ヨーロッパの平均時給「ノルウェー 51.9ユーロ(8,472円)」?【ファクトチェック】

ヨーロッパの平均時給「ノルウェー 51.9ユーロ(8,472円)」?【ファクトチェック】

ヨーロッパの平均時給は、ノルウェー 51.9ユーロ(8,472円)、フランス 42.2ユーロ(6,889円)、ドイツ 41.3ユーロ(6,744円)などとする画像がX(旧Twitter)で拡散しましたが、誤りです。画像は一人当たりの雇用にかかる社会保険料や職業訓練費なども含めた金額を示しており、平均時給ではありません

検証対象

2024年3月28日、「ヨーロッパの平均時給が発表される」というコメントと共に、ヨーロッパの地図上に数値を入れたポストが拡散した。

平均時給はノルウェーで51.9ユーロ、フランス42.2ユーロ、ドイツ41.3ユーロ、EU平均31.8ユーロと書かれている。

ポストにはニュースシェアリングというインターネットメディアの記事のリンクついている。記事には、複数の国の時給やEUの平均時給とする金額が書いてある。

2024年4月2日時点で16000回以上の閲覧がある。

検証過程

検証対象ポストに添付されたリンクのサムネイル画像

日本ファクトチェックセンター(JFC)はこの画像の出典を確かめた。

画像の右下に「eurostat」という文字がある。画像の左上のタイトルと組み合わせ、「eurostat hourly labour costs 2023」とGoogle検索をすると、「Hourly labour costs ranged from €9 to €54 in the EU(EUにおける1時間あたりの労働費用は9ユーロから54ユーロ)」という記事が見つかる。

Eurostatは、EU( 欧州連合)の統計を担当する部局で(eurostat)、拡散した画像はこの記事に付けられた画像「時間当たりの労働費用(従業員10人以上の企業)」だった。

記事などによると、「average hourly labour cost」とは、「労働費用総額を労働時間で割ったもの)」だという(eurostat)。

Eurostatでは労働費用総額(total labour cost)について、以下の額の合計から補助金の額を引いたものだと説明している。

・従業員報酬(賃金、現金給与、現物給与、雇用主の社会保険料を含む)
・職業訓練費
・採用に関わる費用、作業着、雇用税など、人件費とみなされるその他の支出

EU内の国別労働費用(紫が賃金、青が賃金以外の費用)

したがって、拡散した投稿につけられた図と金額は1時間あたりの労働費用であり、平均時給ではない。

なお、Eurostatは2023年4月、2022年のEUの平均時給(Average Hourly Wages and Salaries)は22.9ユーロ(3766円 2024年4月4日時点 )だったという記事を発表している。

判定

検証対象は、賃金に、社会保険料、職業訓練費などを加えたものから補助金の額を引いた労働費用総額であり、平均時給ではない。よって誤りと判定する。

検証:リサーチチーム
編集:宮本聖二、藤森かもめ、野上英文


判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。

毎週、ファクトチェック情報をまとめて届けるニュースレター登録(無料)は、上のボタンから。また、QRコード(またはこのリンク)からLINEでJFCをフォローし、気になる情報を質問すると、AIが関連性の高いJFC記事をお届けします。詳しくはこちら

もっと見る

衆院選で連合が国民民主不支持を表明? まとめサイトによる誤り【#衆院選ファクトチェック】

衆院選で連合が国民民主不支持を表明? まとめサイトによる誤り【#衆院選ファクトチェック】

2026年2月8日投開票の衆議院議員選挙について、連合が国民民主党を支援しない方針を示したかのような投稿が拡散しましたが、ミスリードで不正確です。連合北海道の須間等会長が、国民民主党の北海道1区での現職擁立の方針を非難したと複数のメディアが報じていますが、組織として連合が国民民主党全体の不支持を表明したわけではありません。 検証対象 拡散した言説 2026年1月19日、「連合、国民民主党を支援しない方針」という投稿がXで拡散した。 検証する理由 1月22日現在、投稿は4580回以上リポストされ、表示は207.5万件を超える。 投稿には「北海道だけの話じゃないの?」などの指摘もあるが、「まさか連合が『中道』支援に回るとかはないですよね?」「連合の支援などいらないでしょう」など投稿を真に受けた反応も多いため、検証する。 検証過程 参照元の北海道新聞に記述なし 検証対象の投稿には、まとめサイト「Tweeter Breaking News —ツイッ速!」の記事へのリンクが付いている。タイトルは掲示板サイト5ちゃんねるのスレッド「連合、国民民主党を

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
「陰謀論」はCIAが都合の悪いことを隠すために作った言葉? CIA創設前からある【ファクトチェック】

「陰謀論」はCIAが都合の悪いことを隠すために作った言葉? CIA創設前からある【ファクトチェック】

「『陰謀論』はCIA(米中央情報局)が自分たちに都合の悪いことを隠すために作った言葉」という言説が繰り返し拡散していますが、誤りです。英語の「陰謀論(conspiracy theory)」という言葉は、CIA創設前からある言葉です。また、日本の国立国会図書館の資料でも、CIA創設前から、現代と同じ用法で「陰謀論」という言葉が使われていることが確認できます。 検証対象 拡散した言説 「『陰謀論』はCIA(米中央情報局)が自分たちに都合の悪いことを隠すために作った言葉」という言説は、ネット上で繰り返し拡散している(例1,2,3)。 2025年にはアメリカの国立公文書記録管理局がケネディ大統領暗殺に関する文書の段階的な公開を始めたことをきっかけに、暗殺事件と結びつける形で拡散した。 また、同年12月28日には原口一博衆院議員が、自身のXアカウントで「陰謀論という者はバカか工作員です。陰謀論という単語はCIAが都合の悪いことを隠すために作った言葉です」と投稿した。 原口氏の投稿には、麗澤大学のジェイソン・モーガン准教授の顔写真と、原口氏らの著書の画像が添付さ

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
中道・斉藤鉄夫氏「人間より他にもっと大事なものがある」と発言? 恣意的な切り貼り【#衆院選ファクトチェック】

中道・斉藤鉄夫氏「人間より他にもっと大事なものがある」と発言? 恣意的な切り貼り【#衆院選ファクトチェック】

中道改革連合の斉藤鉄夫・共同代表が「人間の幸せ以上、人間より他にもっと大事なものがある」と発言したかのような動画が拡散しましたが、誤りです。動画はニュース番組からの恣意的な切り貼りで、実際の斉藤氏の発言の趣旨は逆です。 検証対象 拡散した言説 2026年1月21日「中革連の斉藤鉄夫がヤバいこと言ってるぞwww」などの文言付きの動画がXで拡散した。 検証する理由 1月22日現在、投稿は5800回以上リポストされ、表示は89.5万件を超える。 投稿には「切り抜きに騙されないで下さいね!」という指摘もあるが、「こりゃ創価学会を超えるオカルトですわ」「なんで?中道は人間を幸せにするんじゃないの?」など、投稿を真に受けた反応が多いため、検証する。 検証過程 拡散した動画はニュース番組を編集したもの 拡散した動画は1分4秒。中道改革連合の共同代表に1月22日に就任した野田佳彦氏と斉藤鉄夫氏がニュース番組に出演し、インタビューを受けている。 動画の内容で、検証対象に関わる部分を書き起こすと、以下の通りだ。 司会:中道イメージ、どんなものを持てばいい

By 根津 綾子(Ayako Nezu)
国民民主党・小竹凱氏がタンクトップ姿で街宣する画像? AIで生成【#衆院選ファクトチェック】

国民民主党・小竹凱氏がタンクトップ姿で街宣する画像? AIで生成【#衆院選ファクトチェック】

国民民主党の小竹凱氏がタンクトップ姿で街頭演説する姿が拡散しましたが、画像はAI生成です。画像の右下にはGoogleのAI「Gemini」で生成されたことを示す透かしがあります。 検証対象 拡散した投稿 2026年1月20日、「寒いのに元気だな」という文言とともに、国民民主党の小竹氏がタンクトップ姿で街頭に立つ画像つき投稿が拡散した。 検証する理由 1月22日時点でこの投稿は140件以上リポストされ、表示回数は54万回を超える。投稿について「さすがにやばい」「国民民主ほんとに良識のない人間が増えたよね」というコメントの一方で「頼む!!生成AI使うときは『生成AI』とかタグつけてくれ!!」という指摘もある。 検証過程 拡散した投稿は、1月20日に投稿された小竹氏の投稿を引用している。石川県金沢市の西念交差点で街頭演説をしたという内容だ。 添付された画像の3枚目は、背景左上の旗や右側に写る車の位置などが完全に一致している。表情や手の角度なども一致する。 しかし、拡散した画像の右下には、ひし形のようなマーク(黄色丸)がある。これはGoogleのA

By 木山竣策(Shunsaku Kiyama)

ファクトチェック講座

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

JFCファクトチェック講師養成講座 申込はこちら

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、ファクトチェックやメディア情報リテラシーに関する講師養成講座を月に1度開催しています。講座はオンラインで90分間。修了者には認定バッジと教室や職場などで利用可能な教材を提供します。 次回の開講は1月24日(土)午後2時~3時30分で、お申し込みはこちら。 https://jfcyousei0124.peatix.com 受講条件はファクトチェッカー認定試験に合格していること。講師養成講座は1回の受講で修了となります。 受講生には教材を提供 デマや不確かな情報が蔓延する中で、自衛策が求められています。「気をつけて」というだけでは、対策になりません。最初から騙されたい人はいません。誰だって気をつけているのに、誤った情報を信じてしまうところに問題があります。 JFCが国際大学グロコムと協力して実施した「2万人調査」では実に51.5%の人が誤った情報を「正しい」と答えました。一般に思われているよりも、人は騙されやすいという事実は、様々な調査で裏打ちされています。 JFCではこれらの調査をもとに、具体的にどのような知識

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

理論から実践まで学べるJFCファクトチェック講座 20本の動画と記事を一挙紹介

日本ファクトチェックセンター(JFC)は、YouTubeで学ぶ「JFCファクトチェック講座」を公開しました。誰でも無料で視聴可能で、広がる偽・誤情報に対して自分で実践できるファクトチェックやメディアリテラシーの知識を学ぶことができます。 理論編と実践編の中身 理論編では、偽・誤情報の日本での影響を調べた2万人調査の紹介や、間違った情報を信じてしまう背景にある人間のバイアス、大規模に拡散するSNSアルゴリズムなどを解説しています。 実践編では、画像や動画や生成AIなど、偽・誤情報をどのように検証したら良いかをJFCが検証してきた事例から具体的に学びます。 JFCファクトチェッカー認定試験を開始 2024年7月29日から、これらの内容について習熟度を確認するJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。誰でもいつでも受験可能です(2024年度中は受験料1000円、2025年度から2000円)。 合格者には様々な技能をデジタル証明するオープンバッジ・ネットワークを活用して、JFCファクトチェッカーの認定証を発行します。 JFCファクトチェッカー認定試験

By 古田大輔(Daisuke Furuta)
JFCファクトチェッカー認定試験

JFCファクトチェッカー認定試験

日本ファクトチェックセンター(JFC)はJFCファクトチェッカー認定試験を開始します。YouTubeで公開しているファクトチェック講座から出題し、合格者に認定証を授与します。 拡散する偽・誤情報から身を守るために 偽・誤情報の拡散は増える一方で、皆さんが日常的に使用しているSNSや動画プラットフォームに蔓延しています。偽広告や偽サイトへのリンクなどによる詐欺被害も広がっています。 JFCが国際大学グロコムと実施した2万人を対象とする調査では、実際に拡散した偽・誤情報を51.5%の割合で「正しいと思う」と答え、「誤っている」と気づけたのは14.5%でした。 自分が目にする情報に大量に間違っているものがある。そして、誰もが持つバイアスによって、それが自分の感覚に近ければ「正しい」と受け取る傾向がある。インターネットはその傾向を増幅する。 だからこそ、ファクトチェックやメディアリテラシーに関する知識が誰にとっても必須です。 JFCファクトチェック講座と認定試験 JFCファクトチェック講座(YouTube, 記事)は、2万人調査を元に偽・誤情報の拡散経路や

By 日本ファクトチェックセンター(JFC)