな!この態度は流石にヤバくないか?」という内容で、斎藤知事を擁護し、迎山議員を批判する内容だ。 この投稿は2025年2月18日にも「迎山しほ議員『私を批判すれば、やがては国民にツケがまわる』国民にこんな事言う県議初めて見ました」という文言と共に再び拡散している。 これらの投稿には迎山県議の「全てが公人ということでさらされるのが当たり前 批判されるのが当たり前」「政治の世界もどんどんと結果的には劣化をしていく」「国民にツケが回っていく」などのコメントが抜き出された画像が添付されている。 検証過程 画像にある「報道特集」

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)
「USAIDが日本メディアを操作」 デマ拡散の背景にある報道不信

「USAIDが日本メディアを操作」 デマ拡散の背景にある報道不信

「USAIDは世界中のメディアに資金提供」「言論操作している」などの情報が世界中に拡散しました。その多くはすでに検証されていますが「日本メディアも関係している」というリストまで出回りました。何が事実で何が誤りか。デマが拡散する背景も含めて解説します。 きっかけはトランプ政権によるUSAID批判 発端は1月に就任したトランプ大統領がアメリカ政府の対外援助を管轄するUSAID(アメリカ国際開発庁)を通じた対外援助を90日間停止する大統領令に署名したことです。トランプ政権が掲げる「アメリカ・ファースト」に沿った動きでした。 2月に入り、トランプ大統領や政府効率化省トップについたイーロン・マスク氏は、USAIDを批判する発言を繰り返しました。 トランプ氏の発言 「急進的な狂人たちによって運営されている」(CNN, 2月3日) 「USAIDやその他の機関で何十億ドルもの資金が盗まれ、その多くが民主党に有利な報道をするための『報酬』としてフェイクニュースメディアに支払われているようだ」(CBS, 2月13日) マスク氏の発言 「USAIDは犯罪組織だ」(CN

By 古田大輔(Daisuke Furuta)