新型コロナのレプリコンワクチンは死亡率がファイザー製の75倍? 元資料の誤読【ファクトチェック】

新型コロナのワクチンについて、レプリコンはファイザー製に比べて死亡率が75倍だという情報が拡散しましたが、誤りです。厚労省の資料をもとに主張していますが、これは副反応疑いの件数で因果関係が立証されたものではなく、また、死亡報告2件は、のちに製造元が「ワクチンとの因果関係を医師が否定した」という理由で報告を取り下げています。
検証対象
2025年4月17日、「レプリコンはファイザー製の75倍の死亡率」という投稿が拡散した。投稿には表も添付され、製薬会社ごとに接種者の「重篤」と「死亡」の報告数の比率を比べている。
4月21日現在、8万2000を超える閲覧と1200のリポストがついている。「こんなもん国民に打たせるな」「ワクチンじゃない、殺人兵器だ!!」などの他「真面目に副作用報告を収集しているから副作用発現率が高く見えてる可能性がありますね」という指摘もある。
検証過程
レプリコンワクチンとは
レプリコンワクチンは、日本の製薬企業Meiji Seikaファルマが開発製造しているmRNAワクチン。mRNAが体内で複製されて増えるため、従来のmRNAワクチンよりも強い免疫反応を得ることができるとされている(厚労省)。
2024年10月から、定期接種に使われ始めたが、新しいワクチンへの警戒感や「接種していない人にも成分が伝播する(シェディング)」などの噂が広がり、国などが「ワクチン成分が他者に伝播し、健康被害が生じるという科学的知見はない」と呼びかける事態になった(NHK、朝日新聞)。
死亡率「75倍」の根拠は投稿者による試算
2025年4月14日に厚生労働省の「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会」が開かれ、2024年10-12月の製造業社別(ファイザー、モデルナ、武田製薬、第一三共、Meiji Seikaファルマ)のコロナワクチンの副反応疑いが報告された(厚労省)。
レプリコンワクチンは、3ヶ月間で1万5536人に接種され、副反応疑い報告は7件、うち死亡報告は2件となっている。拡散した投稿の表は、このデータを元に10万人あたりで計算した数値を製造業社別に書いている。
検証対象の投稿はこの表の数字をもとに、レプリコンワクチンがファイザー製と比べて75倍の死亡率と書いている。
副反応疑い報告は因果関係を示していない
そもそも、副反応疑い報告はワクチンとの因果関係を示すものではない。
ワクチン接種後に死亡や重篤などの事例があった場合、「副反応によるかもしれない」という場合は、製造業社や医療機関が厚労省所管の医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告する。これはワクチンとの因果関係ははっきりしないが「少しでも可能性がある」という事例だ。
副反応疑いの報告件数で「死亡率」と解釈するのは誤りだ。
2件の死亡報告は因果関係が否定され取り下げられた
また、今回のレプリコンワクチンの死亡報告2件については、厚労省の資料に「『転院先の医師が本剤との因果関係を否定した』ことを理由に、Meiji Seika ファルマが報告を取り下げた」と書かれている。
つまり、この間の死亡報告件数はゼロ件となる。
Meiji Seikaファルマ「新たに2件の死亡報告があり、調査中」
日本ファクトチェックセンター(JFC)はレプリコンワクチンの製造元であるMeiji Seikaファルマに取材した。
担当者によると、2024年10-12月の2件の取り下げ以降、2025年1-3月に2件の死亡報告をMeiji Seikaファルマとして確認しているという(コスタイベ筋注用 市販直後報告第6回結果報告)。しかし、これも10-12月の死亡報告と同様に「今後の調査の結果修正される可能性がある」という。
同社は、レプリコンワクチンの副反応疑いについてウェブサイトで公表している。
判定
厚労省の2024年10-12月のデータをもとに「レプリコンワクチンはファイザー社製の75倍の死亡率だ」という情報が拡散したが、誤り。情報の元となった資料は副反応疑いの件数で、そもそもワクチンとの因果関係は示されておらず、また、この間の死亡報告は「医師が因果関係を否定した」という理由で取り下げられている。
検証:宮本聖二
編集:古田大輔、藤森かもめ
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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