1970年代のファンタオレンジ、添加物はたった3つ? 表示義務の変更【ファクトチェック】
1976年に販売されていたファンタオレンジについて「使われている添加物はたった3つ」と主張する画像が拡散しましたが、根拠不明です。香料や酸味料は、原料の機能等をまとめて表示しており、単一の物質とは限りません。現在は表示義務があり、当時はなかった添加物もあります。
検証対象
2024年9月16日、「1970年代のファンタオレンジ🍊 使われている添加物はたった3つ」というコメントともに、「1976年 ファンタオレンジ」と書かれたオレンジ色の缶の画像が拡散した。この投稿には「今の日本が『添加物大国』と化しどれだけ添加物に汚染されているのかがよく分かる」とも書かれている。
この投稿は9月27日時点で2100件以上リポストされ、表示回数は110万回を超える。投稿について「アイスクリーム類もそうですよね」というコメントの一方で「法律が変わりましたからね 当時は材料表記に関する規制はなかったはずです」という指摘もある。
検証過程
コカ・コーラ社はFacebookで、歴代のパッケージを投稿しており、検証対象の画像は一番左のパッケージに近い。ただし、検証対象は250mlだ。
検証対象の画像の原材料名には、「砂糖、香料、酸味料、β-カロチン」と載っている。具体的な香料や酸味料は明らかでない。また、β-カロチンは、現在はβ-カロテンと呼ばれる(参考)。
消費者庁の「食品添加物表示制度をめぐる事情」(2019年4月)という資料によると、日本では1989年から「加工食品については、原則として、使用した全ての添加物の物質名の表示を義務付け」ている。
例外として、「香料、乳化剤等の目的で使用された添加物は、個々の物質名に代えて機能等を一括して表示することも可能」であるとし、この考え方を「一括名表示」という。
香料と酸味料は「一括名表示」ができる添加物となっており、検証対象の「香料、酸味料」も、複数の添加物が入っている可能性がある。
また同資料によると、度重なる制度の改正により、食品添加物を表示する義務がある品目は、1970年代当時より大幅に増えている。
同資料によると、「平成元年(1989年)の制度改正により、食品の内容を理解し、選択するための情報として、使用した全ての添加物が表示対象となった」という。
そのため、現在は表示義務のある添加物が使われていたとしても、1970年代は全てを表示する義務が無かったため、表示される物質名は少なかった。
判定
香料、酸味料の表示は個々の物質名の代わりに機能等を一括して表示する「一括名表示」のため、単一の物質とは限らない。したがって、根拠不明と判定する。
あとがき
日本の食品は世界的に食品添加物が多いというような言説が繰り返し拡散しています(食品添加物の認可数は日本が世界一?【ファクトチェック】)。
食品添加物は、国によって定義、対象食品の範囲、使用可能量、表示の仕方などが異なるので単純な比較は困難です。
検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、藤森かもめ、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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