川田議員「コロナワクチンで接種者全員が亡くなったロットがある」? そのようなデータはない【ファクトチェック】(修正あり)

川田議員「コロナワクチンで接種者全員が亡くなったロットがある」? そのようなデータはない【ファクトチェック】(修正あり)

新型コロナワクチンをめぐって「ロットによって接種者全員が亡くなっているショックな統計がある」と川田龍平参議院議員(立憲民主)が投稿しましたが、誤りです。厚生労働省はワクチン接種者のロットごとの死亡件数を公表していますが、特定のロットで全員が死亡した記録はありません。川田議員の事務所は「静岡県御殿場市のデータ」だと説明しましたが、御殿場市に情報開示請求した結果、そのようなデータはありませんでした。

検証対象

2024年12月17日、川田議員がXに「ロットによって接種者全員が亡くなっているショックな統計すらある」と投稿した。川田議員は、同じ内容について2024年12月17日の参議院予算委員会でも発言している。

2025年1月22日現在、この投稿は1700件以上リポストされ、表示回数は180万回を超える。投稿について「残念です」「取り上げて頂きありがとうございます」というコメントの一方で「接種者全員亡くなったという統計結果はどこにありますか?」と疑問を投げかける指摘も多い。

検証過程

参議院予算委員会での発言

川田氏が投稿したのは2024年12月17日の参議院予算委員会で、石破茂首相と福岡資麿厚労相に質問した内容だ。川田氏の発言は立憲民主党がYouTubeに投稿した「2024年12月17日 参議院 予算委員会(該当の発言は1:11:01〜)」で確認することができる。

川田氏は新型コロナのワクチンについて「表に出すのがショッキングなくらいですが、ロットによって、そのロット使った人がすべて亡くなっているロットがあったりとか、全く亡くなっている人がないロットがあったりだとか、ロットによって差がある、というのが明らかになってきています」と発言している。

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、同一のロットを使った人が全て亡くなった事例があるかを検証した。

ロットごとの副反応疑い報告は厚労省が公開

ロットとは、同じ場所・同じ工程で製造された製品の単位。品質管理のために番号が付与され、すべてのロットに個別の番号が付いている。

コロナワクチンの中で、1ロットで最も量が多かったのは2022年4月に出荷された575万6400回分(ロット番号FP9647)だ。ロットの中には数十回分や数百回分というものもあるがわずかで、ロットの多くは数万から10万回以上の回数分にまとめられて出荷されている(「予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について」95ページ以降)。

厚労省は、ワクチン接種後の「副反応疑い」について、医療機関や製造販売業者から報告を受けて「厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会)」で報告・検討している。全体の報告数と重篤な症例、死亡例に分けて、報告頻度と共にウェブサイトで公開している(「予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について」)。

「副反応疑い」は、ワクチン接種との因果関係が不明な場合も含めて、接種後に発生した事例を指し、医療機関などが「独立行政法人・医薬品医療機器総合機構」を通して厚労省に報告する。

全て死亡したロットは無い

厚労省「予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について」で確認すると、一つのロットで接種者全員が死亡したものはない。

最も死亡の報告頻度が高いのは、402万2640回分が入っていたロット番号EX361で、死亡報告は67件、死亡の報告頻度は0.0017%だ(厚労省「予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について」95ページ)。

厚労省の資料では、2024年8月4日現在で死亡報告件数は2261件。ただしすべてがコロナワクチンと因果関係があると判断されたものではなく、副反応疑いとして医療機関などから報告されたものだ(厚労省「福岡大臣会見概要」2024年10月25日)。

厚労省の審議会で報告された副反応疑いでの死亡報告2261件のうち、2021年の接種開始以降、2024年10月25日までに「ワクチン接種との因果関係が否定できない」とされたのは2件だ(第104回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、 令和6年度第7回薬事審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会「副反応疑い報告状況について」)。

川田参院議員「根拠は御殿場市のデータ」

厚労省が開示している副反応疑い報告では、特定のロットを接種した人すべてが亡くなったデータがないことを踏まえて、JFCは川田氏の事務所に、国会での発言の根拠となるデータを尋ねた。

その結果、根拠となるデータは「御殿場市に対する情報開示請求で公開されたデータ」だと回答があった。厚労省のデータについては「厚労省が把握している情報は、医療機関と製薬会社などから報告があったものですが、 すべての接種者において死亡の実態を把握することができない性質のものであると認識しています」と説明した。

御殿場市でのデータにも、接種者全員が亡くなったロットはない

JFCは、御殿場市に情報開示請求して、新型コロナワクチンのロット別の接種者数と死亡者数のデータを入手、分析した。その結果、接種した人全てが亡くなったロットはなかった。

このデータは御殿場市が把握しているもので、御殿場市内外の医療機関や集団接種会場などで接種した御殿場市民の予診票(ここにロット番号が書かれている)を集めたものだ。接種の始まった2021年2月から2024年3月末のデータでは、総接種者数は1回目から7回目までで延べ30万1707人。そのうち死亡者は3221人いた。

ただし、この死亡者数は「副反応疑い報告」によるものではなく、2021年2月から2024年5月末までに同市役所に提出された全ての死亡届を合わせたもので、死因は様々だ。それでも個別のロットで接種した人が全て死亡したというデータはなかった。

このうち御殿場市で最も死亡者が多いのはロット番号FA2453で、接種回数延べ11136回(1回目、2回目ともこのロットを接種した人がいる)で636人が亡くなっているが、これも死亡届が出された人数で、死亡率は5.71%になる。死亡時の年齢の平均は86.09歳だ。

この分析結果について川田氏の事務所に再び取材したところ、1月23日午後6時現在回答はない。回答があれば追記する。

判定

「新型コロナワクチン、ロットによっては接種者全員が死んでいる」という情報が拡散したが、誤り。医療機関などからの厚労省への副反応疑い報告にそのようなデータはない。また、川田氏が根拠だとする御殿場市のデータにも、特定のロットで全ての接種者が亡くなったデータはなかった。

あとがき

今回の記事に関して「接種した全員が死亡したロットがなくても、死亡率5.71%は非常に高い」というような感想を持つ人もいるでしょう。

しかし、記事中に示したようにこれは死亡届が出たすべての事例であり、ワクチンによって死亡した数字との関係性はありません。「副反応疑い報告」の件数も、実際にワクチンによって死亡した件数ではありません。

数字を確認するだけでなく、その数字の意味するところを誤解しないように注意が必要です。

検証:宮本聖二
編集:藤森かもめ、古田大輔、野上英文

修正

検証対象の文中で「2024年1月22日現在」としていましたが、2025年月22日現在の誤りでした。修正しました。(2025年1月27日)

判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

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