菅元首相がワクチン注射を誤魔化した? 映像の角度によるもの【ファクトチェック】

菅義偉元首相が「刺すと引っ込む針」を使ってワクチン接種を誤魔化したという情報が拡散しましたが、誤りです。拡散した動画では注射針が消えたように見える場面がありますが、別の映像では針がはっきりと映っています。
検証対象
2025年3月3日、菅元首相(当時)が2021年3月16日に新型コロナのワクチン接種をする動画とともに「日本国民のみなさん、まだ騙されたままですか? 首相を含め政府関係者が、インチキなAIR接種をしてることに気づきましょう」という投稿が拡散した。
この動画を見ると注射の針が消えているように見える場面がある。そこを指摘して「刺すと引っ込む針ですね」「生物兵器であることを知ってて、わざわざ自分から打つわけないでしょ」などのコメントがついている。この投稿は910万の閲覧と2500を超えるリポストがある。
検証過程
拡散した動画の内容は
投稿につけられた動画は15秒。マスク姿の菅氏が注射を受けている。医者が注射を取り出すと針が飛び出たように見える。これが「刺すと引っ込む針」「AIR注射」などと批判が出る根拠となっている。
動画の左上にはテレビ朝日系ANN NEWSのロゴがあり、オリジナル動画は現在もYouTubeで視聴できる。2012年3月16日に訪米を控えた菅首相(当時)がワクチン接種をしたという内容だ。このオリジナル動画も、拡散した14秒の動画と同様に針が飛び出して見えるので、動画が改変されているわけではない。
別角度の映像で確認
首相官邸ウェブサイトでも同じワクチン接種シーンを別の角度から撮影した動画を公開している。この映像の49秒頃を見ると、拡散した動画では見えなかった針が、最初から確認でき、そのまま腕に刺している。
改めて拡散した動画をスロー再生してみると、背景に針がまぎれて見にくい角度の直後、光があたって針が反射するために飛び出したように見えることがわかる。
判定
菅元首相が針が飛び出す仕掛けの注射を使ってワクチン接種を誤魔化したという情報は誤り。映像の角度によるもので、別の映像では針が確認できる。
検証:宮本聖二
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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