K2シロップは添加物が多く副作用が心配だから服用しないほうがいい?安全性は証明されている【ファクトチェック】
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赤ちゃんに起こりやすい出血を防ぐための薬・K2(ケーツー)シロップの添加物や副作用を心配し、飲まないよう呼びかける声がXで複数拡散していますが、誤りです。同様の言説は過去にも繰り返し拡散していますが、K2シロップはビタミンKが足りないことで起こる出血症の予防効果が高い薬で、確かに添加物は使われていますが、その安全性は証明されています。
検証対象
2025年1月14日以降、K2シロップに含まれる添加物や化学物質の影響や、副作用を心配する声がXで複数拡散した(例1、例2、例3)。
投稿には「ほぼ毒しか入っていない」というコメントの一方で、「誤った情報を流布するのを今すぐやめて下さい」などの批判もある。
検証過程
K2シロップとは
新生児はビタミンKの不足による出血症を起こしやすく、頭蓋内出血など致命的な事例もある。K2シロップは1mLあたり、ビタミンK2を2mg含み、予防薬として普及。現在は生後3ヶ月になるまで週に1回、計13回飲む「3ヶ月法」が推奨されている(日本小児科学会 新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言)。
添加物は危険?
検証対象の投稿は、添加物の影響に不安を抱いている。日本ファクトチェックセンター(JFC)は、K2シロップの添加物の安全性について、新生児医療が専門の東京医療保健大学・楠田聡教授に取材した。
「一般に使用している薬剤には必ず添加物が含まれている。添加物は、薬剤の安定性を保つため等の目的に使用されており、使用されている添加物は全てPMDA(医薬品医療機器総合機構)で安全性が確認されている」
薬品や医療機器の安全性を監視・審査する独立行政法人・PMDAのK2シロップの審査報告書 (2012年4月2日)は、赤ちゃんのビタミン K 欠乏性出血症の予防について「有効性及び安全性は確認されているものと判断する」と書いている(審査報告書p2)。
K2シロップの副作用は?
JFCは、K2シロップを使った赤ちゃんに副作用が出たケースについてPMDAに取材した。PMDAによれば、2010・2013年にそれぞれ1例ずつアナフィラキシーショックと意識消失が報告されている(副作用症例一覧)。しかし、K2シロップの安全性への評価は変わっていない。その理由について、PMDAは次のように説明している。
「薬剤承認は使用者全体における有効性と安全性のリスクとベネフィットのバランスで判断される。ゼロリスクの医薬品というのはない。K2シロップの場合、過去に報告された2件の事例は、非常に低い発生頻度であり、かつ、K2シロップを服用したこととの直接的な因果関係が十分に確立されていない。そのため、現時点では全体の安全性に大きな懸念がないと判断され、承認取り消しには至っていない」
ビタミンKは食品で摂れる?
過去に同様の投稿が拡散した際に、K2シロップの代わりにビタミンKが豊富な「海苔」を勧める投稿があった。それでK2シロップの代用になるのか。楠田教授は次のように説明する。
「ビタミンK2シロップは新生児のビタミンK欠乏症予防に使用する。新生児自身が自然食品から摂取することは不可能なので、母体が摂取することを前提とした言説だと思うが、母体が摂取しても、十分量のビタミンKが胎児に移行するとは限らないので、新生児にビタミンK欠乏症を発症する危険性がある。出生後の母乳からの移行も十分とは言えない」
つまり、新生児の離乳食が始まるのは生後5~6か月のため、直接、食べさせることはできないし、母親が食べて、母乳を介して新生児に与えたとしても、十分な量を摂取できるとは限らないため、ビタミンK欠乏症の予防としては有効ではない。
判定
赤ちゃんに起こりやすい出血を防ぐために「K2シロップ」を飲ませる親が多いが、添加物や副作用が心配なので、服用を控えたほうがよいという主張は、誤り。K2シロップは安全性が確認されていて、赤ちゃんのビタミンK欠乏性出血症を防ぐために医療機関で強く推奨されている。また、食品などで代用することはできない。
検証:リサーチチーム
編集:古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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