鳥インフルエンザワクチン接種に反対する人は逮捕される?【ファクトチェック】
「世界保健機関(WHO)加盟国が鳥インフルエンザワクチンの接種に反対する国民を逮捕することに合意」という言説が拡散していますが、誤りです。厚生労働省は「合意した事実はない」と否定し、そもそもWHO年次総会でも議論されていません。
検証対象
2024年6月7日、「WHO加盟194カ国が、鳥インフルエンザワクチンの接種に反対する国民を逮捕することに合意」という言説が、WHOのテドロス事務局長の写真とともに拡散した。
6月17日現在12万を超える閲覧があり、「WHOなんかいらない」「鳥インフルエンザワクチンに反対します」といったものから「こんなもん合意するはずが…」など疑問視するコメントもある。
検証過程
鳥インフルの流行と厚労省の対応
鳥インフルエンザは、感染した鳥に濃厚接触した場合など、まれに人に感染する。現在はヒト-ヒトで持続的な感染が起こっている段階ではないが、今後ヒト-ヒトで持続的な感染がおこり、新型インフルエンザになる危険性もある(厚生労働省・鳥インフルエンザに関するQ&A)。
日本もWHO加盟国の一つ。日本ファクトチェックセンター(JFC)は厚労省に取材した。
拡散している言説については「鳥インフルエンザワクチンに反対するものを逮捕することにWHO加盟国が合意した事実はありません。今後万が一、感染拡大が起きたとしても、ワクチン接種に反対していることをもって逮捕することはあり得ないものと考えています」(厚労省感染症対策課)と明確に否定した。
現在、鳥インフルは鳥の中では世界的に流行しており、日本でも厚労省がワクチンの備蓄を進めている(厚生科学審議会感染症部会・プレパンデミックワクチンの今後の備蓄の種類について(案))。「鳥インフルエンザ(H5N1型)は、感染すると病原性が高く健康被害が大きい上に、致死率も高い可能性があるので備えておく必要性があります。現在、日本では感染拡大に備えて備蓄しています」(同)と話す。
WHOでの議論は
WHOは5月27日から6月1日までスイスのジュネーブで年次総会を開いていた。ここでは国際的な感染症対策を強化するパンデミック条約は議論がまとまらず、採択に至らなかった(JFC記事)。
一方で、感染症の国際的な流行を防ぐために最低限備えておくべき事項を定めた国際保健規則(IHR)の改正については加盟国が合意した(厚労省:国際保健規則(IHR)(2005)の改正の検討状況について)。
IHRにもパンデミック条約案にも「鳥インフルエンザを含むワクチンの接種に反対する者の逮捕」などとは書かれていない。
判定
WHOの新型インフルなどの国際的な感染症の議論の中で「鳥インフルエンザワクチンの接種に反対する国民を逮捕することに合意」という事実はなく、加盟国である日本の厚労省も否定している。よって誤り。
検証:宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ
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