新型コロナワクチンで寿命が短くなる? 根拠不明のデータ【ファクトチェック】

新型コロナワクチンで寿命が短くなることを示したデータがあるという情報が拡散しましたが、根拠不明です。同じような情報が過去に世界でたびたび拡散していますが、いずれも「根拠不明」と判定されています。
検証対象
2025年2月12日ごろから、30歳の人が3回新型コロナワクチンを打ったら55歳までしか生きられないデータが出たという主張や、新型コロナワクチンは人口削減ワクチンだなどと言う投稿がXで複数拡散した(例1、例2)。
投稿は、多いものは3000回以上リポストされ、表示は269.3万回を超える。投稿には「そもそも政府がグレートリセットって発言されてます」「3回打たされた小中学生はどうなるんだろう…」などのコメントのほか「統計出せるほど年数経ってませんがね」「どうやってデータ取ったんだよ笑」という批判もある。
検証過程
新型コロナワクチンの接種から約4年しか経っていない
検証対象は、「30歳の人が3回コロナワクチンを打ったら55歳までしか生きられないデータが出た」「統計が出ている」などと主張する。同ワクチンの一般人への接種が始まったのは英国が初めてで、2020年12月8日だった(ロイター、/BBC )。
日本では2021年2月17日に、医療従事者を対象にした接種が始まった(首相官邸)。
世界で新型コロナワクチンの接種が始まってからまだ4年ほどしか経っておらず、30歳の人が接種してから25年後のデータを取るのは不可能だ。よって、「30歳の人が3回コロナワクチンを打ったら55歳までしか生きられないデータが出た」という主張は完全に誤りだ。
発端は陰謀論系YouTube動画
拡散した投稿が根拠に挙げた「なおきマンのゆーちゃーぶ」は、YouTube「Naokimanshow 2nd Channnel」で、2025年2月8日公開の「元WHO職員が暴露する世界の闇とは?!(神回)」を指していると思われる。
動画では、YouTubeチャンネルホストのNaokimanShowが、かつてWHOで働いたことがあり、獣医を名乗る男性と対談している。動画の28分44秒から29分33秒までが新型コロナワクチンに関する部分で、男性の主張の概要は次の通りだ。
「査読付きの文献に、ワクチンを3回打った健康な30歳の人が最大寿命、平均寿命として55歳まで、あと25年しか生きられないと掲載されている」
しかし、男性は論文のタイトルや掲載誌名、執筆者名などを説明しておらず、根拠不明だ。
繰り返し拡散する根拠不明の新型コロナワクチン情報
新型コロナワクチンの影響で寿命が短くなるという言説はこれまで世界中で繰り返し拡散され、ファクトチェック団体によって検証されている。判定はいずれも「No evidence(根拠不明)」や「誤り」だ(Science Feedback、USA TODAY、Ghana Fact)。
厚生労働省は「新型コロナワクチンの有効性・安全性について」というページで、ワクチンの有効性や安全性の情報を更新しているが、男性が主張しているような情報は無い。
判定
新型コロナワクチンによって寿命が短くなることを示したデータがあるとの情報は根拠不明。接種開始から4年しか経っていないワクチンに関して25年後のデータがあると主張する明らかな誤りもある他、類似の情報が過去に何度も世界で検証され、根拠不明や誤りと判定されている。
あとがき
新型コロナワクチンで寿命が短くなるなどと主張する言説は、SNSなどで繰り返し拡散しています。極端な情報を目にしたときは、厚生労働省のサイト(新型コロナワクチンQ&A【2024年3月時点】)など、公的機関や専門機関などの複数の情報を確認して判断することが大切です。
検証:リサーチチーム
編集:藤森かもめ、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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