三笠宮妃百合子様のお墓は朝鮮式? 明治期以降の皇族の墓は神道式【ファクトチェック】
三笠宮妃百合子さまの墓所をめぐり、「朝鮮式だ」との主張が拡散しましたが、誤りです。「朝鮮式」といった墓はなく、近代以降の皇室のお墓は天皇、皇后両陛下を除くと円丘と呼ばれる神道式によるものが基本です。
検証対象
2024年11月26日、逝去された三笠宮妃百合子様の「斂葬(れんそう)の儀」(一般の葬儀にあたる)が営まれると、「やはり101歳大往生の百合子様のお墓は朝鮮式です!! つまりこの国の皇室は日本人ではないということを示していますよね‼︎」という投稿が拡散した。
12月2日現在、410万をこえる閲覧と1500のリポストを獲得している。「日本にあからさまに朝鮮式の墓を作らないで頂きたい」といったコメントのほか「神式では?」「円墳やで」といった指摘もある。皇室のお墓が朝鮮式だという情報はこれまでも何度も拡散している(例1、例2、例3)。
検証過程
近代以降の皇族のお墓、関西大学徳田誠志客員教授インタビュー
日本ファクトチェックセンター(JFC)は、関西大学文学部の徳田誠志客員教授に取材した。徳田氏は、2022年3月まで宮内庁陵墓調査官として仁徳天皇陵をはじめ各地の陵墓の調査研究を担当してきた。徳田客員教授は次のように解説する。
「明治期以降の皇族墓は、そのほとんどが宮内庁において『円丘(えんきゅう)』と呼称してる形状です。方形段の上に円形の墳塋(ふんえい・墳丘のこと)を築き、戦後はご火葬した後、ご遺骨を地下に埋納します」
「この形状の墓は皇族に限られており、天皇・皇后両陛下のお墓は違う型式です。明治天皇、大正天皇、昭和天皇とそれぞれの皇后陛下のお墓は大きな『上円下方』という形に築かれています。皇族のお墓は『円丘』を基本としており、三笠宮妃百合子様のご遺骨は、2016年に亡くなった三笠宮崇仁親王殿下のお墓へ埋葬されました。三笠宮崇仁親王のお子様の三笠宮家寬仁親王殿下、桂宮宣仁親王殿下、高円宮憲仁親王殿下も、それぞれ円丘の形をしたお墓に埋葬されています」
「皇室のお墓は奈良時代以降江戸時代までは、仏教の影響により石塔や堂塔式をはじめとする様々な形のお墓が作られましたが、明治期以降は神道式に基づくお墓が基本となっています」
朝鮮式という主張について聞いたところ徳田客員教授は「荒唐無稽です。そもそも朝鮮式の墓というお墓の型式はありません。お墓というのは、地域、時代、宗教などによってさまざまな形状に作られるものだからです」と話した。
判定
三笠宮妃百合子様が埋葬されたお墓は朝鮮式だという情報が拡散したが、誤り。宮内庁が「円丘」と呼ぶ形状の神道式のお墓であり、明治以降の皇族墓は基本的にこの形だ。
検証:宮本聖二
編集:藤森かもめ、古田大輔
判定基準などはJFCファクトチェック指針をご参照ください。
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