「心不全の原因はサウナブーム」は誤り【ファクトチェック】

「心不全の原因はサウナブーム」は誤り【ファクトチェック】

サウナブームと心不全などの増加を結びつける言説が繰り返し拡散しています。今回拡散したのは「心不全が謎の急増、日本では120万人突破、原因はサウナブームか」というまとめ記事で、誤りです。根拠としているのは東京新聞の記事ですが、その記事はサウナに言及していません。

検証対象

2023年12月13日、「心不全が謎の急増、日本では120万人突破、原因はサウナブームか」との投稿まとめ記事が拡散した。この投稿は2023年12月21日時点で2300回リポストされ、表示回数は300万回にのぼる。

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返信欄には「サウナは我慢大会じゃない」「サウナは心臓の負担すごそう」とサウナ利用への危機感を示す声の一方で、「誤解を生むポスト」「記事読んでサウナの文字を探したがタイトルにしか無くて困惑」との指摘もある。

検証過程

日本循環器学会と日本心不全学会は、心不全を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義した上で「医学の専門用語としては、『病気』ではありませんが、 心臓が悪いことを総合的に表現する言葉として、ここでは 『病気』と表現しました」と補足している。

今回拡散したまとめ記事のタイトルは「心不全が謎の急増」「原因はサウナブームか」となっている。また、根拠として東京新聞の記事「<心不全パンデミック>事例編 心臓の機能 徐々に悪化 高齢化で患者増加予想」を引用している。

東京新聞の記事は、心不全の患者が国内に120万人おり、高齢化で今後激増すると指摘し、症状や回復例などを紹介しているが、サウナには全く言及していない。

判定

拡散した言説は東京新聞の記事を根拠としているが、元記事は心不全の急増の背景に高齢化をあげる一方でサウナに全く言及していない。よって誤りと判定する。

あとがき

日本ファクトチェックセンター(JFC)は「『サウナで年間1万7000人が死亡している』は誤り」というファクトチェック記事を2023年8月に公開しています。

こちらの拡散はツイッター速報のまとめ記事を元にしていましたが、根拠とした読売新聞の記事には、今回と同様、サウナへの言及がありませんでした。まとめ記事は新聞などを根拠にしつつ、元の記事とは関係のない主張を掲載する事例もあります。

サウナ人気にあやかって、記事の見出しにサウナを入れることでクリックさせようとする釣り見出しです。注意しましょう。

検証:住友千花
編集:古田大輔

検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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