「腎臓学会が発表した紅麹健康被害の病名は新型コロナワクチンの副反応そのもの」は読売新聞の記事?【ファクトチェック】
小林製薬の紅麹問題で、日本腎臓学会が発表した健康被害の主な症状が新型コロナワクチンの副反応と同一だと主張する言説が読売新聞の記事であるかのように拡散しましたが、誤りです。読売新聞のロゴを使い、実際の報道内容とは異なります。また、日本腎臓学会も否定しています。
検証対象
小林製薬の紅麹を含む健康食品を摂取した後に腎臓の病気などを発症した問題で、2024年4月2日、「腎臓学会は確実に主因は、コロナワクチンだと気づいているね」という投稿がX(旧Twitter)で拡散した。投稿には読売新聞のロゴと記事へのリンクとともに「腎臓学会が発表した紅麹健康被害の病名は、新型コロナワクチンの副反応そのものだった」という文言がある。
この投稿は2024年4月12日時点で26万件以上表示され、6000件以上のリポストを獲得している。
検証過程
添付された読売新聞のリンクは、2024年4月1日に日本腎臓学会が公表した「『紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する研究』アンケート調査(中間報告)」についての記事だ。
「紅麹健康被害、病名は尿細管の『間質性腎炎』『壊死』など…新たな商品での被害も判明」というタイトルで、小林製薬の紅麹成分入りのサプリメントを摂取した人に健康被害が確認された問題で、日本腎臓学会が会員医師に行ったアンケート調査の中間報告について報じている。
そもそも、新型コロナウイルスやワクチンについて触れておらず、「紅麹健康被害の病名は新型コロナワクチンの副反応そのものだった」などとは報じていない。
日本腎臓学会の「アンケート調査(中間報告)」を見ると、同学会は、2023年12月から2024年3月にかけて、紅麹健康被害に伴う腎障害のうち、34症例について腎臓の組織の一部を採取する腎生検をした。その結果、「尿細管間質性腎炎、尿細管壊死 、急性尿細管障害が主な病変だった」と報告している。
一方、厚生労働省のウェブサイトに、2024年1月26日の第100回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の新型コロナワクチンの副反応疑い報告を集計した資料がある。資料1-1-1「予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について」に尿細管間質性腎炎、尿細管壊死、急性尿細管障害を伴う副反応疑いの報告が載っている。
この資料には、2021年2月から2023年10月29日までの報告がまとめられている。コミナティ筋注70,933件・スパイクバックス筋注10,166件の副反応疑い報告のうち、コミナティ筋注では尿細管間質性腎炎が6件、スパイクバックス筋注では尿細管間質性腎炎が3件・腎尿細管障害が1件報告されている。厚労省によると、これが4月12日現在で最新の集計データだという。
紅麹の「アンケート調査(中間報告)」で報告している「尿細管間質性腎炎、尿細管壊死 、急性尿細管障害」は、新型コロナワクチン副反応疑い報告の症例のうち約0.012%で、拡散した言説のいうように「新型コロナワクチンの副反応そのもの」とは言えない。
JFCは日本腎臓学会に小林製薬の紅麹による腎障害と新型コロナウイルスワクチンとの因果関係について問い合わせた。日本腎臓学会は「本学会としてはコロナワクチンとの関連は考えていない」と回答した。
判定
「腎臓学会が発表した紅麹健康被害の病名が新型コロナワクチン副反応と同一」は誤り。拡散した言説は読売の記事を引用しているように装っているが、読売記事の内容は異なる。一致する症例は新型コロナワクチンの副反応疑いの0.012%で、調査を発表した日本腎臓学会も関連を否定している。
検証:鈴木優、木山竣策
編集:宮本聖二、藤森かもめ、古田大輔
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